ひねもす 山歩き ショートショート ⑩ ー 岩仙洞草

正面から見たイワセントウソウ まるで白い線香花火を見ているような…

 みるからに華奢としかいいようがない。 高さ10cmもない小さな体に極細の茎、白色5花弁のお花も超ミニサイズ。 出会ったのは、アケボノツツジやミツバツツジ咲く広葉樹林帯、やや日陰の路傍。 この年お初の山毛欅実生株の双葉を見つけ、カメラを近づけたすぐ先の湿った苔の間にひっそりと佇んでました。 この株はまだ幼いのだろう、お花の付きようが少なく、根元にあるはずの根生葉も見当たらなかった。 でも、実生株がなかったら、恐らく見過ごしていただろう、有難い。

立姿のアップ 華奢というか繊細というか、白花の気品を感じる

 セリ科イワセントウ属。 この科の植物は姿形が細身のものが主流だけれど、多年草が多く、こちらもご多分に漏れない。 か細い茎に張り付くように出ている、深く切れ込んで、三つに分かれた小葉といい、散形花序のお花といい、その立姿にはどこか寂しさが漂う。 しかしだ、小さいながらもすっくと伸び上がり、凛とした上品な雰囲気を醸し出している。 どこか薄幸のうら若き乙女を思い起こさせますよね。 

お花のアップ、試みてみたけれど、これが精いっぱいで厳しいわ

 撮影場所は、山毛欅やウラジロモミの大木にゴヨウやアケボノ、ミツバやドウダン等のツツジ類がその脇を固め、足元を面河笹とオタカラコウ、メタカラコウやウワバミソウなどの下草類が苔とともに群生する、山毛欅主体の広葉樹原生林。 植生の豊饒さを象徴しているような一角でした。 その多様さは、味もそっけもない針葉樹植林帯とは雲泥の差。 こういう道行きにこの出会い、心癒されますよねぇ。 

 え、なんて? 同行の女性陣の皆様が何かおっしゃってる。 なに? カマキリの立姿に似てるって? はぁ~、そ、そう見えますか…。

生育環境の全景 路傍に苔類やシダ類が…。低位置で撮るとくっきり目立ちますよね

 

ひねもす 山歩き ショートショート ⑨ ー ニホンヒキガエル

ガサゴソと笹藪から姿を現したやや茶系統の個体。中くらいの大きさ かな?

 お山でお会いする動物では、頻度が御三家に入るのではないでしょうか。 もっそりと笹藪の根元などから突如現れて、人間どもなど、どこ吹く風の独立孤高のお方。 歩いている足元が急に動いて、はっとされた方も多いのでは。

灰色がかった個体や茶色が強い個体もあって、背中のイボイボの形状ともども、かなりバリエーションがある

 動きが鈍く、手で捕まえようと思えば簡単な、至って大人しい動物、その名もニホンヒキガエル。 ミミズや昆虫類を主食とするれっきとした肉食系で、もっぱら西日本に生息し、東にはあまりいらっしゃらないご様子。かなり偏った分布で興味湧きますよね。

愛称 カンタロウ(正式名:シーボルトミミズ)さんもニホンヒキガエルさんのお好みなのかも

 背中のイボイボが独特で、毒もお持ちの扱いようによってはちとやばい系だけど、横から見る限りはどう見ても巨大なカエル様です。 これまでお会いしたのは、春5月から11月まで季節はスリーシーズン、カメラを向けずにそのままやり過ごしたお方も随分と。 春先の繁殖期は、至って浅い水たまりのようなところに集まり、雌の背中に一回り小さい雄がしっかり抱き付いて離れず、この辺りは他のカエル一族の皆さんと同じでした。 

正面から見ると迫力満点!まさにハンター。でも次の瞬間、丸まって固まりピクリともせず。どうなってるんでしょう。

 中でもこの写真の主は出色。 面河裏参道のシコクシラベの水場へ向かう登山道で鉢合わせ。両側は一面、背の低い面河ザサの斜面、逃げたければどこにでも…のシチュエーションなのに頑として動かず。 まるでお前邪魔なのでどけ と言ってるよう。まぁ確かに人の方がビジターなんだけど。 でも人の言葉が判る?のか、「一枚撮らせてよ」とお願いしたらちゃんとポーズも。 余りの堂々たる落ち着きように、このゾーンの主(ぬし)的存在ではないかと。恐らく人間などごまんと見てこられたのでしょう。 撮り終えたとみるや、足元から悠々と笹原の中に消えて行かれました。 はぁ、もはや達人?の域ですかな、いや人様ではなくカエル様ですが…。

これまで会ったニホンヒキガエルの中では、大きさ、風格、頭の良さ どれも一級品の個体。堂々たるもの。

 

毎年恒例 鎚年始参り 

夜明し峠から霧氷輝く石鎚山稜線(左から2番目のピークが天狗岳)と右端に北岳を望む まさに絶景❕

 もう何回目になるか、数えたこともないけど今年も1月2日がめぐってきた。 毎年恒例の鎚年始参り。 例年、お四国はお正月に雪は多くない。本格的に積もるのは1月下旬から2月中旬。3月の声を聞くともう残雪期だ。 南国の悲哀といえばそれまでだけど、ひと昔前に比べると雪の量もめっきりと減った。

 冬季、石鎚スカイラインは積雪閉鎖中。 石鎚登山ロープウェイ下谷駅から始まる、表参道ルートしか手ごろな時間で日帰りできるコースはない。 2日からは平常通りの8:40始発で、登山客よりスキー客の方が圧倒的に多いゴンドラがスルスルと成就駅に向かって上がってゆく。駅構内でのんびりロングスパッツとチェーンスパイクを付け、出発。念のため持参したアイゼンはこの雪ではいらないだろう。

概念図

 成就社まで20分ほど参道を歩き、登山届を記帳。これを書く登山者はあまりいない。昨年などは届出綴が行方不明に。成就社での登山者の位置づけがおぼろげに伺えるような、さみしい扱いだった。 ともあれ、快晴なのはいい。最初、八丁に向かって一路下る。表参道の面白い所だけど、帰路はつらい登りだわ。 気温5℃、坦々と下って9:30降り切った。風が全くなく霧氷の落下する音だけが響く、静かな年始参りだ。

 表参道ルートは別名階段道と言われ、とにもかくにも多い。山屋としては、それをチェーンスパイクで踏みたくはないが致し方ない。 試し鎖をスルーして前社ヶ森に回り込む。小屋冬季閉鎖中)前で一汗ぬぐい、行動食を少し。我々は数少ない早出組なので、おいおい登山者は増えて来るだろう。 延々と続く雪に埋まった階段を忠実に踏んで、夜明し峠は10:30だった。

ここ10年ほどで最も雪の多かった、2014年お正月の二ノ鎖周辺。もはや夢かも?

 ここでやっと石鎚山の北面が望めるように。一面、霧氷に覆われた稜線は真っ白で、ブルースカイに映え、前社ヶ森、夜明し峠と2回の急登を凌いだ後のご褒美の絶景だ。雪は笹も覗いているので例年よりやや少ないか。 突然だが、石鎚山というお山は存在しない。稜線上の天狗岳、南尖峰と弥山3座の総称(すぐ北の三角点のある北岳(1,920.9m)を含める例もある。)なのだ。

二ノ鎖避難小屋上の霧氷 朝日に映えて美しい

 さて、最後のそして一番厳しい急登に入るとするか。 避難小屋のある二ノ鎖まで雪道をジグザグに切り、霧氷で白く輝く木々の中を縫う。

霧氷が張り付いた天狗岳北壁 ロッククライマーの聖地でもある

 面河乗越分岐、三ノ鎖と過ぎ、弥山(1,972m)への最後の階段へ入る。 この鉄階段ももう20年になるか、頂上小屋建替えに併せ、従来の木製から造り替えられて、一番危なかったところが随分と安全になった。

弥山への階段道中途から遠く瓶ヶ森と以東の山系の山々を望む 雪、ないわ

 11時半前、弥山到着。登山者は自分で3人目と静謐が支配する、つかの間の本来の雰囲気だ。 お札売場下の冬季避難スペースのドアを開け、ザックをデポ。 と、小屋内にポリ製のデカ水タンク、脚立やメンテ物品が…、面積の3分の1ほどか。 ここは緊急時の登山者避難スペースとして建替え時に設けられ、過去に施錠されていたこともあったが、中に関係のない物品が収納されていたことは一度もない。 事情を知らない頂上小屋の者が小屋閉鎖時に入れたのだろうか。 もしそうなら、以前の固有種シコクイチゲの盗掘事件といい、今回といい、お粗末で情けない限りだ。

弥山での不快な事は忘れなよと天狗岳がおっしゃっているような、堂々たる佇まいだ

 快晴無風とこの時期稀な天気の中、3人で最高峰の天狗岳と南尖峰(共に1,982m)へ空荷でピストンする。 ここは約1,500万年前に噴火した石鎚古火山の残滓だけれど、両サイドが切れ落ちた安山岩のナイフリッジ。 鎖をしっかり保持して弥山から下り、慎重に稜線を進む。

北壁には細かい氷の成長の跡が… ブルースノーの妖しい世界

雪と風の織りなした氷の芸術品 元の木はナンゴクミネカエデ、秋は美しい紅葉だった

 お昼前、天狗岳到着。遮るもののない眺望と霧氷の芸術を楽しみ、南尖峰まで足を延ばしてから、後から追いついてきた一人を加え、4人で弥山に戻った。

天狗岳山頂から南尖峰を望む 左手に土小屋とその後ろには筒上山、手箱山も

今年とほぼ同じ程度の積雪だった2018年お正月、天狗岳から弥山を望む

 帰途は、ぼちぼち姿の見え始めた登山者に声掛けしながら、紺碧の空に浮かぶ霧氷の鎚を振り仰ぎつつ、坦々と下った。成就に帰り着く頃には、もう雪も次第に融けつつある南国だった。

雲一点の曇りもない、まさに日本晴 お正月には稀な天気で霧氷も輝いていた

 

ひねもす 山歩き ショートショート ⑧ ー フクリンササユリ(覆輪笹百合)

 毎年7月文月の頃になると、庭仕事をしていてもなんとなく落ち着かない。どこかふわふわして気もそぞろ。そう、どうもこのお花が一因のよう。 近場にある低山は、中四国のお花の名山と言っていい存在で、早春のスプリング・エフェメラル(春の妖精)、そして春本番と山シャクヤク等の時期が過ぎると、いよいよこちら様が…。 この季節、約1か月にわたってほぼ全域に点々と咲き続け、毎日、山域のどこかで人知れず花開いていらっしゃる。 気の早い常連の皆様は、梅雨晴れの日を逃さず足しげく通って、あそこの株はだいぶ蕾が膨らんできた、どこそこにも新しい株が…と、情報交換に余念がない。 

見る者をはっとさせる、この気品   艶やかさをも兼ね備え、美しい

 「百合」の語源は、なんでも「揺すり」らしく、お花が風に吹かれて揺れる様子からきているよう。ササユリは、西日本を代表する百合で、本州中部地方以西と四国、九州に自生する。特に、お四国でも伊予、土佐の二国には、葉に白い縁取りのある覆輪笹百合と呼ばれている品種が多い。「覆輪」は、もともとお茶席の碗や刀の鍔などの縁を覆ったり、女性用の衣類の袖口を別の布で縁どったもの が語源らしいけど、何処からフクリン+ササユリとなったのかは不勉強でう~判然としません💦

葉の縁にくっきりと白い線が浮き出ている個体。本当に笹の葉によく似ている

 このお花、色のバリエーションは濃い紅ピンクからほぼ白色まで多岐にわたり、1株1輪もあれば頑張って?複数のお花をつけている株も。 最近、大振りのものは、盗掘😠等で減少しているけど、それでもゾーンに咲きそろった時は、圧巻です。

たまたま出会った、お花の色がいずれも異なる複数株、鮮やかな覆輪です。ラッキー

 花言葉は「上品」、「希少」だそう。 言い得て妙で、凛とした気品を併せ持ち、その可憐さも相まって、旬の時期に巡り合えた時のうれしさは言葉では言い表せません。お花を目の前にいたしますと…はい。 お若い方々には?かもですが、昔から「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」といわれるように、女性の美しさを讃える代名詞となっているのも十分に納得します。

やや大振りながら標準的な色の濃さの株 と 右はこれから開花を迎える株

 それと、ある程度日照は求めるようで、笹原の縁や林道の土手、日差しが入ってくる疎林辺りがお好みのよう。 石鎚山系では確認している限り、自生地の最高点は明るい笹原真っ只中の標高1,830m地点。こんな厳しい環境でと驚きますが、1,000mを切る低山まで幅広く、お住まいになっていらっしゃる。もちろん、標高によってお花のカラーリングには若干の差は出ますけど。

葉に白い縁取りはほとんどないけど、花弁の縁だけピンクの濃い株。近場の低山では稀ですね

  ともあれ、美しいものは美しい。 種子発芽から開花まで自然界では10年以上かかる、貴重なお花。本県RDBでは絶滅危惧2類(VU)で、油断するとすぐに絶滅まで行ってしまいます。 これほどの感動を人に与えることのできるお花は数少ないですし、東北のヒメサユリ同様、次世代に大切に引き継いでゆくべきもの。 そろそろ近場の低山でも組織的な保護活動があってもいい時期なのではないでしょうか。

透き通るような淡い紅系のピンク 上品さと可憐さがなんとも…

 

ひねもす 山歩き  ショートショート ⑦ ー オオミズアオ

 初夏、近場の低山でお花を撮り終え、薄暗くなりつつある沢筋の道を急いで下っていたら、瞳の隅に明るいエメラルドグリーンが一瞬走った。そのまま通り過ごしたものの、日ごとに色濃くなる新緑の樹林帯では明らかに異様な色。足を止め振り向くと、細い枯れ枝になにかぶら下がっている。蝶のようだけれど、動かない。近づいてみると、なんと蛾でした。かなりのビッグサイズで、翅の端から反対側の端まで(「開張」というらしい。)10cm以上はありそう。実のところ、蛾のカラーリングは焦げ茶色の先入観が強く、ちょっと面喰いました。

黙然として微動だにせず。 ぐっと近づいても我関せず…でした

 大水青 なんと絶妙なネーミングでしょう。翅は、美しいエメラルドグリーンでまさにそのもの。前縁の頂部は濃い臙脂のやや太いラインが入り、翅中央やや上部には楕円形の小さな眼状紋も。裏側の胴体部分は真っ白で、脚は臙脂と、峨でこんな種があるのかと正直、驚きました。 う~ん…個々のパーツの色遣いとバランスは見事で、なかなかおしゃれなスタイリストですよね。でも、確かに綺麗なんですけど、なにか不気味さを感じるのは、私だけでしょうか。

反対側に廻ってパチリ! う~む、こちら側から見ると明らかに蛾ですね

 調べてみると、チョウ目ヤママユガ科の一種で、よく似たオナガミズアオ絶滅危惧種らしい)という同属異種もいるみたい。 さてさて、ここからが問題で、写真の主がどちらなのか、判りません。本人には聞けないし…。 で、すったもんだの挙句、Google教授の講義録の中に判断ベースらしきものを発見。 なんでも、前縁頂部の臙脂に白いラインが端まで入っている個体はオナガミズアオで、頭部周辺しかない個体はオオミズアオのよう。 翅後角の先端が尖っているかどうかも判断ベースとも。 それと写真の個体は尾状突起が短く、おそらくは雌ということもわかりました。 

真上から見下ろしたところ 二本の触覚の形はたしか〇〇のモデルになったとか…

 しかし、このオオミズアオさん、成虫になって一週間くらいの命らしい。なんでも口吻が退化していて一切、食べることができないらしく、幼虫期に蓄えた栄養だけで交尾し、卵を産み付け終わったら、お釈迦ですよ とも。 我が家の山桜に毎年、おいでになる蝉さんたちよりも短い一生なんですねぇ。 そうしてみると、美しく着飾ってはいても哀れというか、言葉も…。 人間どもの巷では、大水青さんをご覧になったら幸福が舞い込むといわれてる?らしいけど、果たしてご本人たちはどう思っていらっしゃるんでしょう。

いゃ~、ただただ妖しい美しさ 人の世の浮世話とは何の関係もないかも 

 

晩秋の石見・三瓶山周回行 ― 行く秋を楽しんだ陽だまりの山旅 ―

楓紅葉の中を室の内池へ続く、気持ちの良い笹道を行く  

 朝6時過ぎ、なんとか足元が見える頃合いを見計らって朝寒の東の原駐車場を出発する。 おおよそ百台は大丈夫だろうと思われるこの駐車場、雪の来ていない今はガラガラで、登山口すぐ右の観光リフトも二人掛けのベンチリフトが侘しそうに揺れてるだけ。 今日は、中国地方のお山で最後まで残った、島根県の端っこに位置する三瓶山を時計回りに周回する予定だ。 こんなに早くなくても余裕で歩けるけれど、早起きに慣れた体の方が許してくれない。 まぁ早立ちに三文の得?もあるかもね…。

概念図

 太平山(854m)まで幅員2m以上の大きく「くの字」に折れ曲がった登山道。 樹林帯の道は柔らかい火山土で傾斜も緩く快調に飛ばす。体が暖まってきて、ウインドブレイカーを脱いでいる間に若いトレラン仕様の兄さんが追い抜いていった。ここは彼らには絶好のお山だろう。

大平山への登り中途、登山口の東の原(白い屋根のところ)を望む  雲海が綺麗だ

 7時前、「大山隠岐国立公園・三瓶山」の綺麗ででっかいプレートのある太平山に着いた。標高差300m小1時間ほどの行程。ちょうど朝日の出に間に合って、男三瓶山や子三瓶山もモルゲンロートに染まる。

荘厳な朝日の出  何回見ても美しい

大平山山頂 と モルゲンロートに染まる男三瓶(右)と子三瓶(左)

 ここからまず孫三瓶山(903m)を目指してカラマツ林の中の落葉で埋まった笹道を行く。整備が行き届いたとても歩きやすい道だ。 入ってすぐ左の斜面下にお地蔵さまが鎮座、どうやらこれがお子さんの願い事をかなえるという、「こととい(事問い)地蔵様」らしい。子供の頃から60年も経過したじじいも神明に手を合わせておく…。

こととい地蔵様 と まだ咲いていたアキノタムラソウ

 奥の湯峠まで緩い下りをすいすいと進み、峠からは標高差100mほどの登りへジワリと変化。ほぼ末枯れのクヌギと柏主体の広葉樹林帯の中、朝日を浴びながら歩むのはなかなか気持ちがいいものだ。

孫三瓶ニセピークを望みつつ、しっとり落ち着いた落葉道を行く

 7時半、芒と笹交じりの孫三瓶山頂。 はるか日本海に向かって雲海が茫洋と広がっていて、右手には大江高山(808m/日本遺産)を盟主とする火山群の峰々が聳え立つ。いやぁ早朝ならではの絶景ですな。 先ほど追い抜いて行った兄さんがガスバーナーを出してヌクヌクの朝ごはん中だった。聞くと夜半に広島を出て早朝に登山口に着き、そのまま歩き出したとのこと。

孫三瓶山頂から日本海方面の雲海を望む  右手が大江高山山塊

 ここから眺める子三瓶山(961m)は山頂までずっと芒で覆われた、抒情たっぷりのたおやかな峰。朝の陽ざしが当たって枯れ薄が輝いている。 孫三瓶を下りきった風越(805m)も朝露の笹道が美しい峠だった。

風越手前から朝日に映える子三瓶山  右奥は男三瓶山

 散り残りの羽団扇楓やアキノキリンソウ、狂い咲きのレンゲツツジ?等を撮りつつ、子三瓶山には8時15分きっかりに着いた。蕭条たる一面の枯れ芒の穂がまるで花のよう。 男三瓶の雄姿をバックに茫漠と芒原が広がり朝日に照らされて白く輝いて、いやぁ美しいわ。 晩秋ならではの景色に俄かには去りがたく、行動食を言い訳に15分も休憩。でも心満たされる長逗留だった。

子三瓶から孫三瓶を望む 枯れ芒に風情があって美しい
羽団扇楓の紅葉  と  まだ残っていた?レンゲツツジ、アキノキリンソウ

子三瓶からの男三瓶の雄姿  盟主たるに足る堂々たる山容だ

 でも、今晩は北の原にある、全国有数といわれるキャンプ場に廻るので、しぶしぶ腰を上げる。 男三瓶への最低鞍部、扇沢へ向う中途、赤雁山(886m)手前で枯れ薊類を撮っていたら、例の兄さんが追い付いてきた。先に行ってもらってリュウノウギクを1枚。

枯れ薊と生のお花が共存? リュウノウギクは至るところに咲いていた

 三瓶山は、アップダウンはあるものの、この標高だとピークから最低鞍部まで15分もあれば降り切ってしまう。扇沢にもすぐに降り切った。まだ9時前だ。 ここは余り日が当たらない峠で、そのまま登りに入る。標高差270mほど、一応、この山系では一番の急登にはなっているけれど、登り切るのに小1時間もいらないだろう。ちょっぴり火山岩の露出する、岩交じりの道だけど、先月の久住・大船山に比べればなんということもない道だった。

秋晴れの中、急だけれど快適な登りをゆく

 もう冬枯れに近い景色だけれど、まばらに散り残った楓類やクロモジの黄色が残っている道をゆっくりと登るのは楽しいものだ。

 

散り残りの楓黄葉 と クロモジの黄色が鮮やか
やっと秋の定番 リンドウが…  おっとカワラナデシコがこんなところに

 ひと頑張りで高原状の一面の芒ヶ原に出た。 途中で右の古い木道に寄り道し、大平山から望み見て、崩落地になっていた崖の上に出る。吹き上げ風が強く、少し寒いくらい。火山といえども風化の洗礼はしっかり…という眺めだった。

男三瓶山頂直下から子三瓶と孫三瓶 なぜか郷愁を誘う眺めだ

 元に戻って、芒道を進み、もう登り切ったかなと思ったら山頂はその先の階段を登らないといけなかった。

えいやっ! 山頂までひとっ走りの階段

 10時前、男三瓶山(1,126m)山頂。 何の変哲もない、荒れ地然としただだっ広いところで、真ん中に一等三角点がぽつねんと寂しそうに鎮座していた。 空の青は透き通って美しいけれど、結構、風があって寒く展望所を早々に引き上げ、風を避けて東端のベンチまで移動。行動食休憩を取る。

空の青が紺碧…の男三瓶山頂を望む

朝方の大雲海も切れて、日本海がやっと姿を現した
男三瓶山頂 と ぽつねんと一等三角点が

  ここにもセンブリの枯れ花が…、ここまで点々と株があった。保水力が高くて占有種が芒と笹、日照が十分なぶん、センブリにはもってこいのお山なのだろう。 

良薬は口に苦し センブリはホンマによく効きます

 暫くは、ほぼ無人の山頂で座っていたけれど埒も明かない、かといって昼食には早すぎる、半端な時間。 このままだとお昼には車に帰り着いてしまうので、室の内に廻ることにして昼食はそこで摂ることに決め、そうと決まれば、そそくさとザックを整えて出立。 すぐ下の芒野の端に瀟洒な避難小屋があって、県外山行の常で内部をチェック。15人くらい収容の板間と中二階もあって、立派な小屋だ。 ストーブがないのが玉に瑕だけど、周辺に枯枝の供給地がなく、これはやむを得ないだろう。

男三瓶山頂から避難小屋を望む すぐ右に下り登山道が…。

 犬戻しまで北東面の急傾斜の灌木帯を縫う、足場の良くない下りが続く。 過去に遭難者が出たらしいけど、このゾーンはあり得るかもと思えるところだ。 斜面に何かないかなと鵜の目鷹の目で歩いていたら、なんと青大将さんと目が合ってしまった。まだ人擦れしてないわ、この子。 すぐ先でホソバノヤマハハコが咲き残っていたのでこれもパチリ。 やはり日照がたっぷりだとそこそこお花は残ってますね。 結構、風が強いのだろう、紅葉は早々に吹き飛ばされてしまってもう末枯だったけど。

まだ若い個体の青大将(カメラに全然動じなかった)と ホソバノヤマハハコ 綺麗に咲いていた

 11時には、ちょっとした岩場でしかない兜山(981m)を通過、パラボラアンテナの立ち並ぶ女三瓶山(953m)はそこから10分程だった。 何もないので、ささと周回のスタート地点、室の内展望所に戻る。 ゆっくりカメラを使いながら歩いても5時間もあれば余裕で周回。 気持ちのいい稜線で芒と笹が印象的な、なかなか良い稜線歩きでした。

(左)下り中途、孫三瓶と茶色の室の内池(左端中央)     (右)女三瓶からの男三瓶山

 で、予定どおり室の内池を目指して、下りの九十九折れに入る。 坦々と下りに下るという印象、途中に炭焼跡や岩塊斜面もあってそこそこ生活の匂いや火山の残滓があるものの、静謐の中を行く。

(左)至るところにあった説明板と炭焼跡      (右)典型的な岩塊斜面

 15分程で道は平坦に、降り切ったようだ。 この辺りはまだ楓紅葉が残っていて、しばし道を外してこれまで手持無沙汰だったカメラさんに活躍してもらう。他の落葉樹も幹回りが大きいものが多く、雰囲気のまことによろしい晩秋の散策道。 静かで人にも会わず、気持ちよく歩けた。

室の内池への気持ちの良い、平坦な道 まるで庭園の中のよう

室の内池の楓紅葉は今、盛りでした やっと巡り合えたというか…。
楓紅葉 二景

 室の内池は1.15haと広いわりに水深は1.4mほど、茶色の池で火山湖としては珍しい?色かな。 なんか泳いでいるのでよく見るとなんと鯉だった。 説明では放流されたらしいけど、餌が少ないようでやせ細っているように見えた。

室の内池と孫三瓶山  左隅に黒く映っているのは鯉の魚影

 路傍のベンチに座り込んでのたり昼食。 陽だまりで昼寝でもと、ゆっくりしたかったのに、意外と人が通って当てが外れてしまった。 それでも、カシワ黄葉の中を奥の湯峠まで戻るコースは、枯れ葉の降り積もった、ふかふか道で気分が良かった。 室の内は、稜線をただ歩くだけでなく、ここに廻らないと三瓶山というお山をきちんと理解できないかなと思える場所だった。

雑木紅葉 二景

 帰路、こととい地蔵様に無事に下れたお礼を伝え、子三瓶山の蕭条たる枯れ尾花に思いを馳せながら、東の原へのんびり下った。

 

 

中九州・秋の一人旅  ― 久住・阿蘇に遊ぶ ―

一面の芒ヶ原を扇ヶ鼻分岐へ  星生山稜線のギザギザが美しい

 お四国から近くて遠い、九州。 四辺が海に囲まれたお四国は、本州と橋でつながるまではフェリーで海を渡るのが定番だった。お若い方にはチンプンカンプンな宇高連絡船が懐かしい方もいらっしゃるだろう。 今の時代、大橋(高速道)を使って本州は何度も往復しているのに、この負の遺産の影響?か、未だフェリーが主要な交通手段として残る九州はなかなか腰が重かった。 今春の南九州行で使わざるを得ず、凡そ20年ぶりに乗船してみると佐賀関に渡るフェリーだと時間は1時間ちょっと、なにより休憩がたっぷり取れるという、大きなメリットが。 特に帰路は休養にちょうど良いタイミングになって、今回も春の学習効果で枕とアイマスク持参で客室に移動。航送料金はそこそこかかっても、やはり最短距離で九州に入れるのは大きく、スタート地点の久住・牧ノ戸峠まで自宅から4時間ほどだった。 じじいになってよく判ったけれど、これ、体の負荷がめっちゃ軽いわ。

 体の負荷といえば、今回は一種のテストランだった。やっと癒えた膝で4年ぶりの天泊再開に坊がつるを選び、準備も整えた。ずっと日帰り装備だけだった肩にはご迷惑だけど、軽量化を徹底してテント+シュラフに食糧を加えてもプラス2kg くらいだろう。グラナイトギアの52㍑ザックは一泊程度にはおおげさだけど、年寄りの悲しさ、寒さ対策で嵩張るばかり。でも、また背負えるとは思ってなかったので、そのうれしさはある。 さて、うまく行きますかどうか。こればかりは歩いてみないと判らないわ。

パート1 ・ 久住  (1泊2日)

概念図

10月23日(月)

 朝6時過ぎ、薄明の牧ノ戸峠駐車場を出発。 もうヘッドライトが至るところでチラチラしている中、コンクリで固められた登山道に入る。昨晩はかなり冷え込んで車も夜露がびっしり。この時期、九州でも標高1,330mではこの寒さかいなとふと思う。

早暁の阿蘇山群を遠望する  どっしりと大きい

 前衛峰の沓掛山(1,503m)に着く頃には明るくなって、山頂の岩峰群にはカメラマンの列が。三俣山の肩から出る日の出には時間があり過ぎるので、早々に通過する。

沓掛山頂から空が白み、朝日の出も間近かな三俣山を望む

 さすがに久住主要山群へのメインアプローチ道とあって、よく踏まれていて、歩き易い。枯れ芒を縫う緩いザク道の登りを坦々とこなすと扇ヶ鼻分岐はすぐだった。ぐっと近くに感じる阿蘇山群やピークに朝日が当たり始めた久住山(1,786.58m/一等三角点)を眺めながらのんびり歩く。

ちらっと覗く久住山頂に朝日が当たり始めた 一瞬のモルゲンロート

 大きな立木のほとんどない、ミヤマキリシマと灌木群に茅野を渡る高原漫歩。 火山特有といえばそうだろうけど、アルプスの景観に慣れた者には、ちょっとした異空間に感じる。左手の星生山稜線にちょっぴり紅葉が入っているのが救いかな。

 8時、久住別れ手前の避難小屋。 コースタイム通りも快晴で暑くて早くも一汗かいた。広い原っぱとしか言いようがない平坦地の、隅っこにポツンと立つ避難小屋にザックをデポし、サブザックひとつで久住山や中岳等の主要山群のローテーションに出発する。

(左)久住別れ手前の窪地に建つ避難小屋 と (右)久住別れからの久住山頂(右端)

 道は小石交じりのザク道で、脇をドウダンツツジやミヤマキリシマの群落や芒が固めてはいるものの、正直、植物というものの存在をあまり感じない殺風景さ。 お花のない秋特有かもな…と思いつつ、久住山へ。この頃にはすっかり晴れ渡る。風のほとんどない登山日和で、祖母・傾山山塊が遠霞に浮かび上がり、三俣山越しに大分・由布岳の双耳峰も遠望できて、山頂はよい眺めだった。

春に登った祖母山と左隅に傾山 祖母山群のスカイラインが美しい
(左)久住山頂と遠く大分・由布岳の双耳峰 (右)全国に約970しかない、やや傾いた一等三角点

 ここまで30分ほど。早朝出発だったので、まだそんなに混んでもなく、少しゆっくりできた。牧ノ戸峠から標高差約350m、スニーカーで登って来れる道の具合と距離だから、午後はこりゃ混むだろうなと思いつつ、山頂を下って稲星山(1,774m)に向かう。

稲星山に向かって神明水分岐へ下る ずっとこんな感じの道だった

 霜柱を見ながら神明水分岐を通過し、下った分を取り戻す100mちょっとの直登を頑張って無人の稲星山に。久住山と10mほどしか違わず、眺望も抜群なのに人っ子一人いない。不遇のお山かな。点々とドウダンツツジの塊が紅をあしらって気持ちの良いところだった。

ドウダンツツジの紅葉を前景に祖母傾山山塊  秋色爽やかなり

 ちらっと見えた坊がつるを横目にドウダンの赤と一気の急登が印象的な中岳に向かう。 2回目の100mの登り下りを経て10時、中岳(1,791m)山頂。九州本土最高点の道標をしり目に、今日の天場、坊がつる全景を見下す贅沢な眺めだ。

(左)坊がつるをバックに中岳山頂  (中)御池と久住山 (右)日向ぼっこのスズメバチさん

今日の天場 坊がつる全景  バックは平治岳、右下に小さくテントが望める

 もう雲一つない天気で眺望にもやや飽きてきて、人もぞろぞろ…をしおに、そそくさと天狗ヶ城(1,780m)に向かう。眼下に御池を見つつ、時計逆回りの周回行もこれが最後のピークになる。 30分弱で草交じりの丸っこいピークについた。少し時間は早いけど、正面に硫黄山(1,554m)の荒れ果てた白い稜線と噴煙を眺めつつ、ここで昼食に。 御池に立ち寄って避難小屋に帰り着いたのが11時半前だった。大して歩いていないけど、数回のアップダウンの影響か、思ったより時間がかかってしまった。この周回行の印象は、茶色と灰色。ドウダン紅葉もあったけど印象薄く、火山特有のゴロゴロ道のインパクトが大きかった。

天狗ヶ城の下りからの御池  満面に水を湛えて涼しげだ

 もうここからは地形図上の登りはない。距離は長いけど、坊がつる(1,245m)までずっと下り…のはず。 でしたが、10月下旬とは思えない伏兵が待ってました。諏蛾守越への分岐である中宮跡までは硫黄山の噴煙を左に見ながらのほとんど傾斜のない河床歩き。至るところに黒っぽい火山弾が散らばっていて、茅野交じりの静かな道もつい、急ぎ足に。

白い水蒸気を上げる硫黄山噴気孔 と 火山弾、左が硫黄山 右が阿蘇山 のもの

 中宮跡から右に90度ターンし、法華院温泉への標高差150mほどの下りに入る。距離ほんの600m程、砂浜状のほぼ水平道がしばらく続き、真っ昼間のカンカン照りに無風と来て、まるで白い砂漠を歩いているような錯覚に。汗だくでアンダー1枚にされ、やれやれホンマに10月も下旬なの?

(左)下ってきた久住別れを振り返る   (右)法華院温泉山荘への白い道 暑かった!

 温泉への巨石交じりの下りに入って日陰も増え、やっと一息付けた。ここからは渓流紅葉も見つつ季節相応の涼しさに。

(左)渓流に沈む紅葉落葉 涼しげだ     (右)法華院温泉山荘がやっと見えた

 13時前、法華院温泉山荘に到着。 ここの一押しはやはり温泉でしょう。当然、日帰り入浴はするべと受付へ。5m×7mくらいのモルタルの殺風景な浴室の湯船にお若い先客の頭が二つ浮いていた。外にも同じくらいの広さのデッキが設えてあって、正面に大船山の絶景。早い時間帯だったからかお湯も大変綺麗で、いゃ~、寛げました。

法華院温泉山荘 全景  中央右の木の横(1階部分)がお風呂の展望デッキ

 さっぱりして今日の泊り場、坊がつるには14時前に到着。水場は近いし、草地のクッション付き、風はほぼないだろう窪地と、まぁかなり優秀な天場でしょう。 トイレが旧態依然だったのにはがっかりを通り越して驚きました。国立公園内でこれほどの好条件の天場、相応で早急な改善が必須でしょうね。 テント場は夜の沢風を避けて10m程離れた草地を選択。 初日は膝も大丈夫で安寧に暮れ、北斗七星とオリオン(同居してる!)を肴に癒しのホットウイスキーでした、快適。

途中に咲いていた 狂い咲きのミヤマキリシマ
(左)坊がつる天場への木道を行く    (右)青空に浮かぶ大船山(中央奥)

10月24日(火)

 今日も6時立ち、大船山(1,786.37m/三等三角点)から平治岳(1,642.98m/三等三角点)を回って坊がつるに戻るので、テントはそのままにしてサブザックにお昼も詰め込む。 お星様が綺麗で、まだ暗闇の中、ヘッドランプのか細い光を頼りにまず今回の主目的地、大船山を目指す。 ま、聞こえは颯爽も、道は火山特有の信州・妙高山を彷彿とさせる、岩だらけのゴタゴタの悪路に急登ミックス。 嫌気がさしたけど、幸い、途中で追いついてきた若い兄さん(以下、「M君」と呼ぶ)をペースメーカー代わりについてゆく。おかげでこのじじいも昔取った杵柄、エンジンがかかってきた。途中の落葉の絨毯も楽しみつつ、標高差450mを一気登りで7時30分段原につく。

(左)段原への登り中途、落葉紅葉を堪能   (右)段原 奥は大船山

 日の出を待っていた登山者群と狭い道ですれ違いつつ、20分程で山頂へ。この山系の紅葉の名所とあって、20数人はいるか、結構な数の登山者だ。

(左)大船山頂から九重連山 (中)スカイブルーの山頂 (右)山頂から阿蘇方面の紅葉

山頂から御池を見下ろす  光の具合でちょっと妖しい湖面に

 ひと通り眺望と紅葉を楽しんだ後、M君と一緒に御池へ下る。御池は山頂から見下ろすとやや妖しい雰囲気だったけれど、穏やかな湖面に岸に並んでいるような白い岩石群と相まって、なかなかよろしい眺め。写真家の皆さんが題材に選ぶ理由がよくわかりました。ただ、今日中に長者原まで下山しないといけない時間的な余裕のなさ、光の角度などもあって、しっとりと落ち着いた一枚は残念ながら撮れなかった。

 湖畔からM君を誘って対岸の岩峰へ。前セリに下る明瞭な道から右へのかすかな踏分道へ入る。あまり人は歩いていないようだ。 岩峰上から見上げる大船山はピークらしい品格があって、来てよかったねとM君と話す。

御池対岸の岩峰上からの大船山頂  どっしりとしてよいピークだ

岩峰上から遠く大分・由布岳を望む  見事な紅葉群に圧倒される
岩峰上からの御池二景  やや盛りを過ぎているけれど美しい

 帰りに再度、御池湖畔に戻ると幸い風が止み、湖面に映る(漣入りだけど…)岩峰群も撮ることができた。

御池  対岸にある逆さ岩峰と漣入り 絵になる風景も技術が…

再び大船山山頂に戻って撮った、御池全景 少し光線位置が変わっていた

遠く霞む祖母・傾山山塊をバックに大船山の紅葉
大船山山頂からの岩峰群のアップ(右の岩に登った) と 坊がつる全景

 9時半、段原に戻り、坊がつるに下るM君と握手して別れた。

 ここからは大戸越を目指して一路、北へ。雪洞状のミヤマキリシマがせり出して人一人がやっと通れる狭い道を北大船山へ進む。

大船山への中途、大船山を振り返る。 左下の白い部分は枯れ芒だった

 その先は標高差250mの一気の下りだった。こぶし大くらいの火山岩が積み重なって浮石化していて、また違った意味の悪路。結構、神経を使い、下りのコースタイムが40分になっている理由も納得だ。 10時過ぎ、大戸越に下りきった。暑くてちょっと小休止と水分補給。平治岳はここからは見上げるような急登だ。

(左)大戸越への下り かなりやばい道   (右)平治岳の急登を見上げる

 ミヤマキリシマの名所とあって、登りと下りの専用道がある、ちょっとユニークなお山もこの季節だとあまり関係はないかな…。 それではとジワリと登り始めると、いゃ~やはり岩交じりの急登。でも大船山の悪路に比べれば随分とお優しく、30分弱で南峰に。

南峰直下から北大船山の下り斜面を眺望する  点々とドウダンツツジや楓類が…
(左)急登中途の岩場、結構多かった   (右)南峰から平治岳本峰を望む

 正面に見える本峰まではトラバース道を10分弱。平治岳は高さこそ1,643m弱と一回り低いけれど、久住山群を見渡せる優れた展望台。そよ風もあって涼しく、お花のない時期とはいえ良いお山でした。

平治岳山頂からの久住山群一望  まさに絶景でここは素晴らしい展望台だ
平治岳からの下り 紅葉二景 と まだ残っていたミヤマアキノキリンソウ

 しばし涼をむさぼった後、ちょっとわかりにくい下り専用道の道標をなんとか見つけ、ゆるゆると巻きながら下る道に付き合って11時半前、大戸越に戻る。  大戸越から坊がつるまでの間は、最初、また浮石道も次第に落ち着いてきて良い道とは言えないけど、お昼前にはテントに帰り着いた。 予定より早く戻れたので、昼食がてら一休み。朝、びっしょりだったフライも乾いていて、10分ほど帽子をかぶって昼寝も。 手早く撤収し、13時に天場を後にした。

黄金に輝く草紅葉の坊がつる  遠く大船山も…

 もうあとは雨ヶ池経由で長者原へ下山するだけだ。 ピッチを上げる必要もないし、雨ヶ池越まで膝の具合を確かめながらのんびり緩い登りをゆく。途中、森林管理署が道路補修作業中で、お礼を伝えて通過させてもらう。

下り中途の落葉紅葉 しっとりと落ち着いた静けさだった

 降雨後は池になるらしい雨ヶ池は、カラカラだった。膝は不安を全く感じなかったので、あと4km程の緩傾斜道をひたすら歩く。 一面葦ノ原の木道を抜け、坊がつる讃歌の碑のあるバス停には15時前の到着だった。

(左)三俣山をバックに葦原の木道を行く(右)坊がつる讃歌って芹 洋子さんの持歌だったの?

  坊がつる1泊2日、お久しぶりの天泊行は膝の不安解消という、願ってもないお土産付きで無事、終えることができた。

 

10月25日(水)は膝の休養日に充て、黒川温泉で湯浸り三昧。深さ1.6mの立湯がなかなか面白かった。もう少し湯船が広かったら平泳ぎができたのに…残念。

鍋の滝(裏見の滝)にも…  

パート2 ・ 阿蘇 (日帰り)

概念図

10月26日(木)

 今朝もヘッドランプと一緒に6時出発。仙酔峡から阿蘇最高峰の高岳(1,592.3m/三等三角点)を目指す。

茫洋と広がる阿蘇のカルデラと朝霧  外輪山の向こうは久住山群というぜいたくな眺め

 芒道を10分程で仙酔峠。正面に圧倒的な迫力で鷲ヶ峰の岩峰がそそり立ち、峠周辺にはクライマー達の慰霊碑が立ち並ぶ。合掌して通過、他人ごとではないし…。

(左)ミヤマキリシマのお花 (中)スタート地点の花酔い橋 (右)威圧的で圧倒される鷲ヶ峰岩峰群

 これから登る仙酔尾根は駐車場から高岳山頂までの標高差約700mをほぼ直線で一気に登る急登だ。恐らく阿蘇唯一の登りらしい登りだろう。こういうの性に合ってるらしく、急登には若い頃から強くて、登りの○○とよく言われた。 暫く登っていて気が付いたのだけど、この道、浮石がほとんどない。そのように見えて、しっかりと安定していて固くこれが溶岩流の特徴なのか。道はそれが固まったところに無理やり通していて、点々と黄色いマーキングが施してある。なるほど、何処を歩いても変わらず、視界が悪い時は位置が判らなくなるのかもしれない。実際、晴れているのに何度か助けられた。振り返ると阿蘇外輪山の向こうに伸びやかに久住山系が浮かび上がって、雄大そのものの眺望。せせこましいお四国が嫌になる眺めだった。

尾根の中間点手前から高岳稜線への乗越点を望む やっと半分来たのかな?

 7時半にこのコース唯一の注意ポイントを通過。そう危険そうには見えないが、それでも埋込ボルトがちゃんと打ってあった。

尾根のちょっとしたギャップという感じの注意ポイント と 埋込ボルト(やや中央下の銀色の輪環)

 鉛色の溶岩道にも草紅葉はあるし、必死に寒さに耐えて日差しを待つ凍て蝶も。雄大な風景を眺めながらで休憩しまくりである。

橙色の草紅葉 と 凍て蝶、しっかり生きていた そしてユニークな形状の溶岩&草紅葉

朝日が差し始めた仙酔峡阿蘇カルデラの眺め 広いわ

 今日はそう急ぐ必要もないという、気楽さもあって稜線に飛び出すのに2時間もかかってしまった。ひとたび稜線に上がってしまえば、もうあとはだらだらの稜線漫歩だ。

(左)高岳への稜線の乗越点 と (右)高岳への道(ハイウェイ)

 うっすらと地表を覆う芒や草類以外は、ごつごつした溶岩のなれの果てばかり。「荒涼たる」がそのままの情景に一本ハイウェイが通っていて高岳にはあっという間に着いた。女性単独行の方が写真に苦労していたので撮影をしてあげ、少し話して別れる。

(左)高岳山頂から高岳東峰      (右)中岳火口と阿蘇の山並み

 ここから先、中岳(1,506m)、火口東展望所(1,369m)と左側に白い噴煙を上げている火口壁を眺めながらの緩い下り道。同じような風景とハイウェイが続くほぼモノトーンの単調さ。

阿蘇のメイン 中岳火口を遠望する いゃ半端ないでかさ
(左)中岳山頂        (右)これから下る仙酔峡への道

中岳火口の白い噴煙  とても穏やかだった

 火口向いの砂千里ヶ浜とおもちゃのミニカーのような車列の眺めに展望所でお別れし、既に廃止になったロープウェイのコンクリ塔が点々と侘しく立っている、舗装道を延々と下った。なんとこの舗装、登山口の仙酔峡駐車場まで続いていてうんざり。

(左)古びた防火サイロと延々と続いた舗装の下り(右)最後の階段、長かったです

 9時半、車に帰り着いて一服していると、高岳で別れた女性単独行者がほどなく仙酔尾根を下ってきた。奈良から来られたらしく、これから祖母山に向かうとのこと。1日2山踏破も可能なところが九州のお山の良さ?なのかなと、やや複雑な気分で阿蘇をあとにした。