ツチアケビ(土木通)。 お山で出会う、葉緑素を持たない風変わりな植物としては、ギンリョウソウ(銀竜草)とともに双璧をなす植物でしょう。 本稿をお読み頂いている皆様も一度といわず、ご覧になっているのではないでしょうか。 なんでも、別名をヤマノカミノシャクジョウというらしい。してみると、その実のさまをお坊さんや修験者の持つ、頭部に鉄の小さい輪がいくつか付いていて、振るとシャンシャンと音を立てる錫杖に見立てたのでしょうか。 どうして山の神と結びつくのでしょうかねぇ。だって、山の神はたしか女性のはずで、錫杖は似合わないと思いませんか。
こちらは日本固有種で、ラン科の植物ってお美しい植物が多いのですけど、これだけ草丈の高いものは珍しく、まず外観で異彩を放っていますね。 お花は、7~8月頃に開花する肉質系の柔らかい黄色で、アップで見ると名実ともに、いかにもラン科そのもの。美しいお花です。 残念ながら、女性の人気はギンリョウソウとは月とスッポン! やはり、秋の実のその色彩と形状がいけないんでしょうか。
ギンリョウソウとは、そもそもの出自が全く違っていて、こちらはツツジ科。共通なのは、いずれも菌から栄養を貰う菌寄生植物だということらしい。 難しい用語では「菌従属栄養植物」(舌かみそうですねぇ~。)というようで、ツチアケビはナラタケ属の、ギンリョウソウはベニタケ属の菌類に養って?貰っている点は異なりますが…。
しかし、夏のお花といい、秋の実といい、存在感抜群の植物という点ではどなたも異論はないのでは…。日本国中、いたるところに芽を出し、翌年、訪ねるともういないという、まさに神出鬼没の輩。 房状の大きな実は、意外に固く締まっていて、かなり重量はあると思われるのに、しっかり屹立していてその紅色がなかなか不気味。 お山でバッタリ遭遇してギョッとされた方も多いのではないでしょうか。
いやぁ~、くわばらくわばら、触らぬ神に祟りなし…かもしれませんね。