![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010095751.jpg)
豊穣のお山を象徴する、素晴らしい山毛欅(ブナ)林をゆく。静寂の絶景というべきか。
いったい何年越しになるのだろう、やっと念願が叶ったというか、本来はもっともっと早くに登っていたはずなのに…。 そもそものはじめは、学生時代。 夏合宿を終えて帰省途中に登る予定で北陸廻り。 が、たしか台風かなんかの大雨で鉄道が止まってオジャンに。 社会人になってからも数回計画したけれど、運が味方せず…。 お四国からはホンマ、近くて遠いお山だった。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010100241.jpg)
概念図
朝6時、標高350mの中出(なかんで)登山口駐車場を出立、良い天気だ。 熊出没注意の看板を横目にピーピー笛を鳴らして歩く。
早速出てきましたツリフネソウ、紅紫が美しい。 う~、葉から判断するとツリガネニンジンですかね?
いゃ看板なくともこの雰囲気、絶対いるわ、それも近くに。 林道終点までは傾斜のきつい、広いところでも幅員1.5mほどの石ころ道をほぼ真直ぐ進むけど、周りは背丈ほどの雑草&芒が生い茂り、どこから「こんにちは」されても不思議じゃない。 まぁ怖くはないけど…。
木の根と石ころだらけのアプローチ道 と ひっそりと路傍に咲いていたアキチョウジ
途中、根元の皮をはがされた杉の横を通過。 どう見たって犯人は熊だよね、恐らく白蟻か何かを食べたんだろうけど。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010100842.jpg)
ばっさり皮をはがれた杉の木。これだけ広範囲を一度に剥がす力のある動物は熊だと思うんだけど…。
1時間程、アプローチにしてはちときつい道を進むと、やっと標高550mの林道終点に着いた。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010102032.jpg)
林道終点。付け足しのように黄色い看板の右上に荒島岳登山道とある。
林道といってもかつてで、今は草茫々。 とても車は走れそうもない。 ずっと杉の植林帯の中を歩いてきたけど、この辺りから少しづつ山毛欅が出てくるようになり、路も山道らしくなった。 ここが実質的な登山口だろう。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010102747.jpg)
やっと山毛欅の例の白い幹を拝むことができるように…。心落ち着きますな。
アキギリかオオアキギリか判りません…。 トリカブトは確かなんだけど、これも細分類は難しい。
路はややジグザグを切りながら、それでも真直ぐの登りで、いきなり急登があるよりはまだしも、そう楽な道ではない。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010103046.jpg)
総苞の形や先が鋭くとがっている特徴からアザミ類ではなくヒゴタイの仲間だと思うんだけど…。
根元の皮をはがされて立枯れした杉を何本も見ながら進む、立枯れに生えたスギヒラタケの、その白さが却って薄気味悪い。
スギヒラタケ、以前は香も味も良い食菌といわれていたが、毒があるらしい。と 熊と思われる足跡。不気味!
8時、山頂まで3.5kmのでっかい木製道標横を通過、この道標は◎。 標高(985m)が書いてあって、山屋にはすごく有難い。 1時間で450m稼いだ計算になり、なかなかよろしいペース。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010104032.jpg)
案内標識に標高が入っているのは極めて珍しい。高度が判るのは登山者にとって大きいのだけれど。
周りは山毛欅の純林帯に近く、朝の光が斜めに樹間に入って、ほっこりと気分が和らぐ。 この辺りから右に水平トラバース。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010104400.jpg)
クルマバハグマだと思われる個体。お四国にはなく、初めて見た。いやぁ~ラッキー。
2.5万地形図で見るより距離が長く感じたけれど、巻き終えてさらに100mほど高度を稼ぐと「ひえ畑」の道標が路傍に。 やや平らな感じの場所で、その昔、焼畑でひえを栽培してたのかなぁ、面白い地名だ…。
右下に「ひえ畑」の白い杭と標識が…。 百名山のブラック面を示すオーバーユースのへこんだ登山道
標高1,000mを超え、これで荒島岳への主稜線に乗ったことになる。 小荒島岳(1,186m)まであと少しだ。
こんなところにたかりの名人、シオガマギクが。 (右)う~、ソバナだと思うんですが…。
9時少し前、分岐にザックを置き、カメラだけ持って小荒島岳へ。 5分弱で絶景が待っていた。 荒島岳は、バックに山塊がなく、右肩上がりの山容も申し分なし。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010105716.jpg)
いやぁまさに絶景とはこういう景色なんでしょうね。快晴にも恵まれてマッコト素晴らしい。
つまり、カメラ写りの良いシチュエーションで、こりゃ誰でも撮りたくなるし、褒めたくもなる。 遠く白山に別山も遠望出来、とぼけた感じの案内板もよく効いて、しばし堪能させて頂きました。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010105853.jpg)
小荒島岳から遠く加賀白山を望む。別山と美濃禅定道の稜線が続き、大きい。
この眺めを味わうために小荒島だけに登ってくる人もいると聞いていたけど、こんな幸せな前衛峰、ほかにないでしょう。 納得の山頂でした。
分岐からしゃくなげ平までは20分程の緩いアップダウンだけど、このお山の一番美しいところだと思う。 山毛欅のほぼ二次林の中に大木に近いものも散見され、稜線を縫うようにしっとりと落ち着いた路が続く。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010110336.jpg)
山毛欅のほぼ純林帯。二次林のようでまだこれからだけど、美しい。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010110442.jpg)
ぽつんとあった比較的大きい山毛欅。苔類の付着が少なくて、白い幹肌がやさしい。
植生の豊かさがこの時期でもはっきりと判り、花の季節の5,6月頃はもっと素晴らしいだろう。 熊さんもいなかったし…。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010110715.jpg)
秋の山毛欅林といえばこれでしょう、路傍の倒木にナメコ、びっしり生えてました。
しゃくなげ平は、もう少し広い場所と想像してたけど、当てが外れる。 赤土丸出しの殺風景な場所で展望もなく勝原(かどはら)からの登路の合流点というだけの場所だった。 それでもずっと歩き詰めだったので、10分程、行動食休憩を取った。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010111007.jpg)
灌木に囲まれて見通しも風も入らないしゃくなげ平。道標が所在なげに…。
5分程、下ると佐開集落からの登路と合流。2.5万地形図は位置が違っているようだ。 よくあることだけど…。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010111335.jpg)
佐開コースと中出コースの合流点。下り気味のまあまあ広い場所。
と思ったらすぐ急登に。 それも痩せ尾根ではっきり言って岩交じりの悪路。 はぁ~これが最後の難関? もちがかべ(壁)ですか。 ロープに鎖、木製階段に土止め杭を施した岩と土の滑りやすい道。
もちがかべって面白い名前だよね、どこにも道標はなかったけど、極め付きの悪路ですな。
おまけにどうも工事中らしく、ヘルメットやボルト、ハンマーが散らばったままの工事現場も、人だけいないのが不思議。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010111840.jpg)
こんな石交じりの急登もあります。すぐ横にヘルメットや真新しいボルトも。写ってないけど。
途中で、勝原から登ってきましたという若い男の子3人連れとすれ違い、少し話す。 その先に小荒島が望める場所が一ヶ所だけあって、ラッキーと1枚パチリ。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010112104.jpg)
結局、小荒島岳(一番高いところ)を望めたのはここだけでした。あとは樹林が邪魔をして…。
すぐ岩交じりの急登にまた戻り、上がらない足を無理やり上げて凌ぐ。 30分ほどでここを通過。 なるほどこりゃ酷いとこだわと一人ごちっていたら、ポッカリ前荒島に着いた。 頂上まで500m、でも標高1,400mの方が嬉しい。 あと100mちょっとなら20分程で稼げるわ。
前荒島、標高1,400mあと少し。道が格段に良くなった (右)ホコリタケに似てるけど、あんた誰?
下山してきた若い女性の単独行の方とつかの間話す。 やはり勝原からで「山頂は誰もいませんよ~、よかったですね~。」とじじいに嬉しい一言も。 わかってらっしゃる。 トーテムポールのような中荒島岳(1,420m)の道標をやり過ごし、根曲りタケの密生する中を一気に進む。
中荒島岳の道標、こんなでっかいのどう持ち上げたの?(右)遠く大野市街を望む。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010112915.jpg)
葉っぱは山毛欅でも、紅紫色の実は山毛欅の実ではありません、テングノコヅチかなぁ~。
荒島大権現のお社の屋根が見えたなと思ったら、山頂だった。 10:30、登り始めから4時間半でやっと北陸の名山に。 じじい長年の宿題が解消した瞬間は、意外と何も感慨はなく、安堵の方が大きかった。 やれやれ。
遠く白山をバックに定番の荒島岳山頂。 (右)かつてはやった山頂から見えるお山一覧台
ここも白山御前峰同様、一等三角点。 まぁ当然でしょう、このお山の風格からすると…。
山頂に鎮座する荒島大権現のお社、あまり傷んでなかった。(右)一等三角点の石標柱
昼食後、稜線沿いに新下山コースという、真新しい刈払い道を10分程行ってみたけど、何もなかった。奥荒島岳とか、なにかあるかなと思ったけれど。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hinemosu_yamajii/20241010/20241010114046.jpg)
新下山コースの稜線中途から本峰を振り返る。アキアカネが乱舞し、山頂はまだ夏?
山頂にまだシモツケソウが残ってました。そしてトリカブトも。夏と秋が同居ですね。
ちなみに、下山コースって変やなと思っていたら、下山集落に降りて行く道の意味でした。あははと苦笑いしながら山頂に戻り、荷物をまとめて下る。14:30、駐車場に戻り、正真正銘、下山。
行きは咲いていなかったリンドウ と あでやかなアキノキリンソウ、ここはもう秋。
名前は特定できないけど、キノコさんにも一杯お会いしました。
駐車場のベンチで冷たい足水(お湯でないけど、気持ちいい。)でゆったりと寛がせて頂きました。 熊さんにも面会せず、まだ残っていたお花類も楽しませてもらって、まさに豊穣のお山と言っても過言はない、よい山旅でした。