ひねもす 山歩き ショートショート⑤ ー ノササゲ

 淡い黄色の小さな雪洞が空中にふわっと浮いて、風に揺れてる。 散策を終えて、車を止めた場所までノコノコ車道を帰っていたら、一風変わった景色に遭遇した。 はぁ? この白昼にキツネの嫁入り? そりゃ、もう秋の結婚シーズンだけど、化かされるにしては明るすぎるよなぁと思って近づいてみた。 なんのことはない、笹に巻き付いたつる植物の蔓がその先端から大地に真直ぐ下りていて、漂っているように見えただけ。

黒紫の蔓に薄黄色のお花、まるで宙に浮いている雪洞のように見える。

 でも、お花は、淡く柔らかい薄黄色で筒みたいな萼の黄緑色と相まってなかなか可憐。それに細い蔓にしては、花数が豪勢な付きようで、まるで雪洞みたい。 こりゃ、マメ科かなぁと思ったけれど、その場では判らなかった。

 調べてみたらノササゲでした。 ノササゲ属で別名キツネササゲというらしい。 先人も最初、化かされたと思ったのでしょうか。 タンキリマメ属のトキリマメか とも考えたのですが、三つに分かれた小葉の幅が狭いしお花の萼も長くて、どうも違うみたい。どうやら、名前の由来は、大角豆という呼び名で栽培されて、お赤飯に実がよく使われるササゲの野生版ということらしい。 たしかに、こちらの豆果は紫色で到底、お赤飯には似合いませんよね…。

雪洞のようなお花の塊部分のアップ。これだけお花が集まっているのも珍しい。

 いやぁ、でも雪洞のようなお花の集合体も可愛いですが、蕾の形が楽しいと思いませんか。まるで、小人がミストグリーンのパンツにクレームの靴を履いて、ダンスしているみたい。 散策帰りに良い思い出を拾えて、ちょっぴり幸せな気分になれました。

通常のお花の付き方、これでも多いくらい。 左側の二つの蕾、小人の足のように見えませんか。