皿ヶ嶺 ― 冬春夏秋

 まず、お山の名前が一風変わっていて、面白い。

 お山のあらましと山名の由来は、1973(昭和48)年発行の「愛媛の山と渓谷 中予(愛媛文化双書16・以下、「中予編」という。)」に、著者の愛媛大学山岳会 山内 浩会長(当時)が次のように書かれている。

 「松山から見える山で、一般によく親しまれている。三角点の標高は1,270.5mであるが、この三角点のあるところは最高点ではなく、最高点は三角点の約240mほど南にあって、約10mくらい高いので独立標高点(誤差1m)1,281mとしておきたい。(中略)

 皿ヶ嶺の特徴は、何といっても、地学上隆起準平原といわれる平坦面が頂上付近にあることで、北の松山の平野からでも、南の大川嶺の山地からでもすぐ見分けられ、皿という名はそこからきたものであろう。」(注1) 

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皿ヶ嶺・概念図(縮尺二万分の一)

 されど、このお山、なかなか奥の深いお山である。標高こそ里山の類よりやや高い、ごくありふれたものでありながら、中四国でも有数の花の名山。加えて、水楢、栂や欅の自然林に山毛欅もその代替りが見受けられ、植生の豊かなお山でもある。「中予編」は、その魅力をきちんと分析しているので、再び戻ってみよう。 

 「皿ヶ嶺は松山付近では登山者が最も多い山であるが、山岳宗教の山ではないので、よく人が登るようになったのは最近のことである。以前には泉のほとりに小祠があって竜神を祀っていたが、今はそれもなくなってしまった。 ともあれ、皿ヶ嶺は日帰り登山には手ごろの山である。竜神平でも高度は1,150mもある。小規模ではあるが山毛欅の自然林も残っている。隆起準平原でスポーツも可能。水の便利がよくてキャンプの適地であり、夏は暑さを知らぬ別世界。冬は樹氷で飾られ、スキーもできる。山頂からの展望もすばらしい。女子供でも楽に登れる。……などがこの山が人気のある原因であろう。」(注2) 

 竜神平でスポーツやスキーは、今はちょっと難しいと思うけれど、少し歩く時間帯をずらせば、人は驚くほど減り、この当時の静かな雰囲気を十分に想像することができる。

 一帯は、1967(昭和42)年に、皿ヶ嶺連峰県立自然公園に指定され、皿ヶ嶺はその盟主的なお山である。現在は、標高950m付近の風穴まで車道が通じ(勿論、上林・湧水部落の標高約450mにある鉄塔№156の下から登る道も残っていて、登山者も多い。)松山市内から30分ほどでアクセスできる、利便性の非常に高いお山となっている。

 また、このお山には、諸先輩方の素晴らしいアプローチが諸々なされており、より探求されたい方々はそちらを参照されるとよいだろう。山じいは、撮り貯めた写真を中心にコメントを記して、このお山の魅力の一端をご紹介できれば十分ではないかと思う。

  長過ぎる前置きとなったけれど、「中予編」の冬の情景をお借りして、冬編から入ることにする。

 「皿ヶ嶺はまた、樹氷や雲海が見られる最も手近な山である。初冬のころから、低気圧が通過して冬型の気圧に変わり、北西の季節風が吹いて気温が下がると、低く山を覆うていた雲霧が結氷点以下になっている樹木の枝や草などに凍りつき、風の吹きつける方向に氷の結晶が成長してゆくもので、その原因から霧氷と呼ばれ、結果からは樹氷と呼ばれる。冬、松山から双眼鏡で眺めると、雪とは違うので、すぐ見分けられる。樹氷ができていることを確認してゆけるので、皿ヶ嶺は都合の良い山である。」(注3)

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霧氷輝く皿ヶ嶺の遠望

1 冬(12~2月)

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雪の湧水部落から皿ヶ嶺の霧氷の稜線を望む。

 皿ヶ嶺(ここからは、愛着を込めて「お皿」と呼ぶ。)の冬は、雪の散策が手軽に楽しめ、静謐で落ち着ける場所でもある。積雪量も程々で、竜神平から上林峠を経て八畳敷(天狗の庭)に至る樹林帯の道は、人に出会うこともまれだ。

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竜神平から上林峠に向かう冬路。 限りなく静かだ。

 樅、松等の針葉樹と葉を落とした山毛欅、栂や欅の広葉樹のバランスが良く、霧氷と雪帽子の笹の織りなす光景は美しい。

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稜線を山頂へ向かう。青空が輝く雪に映える。

 また、霧氷に輝く竜神平の山毛欅林も見ごたえがある。

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霧氷の竜神平 愛大山岳会竜神平小屋と右隅に再建された竜神様の祠が見える。
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雪積もる三角点 と まだ残っていたガマズミの赤い実

 最近は、雪遊び目的で風穴まで来る人も増えたが、湧水部落から風穴へ至るアクセス道は、北に面して幅員が狭く、積雪や凍結によるスリップ等の事故(特に、下り)も発生していて、注意を要する。 

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厳冬期の水の元 バンガローが静かに雪の中に佇んでいる。
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雪をかぶった馬頭観音 と 上林峠の法華塔

2 春(3~5月)

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春の竜神平・山毛欅林。 萌え出る時期が一様でないのが面白い。

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シコクカッコソウの群落。お皿を代表するお花の一つといって良いと思う。

 お皿が最も華やかな季節である。水の元から風穴、稜線に至る非常に広い範囲で順次お花が開花し、お花畑が現れるさまは圧巻で、その萌え出る力には圧倒されてしまう。

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イチリンソウ(2)とヤマブキソウ 大群落を作る常連である。
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紅白の山シャクヤクとクマガイソウ
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コイワカガミとエイザンスミレ 赤青そろい踏みのヤマエンゴサク
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カタクリ(植栽)とコフタバラン ノビネチドリの大株(残念ながらこの株は盗掘されてしまった。)
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ツクバネソウ、ラショウモンカズラとシロハンショウズル 色とりどりの種類の多さだ。

 時に、春の雪もあるなど、この季節の散策は風情があって楽しめる。

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春の雪にふるえる、エイザンスミレとヤマエンゴサク

 また、足しげく通うベテラン連からお花の開花情報を伝授頂くのも、この季節の愉しみの一つである。

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緑葉と桃色花のバランスの良いシコクカッコソウ、地味でも存在感のあるアワコバイモとヒトリシズカ。
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林床の群落になるルイヨウボタン。目立たないサイゴクサバノオとシロバナネコノメソウ
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春の常連、シロバナエンレイソウ、フデリンドウ、コミヤマカタバミ(白花)
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可愛いシュレーゲルアオガエルと越冬個体と思われるヒョウモンの仲間?。シロキツネノサカズキモドキ(茸です。)

 願わくば、散策に当たって、萌え出した新芽を踏むことのないよう、心優しいご配慮をお願いしたい。

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透かし彫りのような、輝く新緑。春の醍醐味だ。
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ケクロモジの雌花と輝くイチリンソウ群落、クロフネサイシンのお花

3 夏(6~8月)

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雲湧きあがる

 お花のメインステージが竜神平から稜線周辺までの領域に移る。

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お皿の夏を代表する、繊細なササユリ、豪快なハンカイソウと豪華なコオニユリ

 風穴から北面を横トラバースして竜神平に至るコースが一番ポピュラーで、傾斜も緩く歩き易くて、遊歩道に近い。この季節、家族連れや高齢のご夫婦なども多く、登山者の幅が最も広くなる。

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山なしの実とヤマボウシ(白花、赤花)
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葉に隠れているハガクレツリフネ、ヌマトラノオとオカトラノオ
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濃い緋色のヤマツツジ、薄紫のコバノギボウシ、桃色柔らかいカワラナデシコ
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ツリガネニンジンとイワタバコ。木ではあるが極く小さいコゴメウツギの花

 竜神平は隆起準平原の開放感あふれる空間で、まさに高原の爽快さを満喫でき、素晴らしいの一言に尽きる。

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笹光る竜神平。 緑がまぶしい。
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濃い紫色のタチカモメズル、白地のミズチドリと花火のようなシモツケソウ
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麗人草とタマガワホトトギス、ヤマジノホトトギス

 

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アカショウマ、もう咲いていたアキノキリンソウと白いウバユリ
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ハンカイソウの蜜を吸うカラスアゲハ、透明感のあるミゾソバの花と帽子の塩分を摂りに来たアカタテハ
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綺麗な淡水にすむ唯一の蟹、沢蟹。 雌?のコクワガタとコエゾゼミ
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木に擬態して微動だにしない青大将(目だけはこっちをしっかりと…。)とお皿の主ヒキガエル。

 また、風穴周辺は、インフラの整備に伴って、涼しく快適な環境が好まれ、車でアクセスしてキャンプを楽しむ人も多い。 水の元のソーメン流しの隆盛とともに、この時期は訪れる人が増えて渋滞も発生するなど、その多さにやや辟易気味であるが、嬉しいことに、登山者のマナー向上は著しく、登山道でゴミを拾うことはまれになった。

 ただ、盗掘は止めて欲しいと思う。春編に書いたノビネチドリは木との共生関係でかろうじて生きており、言わば木に守られているような植物。掘った段階で枯れることは約束されている。盗掘した者には子供さんやお孫さんはおいでにならないのだろうか。

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冷気湧く風穴
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風穴のヒマラヤ原産の青いケシ(メコノプシス)と周辺の銀盃草群落、赤花のアップ

 

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緑濃い林間の路、ブナの枯木に生えたハリギリ(今は亡失し、ない。)と霧にけむる竜神

4 秋(9~11月)

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秋空澄む竜神

 お皿は、松山近郊で手軽に錦秋の秋を味わうことができるお山の一つだ。

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二ノ森~石鎚山、西冠の稜線遠望と伐採跡(ムソグルスキーの庭と勝手に呼んでいる。)から望む道後平野

 植林の多い久万側と違って東温市側は広葉樹が多く残り、美しい紅葉を織りなしている。

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秋陽を浴びて燦然と輝く山毛欅の黄葉

 特に、山頂から竜神平に至る山毛欅の自然林一帯は、笹の緑と相まってなかなか見ごたえがある。カエデ類の紅葉が映える、畑野川から山頂へ至る沢沿いの道や人が少なく落葉の散策路になる、赤柴峠から山頂へのアップダウンの多い道も、秋の一日をゆったりと歩めて気持ちのよいルートだ。

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山毛欅の黄葉-1
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山毛欅の黄葉-2
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山毛欅古木の佇まい と 幹に生えた苔とのコラボ
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お皿の秋を代表するシコクブシの青い花。リンドウにダイモンジソウも。

 竜神平の芒の穂が真っ白になる頃、めっきりと登山者は減り、気温も下がって山毛欅の黄葉が散り終えると、冬に向かって足早に季節が移ってゆく。

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白い芒の穂に浮かぶ山毛欅
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秋の点描

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霧にけむる

 

 (注1) 皿ヶ嶺の標高については、2017(平成29)年発行の2.5万分の1地形図「石墨山」では、三角点は       1,270.7m、山頂1,278mに修正されている。

(注2) 竜神様については、その後、愛媛県山岳連盟の有志の方々のご尽力により、愛媛大学山岳会竜神平小屋の北向いに祠が再建されている。

(注3) 愛媛の山と渓谷 中予編については、1985(昭和60)年に改訂版が発行されているが、皿ヶ嶺に関しては、初版の文章と同様なので、このブログでは初版を用いた。内容に一部不適切な表現もあるが、原文を尊重してそのまま掲載している。 愛媛文化双書刊行会による本書の刊行により、愛媛の自然が広く紹介されるとともに、その理解を深める一助となっていることは、一岳人として誠に有難く、厚く感謝申し上げる。

二ツ岳 ― ほぼ一年ぶりの峨蔵越は霧氷の世界

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鯛の頭への中途、赤星山の裾野に広がる雲海と霧氷

 超マイナーコースの峨蔵越~赤星山を昨年5月に歩いて以来、ほぼ一年ぶりに旧土居町浦山・県道131号線を走る。変わっていたのは、中の川登山道を横切る、開削工事中だった道路が完工していたことくらい。この山域は登山者が少なく、前回は赤星山で一人の登山者に会っただけ。二ツ岳(標高1,647.3m)を目指す今回も、人に会う確率は限りなくゼロに近いでしょう。新コロナ蔓延のこのご時世、有難いことだと心の中で感謝する。

  去年使った中の川登山口(約460m/通称「下の登山口」)を通り過ぎ、途中から雲海の中に入って薄いガスの中、落石ポロポロの舗装路を進んで、上の登山口(約850m)手前の駐車スペース(5,6台はOK)に車を止めた。

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駐車場 トラロープでラインを引いている。

 今日は、高気圧張出しの縁辺りになるので、雨も覚悟して、スパッツに雨具(下)をはいて、8時過ぎに出発。 

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県道工事で移転したらしい、中の川・上の登山口

 登山口からのいきなりの急登を凌ぐと、敬天(鉱山)の滝の滝見台だ。見事な眺めと言いたいところだけれど、ガスでなんにも見えない。で休憩もせず、あっさり通過。すぐ、よく手入れされた植林帯に入る。あまり人が歩いていないのだろう、ところどころ崩れかかって注意を要するか所や倒木もあるが、総じて歩き易い道だ。それに、人工林と天然林の間をぬうルートは、枯葉を踏みしめて、なかなか心地よい。

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茫漠とした、霧の中を歩む。

 1時間ほどで造林小屋跡のある小沢まで来た。倒木が倒れ込んでいて、渡渉は本来の道を通らずにやり過ごす。ジグザグの七曲りが始まると、もう峨蔵越(1,266m)は近い。

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小箱越へのトラバース道入口?。通れないようだ。

 この頃からガスが切れ始め、というか、雲海の上に出たようだ。周囲が見渡せるようになり、鯛の頭から派生する尾根は霧氷が付いて真っ白だった。相棒も思いがけない贈り物に歓声をあげている。右に向かって緩い登りのトラバースをする辺りは霧氷のシャワーだった。

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突如…といった感じで現れた霧氷の世界。
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霧氷のかけらで真っ白な登山道。滑る!峨蔵越はもうそこだ。

 9:30峨蔵越に着く。赤星山方面は、霧氷で真っ白。でも反対側の鯛の頭、二ツ岳方面はなにもなし。峠を越えてゆく風の具合で、こうも違うものかと呆れてしまう。 

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白銀の霧氷散る赤星方面への道と霧氷越しに赤星山を望む。

 テント一張分の敷地が切ってある辺りで休憩を取り、いよいよ石鎚山系と比べれば、まあ悪路なのかなと思う、鯛の頭への登りに入る。途中のシャクナゲやヒカゲツツジに花芽が結構ついているなぁと思いつつ、灌木群に両腕を遮られながら登る。

 羽根鶴山から赤星山に至る稜線は頂稜部に霧氷。勘場平に下る峠に雲海が広がり、赤星山が大きくどっしりと構えている。

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赤星山へのルート上の霧氷 と 遠く雲海に浮かぶ赤星山

 遠く、東光森山から大座礼山、三ツ森山に至る稜線も一面、霧氷で白くお化粧だ。

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東光森山から大座礼山、三ツ森山へ延びる稜線

 大雲海に霧氷の眺めは、全然、期待していなかっただけに、幸運に感謝である。こういうこともあるからお山はやめられない。 

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霧氷の点描

 アルミ製梯子の連なる急登を越え、鯛の頭の基部を巻いて、10:30鯛の頭と彫られた古い木製道標のある、広場?で行動食休憩。雨を心配したけれど、薄日も差す良い天気だ。今日は運がいいぞと思う。

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鯛の頭 見るからに怪異。ネーミングの妙に脱帽である。
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途中のアルミ梯子 と 春秋を重ねた、懐かしい道標

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鯛の頭を振り返る。 野に一塊の…である。

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赤星山をバックに鯛の頭。 絵になるわぁ~。

 ここからは、標高差300mの、急登と言えばそうかもしれない尾根を慎重に登る。 山頂手前のニセピークは北東面が日陰なので、ここに雪が張り付いていないか気になっていたが、現場につくと杞憂だった。氷化した雪がわずかに残っているだけ。山頂直下も同様で、大して苦労もせずに11:15山頂に着いた。温暖化にこの標高、時候も3月の上旬。南国お四国では、もはや春山は死語に近いなぁとつくづく思う。 

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二ツ岳山頂 まだ雪が残っていた、ラッキー。

 ちょっぴり雪の残る、立派な三等三角点と頂上道標を通り過ぎ、見晴らしの良い岩場で風を避けて昼食。高曇の中、正面にエビラ、東赤石が左、黒岳も右に覗き、ちち山~冠、平家平さらに鎚や筒上、岩黒まで見通せる、絶品の展望だ。

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岩場から大きくエビラ、東赤石、黒岳と遠く平家平~冠山、ちち山を望む。

 このお山は、独特な形状の双耳峰なので、石鎚山系のどのお山からも確認しやすい。逆に言えば、眺めるだけになってしまう懸念も大いに…ということになるが、今日はしっかりその頂に立つことができた。なんせ、前回は秋晴れの紅葉真っ盛りに権現越から縦走して別子側に降りた単独行、もう10年を超える。久しきかなと年甲斐もなく、ちょっと感慨に浸ってしまった。

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双耳峰の相棒、イワカガミ岳

 食事とコーヒーブレイクの時間をゆったり取れ、居心地も良くて1時間も長居してしまった。狭い割に落ち着ける山頂というものは、幾多あるようで実はなかなか無い。近場では、冠山山頂下の岩場がその一つと思うけれど、人によって感じ方は異なるだろう。

 このお山は、下りも登りと同じ時間がかかる。ステップの置き場を慎重に選びながら、下りに下って鯛の頭まで戻る。ザックをデポし、空荷で相棒と頭のピークにピストン。灌木のブッシュをこぎ、ロープの張られた、10m程の岩場を攀じる。北面はまだ霧氷が残って白いままだ。風が強かったけれど、見晴らしは素晴らしく、眼下の斑雪も趣があって美しい。 

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鯛の頭から二ツ岳方面 と 側面のはだら雪
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鯛の頭を攀じる。途中にあった霧氷の芸術品

 13:30峠風が吹き抜ける峨蔵越に戻る。もう霧氷は綺麗に落ち切っていた。 と足元に淡い黄色の花びらが…。見回すと金縷梅(マンサク)が春を告げるかのように咲いていた。細々とした花付きでもやはりこの花は風情がある。この厳しい峠の環境でよくぞ咲いたねと褒めてやりたいような気分だった。

   まんさくやためらひがちに咲きにけり (南上 北人) 

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道中、唯一のお花に心も和む。

 ほぼ人工林の中を下る。針葉樹林でも整備が行き届いていると、モノトーンの持つ美しさというものが感じられる道だ。

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帰り路。静かな一本道だ。

 14:40朝はガスで隠されていた敬天(鉱山)の滝展望台まで帰り着いた。滝は、二ツ岳とイワカガミ岳から発する、浅い谷にある割には水量豊富で風格もあり、やはり名瀑の一つと言えるだろう。

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敬天(鉱山)ノ滝遠望

 今日は大雲海と想定外の霧氷の芸術に感動し、春告げ花にも巡り合えた。最後に滝の展望まで許されるとは、まさに望外の喜びで、山の神にもっと赤石山系に来なさいよと言われているような、お山となった。いたく感謝の次第である。

裏参道から二ノ森へ  お久しぶりのお泊り・焚き火もするべ。

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モルゲンロートに染まり、ピンク色に輝く霧氷の杜

 如月。この時候になると、どうしても裏参道が気になってくる。そしてここを歩くなら、登るべきは二ノ森(1,929.6m)だ。西面の保井野や梅ヶ市からのアプローチだと、雪が少なければ夏時間に近いコースタイムで冬も楽々日帰りできるけれど、ルートに趣きが乏しい。

 やはり歩きたいのは冬の裏参道。華やかさを捨て切った、その冬枯れの情景。この道は、春~秋も石鎚へ通ずるルートの中では出色の、味わいのある道だけれど、冬は鄙びて、わび、さびにも通ずるその雰囲気が素晴らしい。 霧ヶ迫の水場(以下、「水場」という。)辺りに拡がる広葉樹の大木群の明るさ、面河尾根巻道沿いに居並ぶ山毛欅群の存在感も捨てがたく、やっぱり裏参道を登ることに。 日帰りはもったいないので、愛媛大学山岳会石鎚小屋(以下、「小屋」という。)に一夜を借り、久しくご無沙汰の焚き火もと、盛りだくさんの贅沢さ?だ。 

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概念図 と 渓泉亭面河茶屋。バックは亀腹岩

 新コロナも考慮してウイークデイを選び、午前10時に面河渓泉亭前の登山ポストに届を出した。今年(2021年)も去年程ではないものの、やはり雪は少ない。以前、雪で小屋から二ノ森まで4時間を費やしたような酷いことにはならないだろう。

 石鎚神社の鳥居前で一礼して、いよいよ入山。すぐに巨木の森が始まる。面河山(1,525m)への巻道に入る、標高1,350m付近までは急登といわれているが、その差は600mほどだ。幾多の信者さん方が組み上げた、石畳の階段を感謝の念を新たに、一歩一歩歩む。 水場までに二ヶ所、小さな乗越っぽいところがあって、いずれも岩場とモミか栂類の巨木が圧倒的な存在感で迫ってくる。なかなか印象深いところだ。 

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二番目の乗越 と 根元が一本になった左:モミか栂,右:檜の大木そろい踏み。斜めの木はヒメシャラ。

 11:30。ひと汗かいたところで水場に着き、小休止。顔を洗う。水が冷たいと思いきや、ぬるい。標高1,230mで気温が6℃もあるようでは止むを得ないかも…。

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霧ヶ迫の水場 と 大人がすっぽり中に入れる針葉樹の巨大枯れ株

 それでも、冬日がクヌギ、水楢、栃、山毛欅などの樹間から差し込んできて明るく、しんとした静けさも落ち着ける。寛いでいると、水楢や栃が「誰か登ってきたよ。」、「今日は来ないと思ったのにね。」とおしゃべりしていそうな間合いで、こういう気分を味わいたくて、お山に登っているようなところもある。 

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独特の枝ぶりをした栃の大木 と 倒壊してしまった山毛欅の大木。
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道すがら、岩黒山から筒上山のスカイライン と ドングリの木三兄弟。

 面河山を左に見ながら巻き終わると、岩交じりのちょっとした下りになる。冬道との分岐で、雪は斑雪だ。

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冬枯れの小道からいつとはなしに雪道に変わってゆく。

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冬道の分岐から振り返る。

 昼食を取りながら、今回は判断に迷わなかった。この状態では、日当たりの良い冬道は雪が出てくるのは標高1,700mを越えてからだろう。アルバイト量と稜線の展望を天秤にかけて、夏道(巻道)を行くことにする。日陰なので雪が多いときは厳しいコースだけれど、今日は大したことはないだろう。 

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やっと鎚が見えるところまで来た。日陰はまあまあ雪も。

 予想どおりアイゼンを使うまでもなく、13:25、ガルバリウム鋼板張りの白銀の小屋に着いた。夏道と変わらぬ道で小屋まで3時間を超えるようでは、もう齢やなと自嘲しつつ、サブザックに防寒具やヘッドランプ、行動食等を詰め込んで二ノ森へ向う。 ここから面河尾根ノ頭(三ノ森・1,866m。以下、「頭」という。)まで直線で500m、標高差266mの一気の直登だ。さすがに息が切れる。

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頭への登りから見る岩黒・筒上(左)、二ノ森(中央)、西冠(右端)。もうガスで…。

 1時間で笹原にポツンと立つ、小屋への分岐の道標にたどり着いた。バックは石鎚山・南面がドンと鎮座。ガスで頂上稜線はもう見えないけれど、何回来ても、迫力の存在感に圧倒される。

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正面に頭が見えてきた。 登ってきた笹原をかえりみる。

 6月にはササユリの咲く笹原も雪に埋もれていて、慎重にステップを刻んで15時前、頭に着いた。雪は踝上くらいだけれど、もうガスがかかって展望はないし、稜線に出たので強い北風がもろだ。 

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面河尾根ノ頭(三ノ森)三角点。奥に進めば二ノ森だ。

 山頂までの稜線は、誰も歩いていなかった。ちゃっちいけれど雪庇もあり、強い吹き上げ風の中、時に膝まで潜る道のりだった。距離5~600m、標高差60mくらいだけど、小ピークの連続に霧氷の灌木類がかぶさって甚だ進みにくい。 

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可愛い雪庇もどき と 北風に追い立てられながら、霧氷の森を行く。

 東面が切れ落ちた、最後の急登を凌ぎ切って15:30山頂に着く。ガスが走ってもう周囲は何も見えなかった。寒いし、まぁこの時間だからなとさっぱり諦め、行動食だけ摂って、すぐ下山。

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ガスで視界のない二ノ森山頂 と 鞍瀬ノ頭へ続く道。昨日、誰か歩いている。

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山頂横のクリスマスツリー。ちょっと時期遅れかな?

 ステップがあるので、帰りはさすがに速く、小1時間で小屋に帰り着いた。今日は人っ子一人会わない、静かな一日だった。今夜のお宿もどうやら独占のよう。内心ほくそ笑みながら、アイゼンと靴についた雪をはたき落とした。 

 2006年に建ったこの小屋も、今年で15年目。だいぶん風格も出てきた。土小屋から面河乗越を越えて、建築資材をボッカした昔日が懐かしい。石鎚山系は剣山系と違って営業小屋が先行したため、避難小屋が少ない。加えて、だるまストーブを置くには、周囲に樹林帯がないと難しく、県内ではここくらい(注:シラザ避難小屋は高知県だろう。おかげでゆったりと焚き火が楽しめるわけで、日暮れ間近かの小屋周辺をうろつき廻って、薪拾いに精を出した。

 夜半、ストーブに薪を足して外に出てみると、塵のような雪が降っていた。意外だった。ヘッドランプの灯りの先を風に乗って雪が舞う。ライトを消し、しばらく漆黒の闇の中に佇んで、サラサラとかすかに耳に入る、その音を聞いていた。

 

 翌朝、新雪は昨日の跡をすっかり消してくれた。岩黒山の右肩から朝日が覗き、モルゲンロートに霧氷群がピンクに染まる。カメラを持ってうろつき廻ったあと、霧氷を撮りに面河乗越辺りまで行ってみることに決める。

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岩黒の肩から昇る朝日 と 愛媛大学山岳会石鎚小屋。うっすらとピンク色が…。

 出発が9:00になったけれど、小屋からシコクシラベの水場、そして西ノ冠岳への分岐辺りまで2時間を想定し、11時をタイムリミットにバージンスノーに足を踏み入れた。 

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霧氷劇場 その①
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霧氷劇場 その② ほんの10分程のモルゲンロートに映えて、美しい。

 6か所ほどある谷筋は日が当たらず、積雪量も多い。クラストしていたり、潜ったりと状況が頻繁に変わる。

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紺碧の空をバックに、霧氷が映える。
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やや霧氷が薄いものの、美しい白と青の世界だ。

 踏みごたえのないパウダースノーに振り回されつつ、1時間ほどで谷筋を抜けた。大きく崩落した木製の足場のある沢を越えた先で大休止。鎚南面の霧氷群が紺碧の空に映えて、美しい。数時間の命しかない、この景色だけで歩いてきた甲斐があったというものだ。 

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霧氷に輝く鎚南面。わずか数時間の儚い景色だ。
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西ノ冠岳と途中の最も大きい沢。純白と青がまぶしい。
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シコクシラベの水場に向かう笹原と霧氷。まるで、おとぎの国のようだ。

 10:40、シコクシラベの水場で小休止。雪に覆われていても、底を流れる水音が聞こえる。シコクシラベは霧氷が付いて真っ白だ。

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昨日、歩いた稜線と二ノ森、右は鞍瀬ノ頭。
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弥山西面の岩峰を走るガス と 霧氷に輝くシコクシラベの樹林。

 分岐に着いたのは11:15。指呼の間の面河乗越には一張だけ張れる天場があるが、数日前に誰か張ったようだった。三ノ鎖の巻道はもう目の前だったけれど、例のガレ場は氷結し、その上にはパウダースノー。ほんの10mくらいでも氷のカッテイングが要りそうで、加えて足場も悪くザイルが欲しいところ。タイムオーバーに、過去、滑落の遭難者も出ているだけに、残念だけれど、ここで引き返すことにする。

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西ノ冠岳への分岐 と 面河乗越の天場、右は天場から瓶ヶ森~伊予富士の稜線

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二ノ森と鞍瀬ノ頭、右隅に霞む堂ヶ森も。遥かなるかな。

 もう緩んでしまった雪がアイゼンに団子を作り、それをピッケルで落としつつ、12:50小屋に戻る。サブザックをパッキングしていると、十数人の一団が登って来た。聞くと地元消防本部の一行で訓練らしい。いやぁ若い人は元気だわ、一気に周囲がにぎやかになった。目的地は小屋で、「ここで昼食を取ってすぐ下山します。」とのこと。アルミ鍋が二つも出てきたので、豚汁でも作るのかと思ったら、昼食はカップラーメンというところがちょっと面白かった。小屋の仕舞を依頼して、一足先に13:10下山開始。 

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流れゆく雲を眺めながら、のんびりと小屋へ下った。

 冬道との合流点でアイゼンやスパッツを外し、暑いのでポリゴンⅡも脱いでザックにしまいこんだ。もう夏道だし、汗をかかない程度のピッチに落とす。

 水場まで下り、冬の柔らかい日差しが差し込んでくる中、葉を落とした大木群と蕭条とした冬景色に浸っていると、連中が追い付いてきた。結局、一緒に下ることに。

 二日間、誰にも会わないはずだったけれど、こういう日もあるわと思いつつ、登山口の鳥居前で無事下山のお礼を伝えて、焚き火メインのお山が終わった。

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霧氷をまとって、荘厳な石鎚。


   

 

雪の相名峠  冬日和の一日、六花踏む響きを楽しむ

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銀木立 ―堂ヶ森を行く― (2014.3.8)

 古来、「雪は豊年の瑞」と言うけれど、大寒波だった成人の日の三連休も過ぎた。雪も人ももう落ち着いたであろう14日(木)、相名峠(あいなのとうげ/1,156m)を歩いてみることに。程よい積り具合の冬木立の散策が狙いだけれど、新コロナのこのご時世、要らぬ接触を減らせるようなコース取りには、ほんま苦労する。この峠は、無雪期は何度か通過したけれど、雪の季節はない。コースは、青滝山を諦めて峠経由で堂ヶ森へ、帰路は稜線沿いに空池をよぎって下る、お手頃な周回ルートにした。 

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 うっすら雪化粧の保井野駐車場は、ウイークデイで誰もいないだろうと思っていたら、先客が2台もあって、ちょっと当てが外れる。

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淡い雪をかぶった保井野登山口・駐車場

 諸準備を整えて、7:45出発。標高750mの青滝山分岐まで、旧放牧場に沿って坂を登る。20分程で分岐に着いた。雪は、靴がほんの少し沈む程度だ。曇天だけれど、この雪の量なら、今日は山頂まで結構、楽しい歩きになるぞと少しだけ心が躍る。 

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相名峠経由で青滝山に至る入口。稜線ルートへは左端を進む。

 進路を右に切って、峠への道に入る。予想どおり、兎さんを除いて誰の足跡もない、バージンスノーだ。すぐ、小さな沢の源頭を渡る。南国お四国の標高千m未満では、いかな日陰でも凍らんよねぇと言いつつ、対岸へ飛び石を伝う。

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最初に渡った、小さな沢。水量はちょろちょろだ。

 尾根に取り付いた最初の登りは、道が極端に細くて、足元も緩い。敷設ロープに頼らず、慎重に歩を進めて凌ぐ。湿雪が、カットされたバームクーヘン状になって転げ落ちた跡が幾筋も出ている。結構、急傾斜なのだ。 

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いたる所に、湿雪の走った跡が…。

 道は、最初、落葉した梢の間を斜めにぬう、明るい登り。兎さんと鹿?さんの足跡を忠実に追ってゆく。彼らも山道の方が歩き易いのだろう。そのうちに周囲は檜植林帯に変化。この辺りは、植林巡視道をそのまま活用させて頂いているみたいだ。30分スパンくらいでジグザグに道を切った、ずっと登りの道。でも、傾斜は大きくなく、雪も足首くらいまでで、さして苦労もせずに高度を上げてゆく。直登を上手く避けた、巧妙なルート取りだ。 

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峠への道すがらの雪と冬木立。遠く三ヶ森が霞む。

 標高900mを超えてくると、峠への最後の登り。トラバース道を至る所にバームクーヘンが転がり、膝下くらいまで潜るようになってきた。直下の直登は倒木をくぐりながら抜け、9:50峠の鞍部に出た。

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相名峠。中央奥の大木の左を乗っ越してきた。

 誰もいない。雑木に結いつけられた道標も少し寂しそうだ。風もなく静寂が支配する中、汗をぬぐい、行動食を融通しあって、しばし憩う。

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峠から梅ヶ市・堂ヶ森方面を望む。ここも踏み跡はない。

 この峠には、悲しいお話(旧面河村誌に詳しい。)が伝わっているけれど、今は雪もあってその痕跡は探しようもなかった。   狼に逢わで越えけり冬の山  子規

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青滝山への道(左)と梅ヶ市・堂ヶ森への道(右)。雪は少ない。

 稜線の道は二重山稜がしばらく続く。笹と雪の道を梅ヶ市ルートとの合流点目指して進む。緩い登りのアップダウンが数回続き、最後は笹と広葉樹の疎林の中を、やや右に巻き気味に急登を一気に登ると、あっさり合流してしまった。肩透かしを食ったような気分だ。2.5万地形図を読むと、標高1,330m辺りで、カラフルなテーピングはあっても「至青滝山」といった道標はなかった。幸い?なことにトレースはなく、ここから保井野分岐までは、あと150mの登りが残るだけだ。 

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合流点から来た道を振り返る。右はこれから登る堂ヶ森へのルート

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保井野分岐への中途から青滝山を振り返る。

 11:10 保井野との分岐。ここで先行者の足跡を初めて辿る。稜線に出ると、予報どおり青空が覗き始め、見晴もよくなったけれど、ガスは走り、空を覆う雲も依然、ぶ厚いままだ。

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保井野分岐手前から堂ヶ森 と 歩いてきた道。青空が出てきた。

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ガス走る堂ヶ森山頂。反射板が隠れて、かえってお山らしい。

 日当たりの良い堂ヶ森南面は、雪はほとんど溶けて笹が露出していて、少々ならぬがっかりだった。気を取り直して登り始めてすぐ、フル装備の単独行の青年と会い、ちょっと話す。相名峠から来たと伝えると、このルートを知らなかったので、下山にどう?と勧めてみる。「来た道(稜線コース)を帰るのも味気ないので、そちらへ廻ってみます。」との返事。元気よく別れたけれど、雑談に思わぬ時間を使ってしまった。

 山頂(1,689.4m)に着いたのは12:30。休み過ぎやら雑談やらで夏時間の倍の時間を使い、スローペースのお山もやっと終点。 

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堂ヶ森山頂。また分厚い雲に覆われてしまった。

 吹き曝しの風を避けて、冬道を愛大堂ヶ森避難小屋(1,570m)まで一気に下る。雪の量から雪崩れる懸念はないので途中で面倒になり、縦走路を横切って、そのまま小屋の裏手に直接降りた。15分程だ。お四国では、冬でも雪は笹の上に乗っているだけなので、踏むとすぐに割れて沈んでしまう。下りながら砕氷船になったような変な気分だった。 

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雪の愛大堂ヶ森避難小屋。左裏手の屋根の雪が融け落ちた。

 足跡はあっても小屋は無人。物置横の縁台の雪を払い、昼食。時間はたっぷりあるので、ゆったりと食事をし、甘酒にコーヒーブレイク、おやつと、一体何しに登ってきたのやらという、お山に変わってしまった。正面の鞍瀬ノ頭にかかるガスが切れてくれるのを辛抱強く1時間待ってみたけれど、今日は駄目だった。 どさり! 雪が小屋の屋根からずり落ちた、お腹に応える音を契機に、帰り支度を始める。 

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山頂分岐への登り。雪雲が低く垂れこめている。

 旧山内小屋跡横におわす石鎚詣の石彫り権現様も先っぽが覗くだけ。正面の鎚も望めず、お気の毒なので雪を掘り起こしておく。

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兎さんが横を歩いた権現様と掘り起こした後。もう数えきれないほどお会いした。

 山頂分岐を越えたら一気に冬晴れ。面河ダムは湖面が氷っているように見え、はるか石墨山から東温アルプスのスカイラインも美しく、思わぬ冬の日だまり山行になった。

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面河ダム湖 と 石墨山から東温アルプスの山並みを望む。いいところで晴れてくれた。

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厳しい冬をじっと耐える山毛欅の大木。

 相棒には悪いけれど、こういう、すっと気を抜けるような冬山も、歩き方の一つにあってもいいなと思いつつ、空池めがけて稜線の急坂を下った。

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傾きつつある日差しの中を空池へと下る。

 

 

2020年(令和2年)の記録   郷愁の上越国境の山々と草紅葉映える尾瀬を行く - ⑤ 巻機山

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草紅葉真っ盛りの巻機山 本峰稜線

10月2日(金) 天気:快晴

 ガスと小糠雨に祟られた荒沢岳を下り、関越道経由でその日のうちに六日町清水のお宿へ入った。学生時代にお世話になった民宿は建て替わり、ご当主も2代目と四十数年の歳月が情景をすっかり変えてしまっていた。

 もう行くことは叶うまいと思っていた場所に立つことができただけで十分なのに、なんと今日は昨日と打って変わって、凄い快晴だ。上越国境山行のラストを飾るには、これ以上の条件は望めないだろう。

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 6:30既に20台はいる駐車場を出発。登山口に立つ案内板をしげしげと見入る。なんせ、大昔にはこの類の案内、ほとんど記憶にないし。主要三峰巻機山、牛ヶ岳、割引岳)がそろってこそのお巻機という感覚のじじいには、その字の大きさに差があるのが気になるが、設置者が行政と警察に加え、救助隊というところが斬新かな。

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お巻機の案内板。なんで牛ヶ岳と割引岳の字が小さいんだろう?

 桜坂に入り石畳みを進む。こんな入りだったっけと思っていたら、すぐ赤土の露出した道に変わった。最近の百名山に著しい、オーバーユースの気はあるが、周囲は、広葉樹林帯の静かでしっとりとした環境だ。途中、柔らかそうなマスタケに遭遇。う~美味しそうや。

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井戸尾根の入口と石ゴロゴロの道がすぐに赤土に変化。

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ちょっと小さいけど、食べごろのマスタケ。これはマリネがいいかな?

 7:20三合目焼松。山毛欅帯のちょっとした空き地だけれど、標高差900m、急登の続く井戸尾根の中間点。丁度良い休憩場所で汗をぬぐう。北東が開けていて米子沢がくっきりと望める。変化に富んだ楽しい沢で、源流が山頂直下の美しい草原帯。直前のナメをお遊びでヘツッていて滑り、ずぶぬれになった苦い記憶も今は楽しい思い出だ。

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遠く、米子沢の清流を望む

 この辺りは樹齢の若い山毛欅のほぼ純林帯で、風が通って明るく、きつめの登りを癒してくれて気持ちが良い。

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爽やかな山毛欅の純林帯 と 傘の赤、放射状の溝線が鮮やかな、これぞタマゴタケ(幼菌)

 少しずつ展望も出てきて、このお山の魅力の一つ、天狗岩もガス走る中に浮かび上がってきた。お巻機は幕営禁止になっていたが、道端には一張分ぴったりの良い天場?も。水さえあれば最高やなと思いつつ、通過した。 

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天狗岩の岩峰 と ぴったり一張分の整地された天場。

 1時間で七合目物見平に着く。ざれた岩だらけの特徴のある場所で、展望が良い。周囲はもう灌木帯に変わり、正面に前巻機(偽巻機/1,861m)が大きくデンと構え、山頂をすっかり隠している。柔らかい風が汗ばんだ体に爽快で、懐かしさも手伝って、行動食休憩をたっぷりと取った。

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七合目物見平からの前巻機(偽巻機)、どっしりしたいいお山だ。
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朽ち、欠けた七合目道標 と ザレた岩交じりの道。ここは変わらん。

 八合目からは植生保護の木製階段が設けられていた。冬はともかく、百名山ともなるとお山の環境保全にはやはり必要な処置なのだろう。

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八合目の道標と整然と整備された木製の階段

 9:20偽巻機に着いて本峰がお出迎え。快晴に真っ盛りの草紅葉で、「いやぁ凄い。」と思わず口走ってしまった。ここから先はカメラの出番。平ヶ岳や荒沢は天候に恵まれなかったけれど、今日一日ですべて帳消しやと、心も浮き立つ。

 快晴の中、今がピークの草紅葉のお巻機本峰を、正面に眺めつつ歩める、この贅沢。

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偽巻機から、紺碧の青空に浮かぶお巻機本峰稜線。右の谷が米子沢の源頭。
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左手奥に割引岳ピーク と お巻機本峰から栂ノ段山(中央)谷川連峰への稜線を望む。

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偽巻機ピーク。岩だらけのゴツゴツ感は昔と変らない。

 緩い下り20分程で、現役の頃にはなかった避難小屋に初見参だ。ここにあることの意義は大きい。さすが豪雪地帯の小屋でがっしりしたつくり。シーズン中には登山者が入り切れない時もあるとお宿で聞いていたが、中は綺麗に整頓・清掃され、かなり広かった。トイレが真っ暗だったのは、雪も考えてのことだろうし、まぁご愛敬かな。

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避難小屋へ。ここしかないという、絶妙の位置取りだ。
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巻機山避難小屋。堅牢なつくりで、水場も近い。右は小屋裏のトイレ棟。

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偽巻機から避難小屋へと続く、緩い下りの木道を望む。
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織姫ノ池への登りとミネカエデの黄葉に映える稜線

 小屋から一登りすると、織姫ノ池という、優雅な名前の付けられた池塘が現れる。

 この池塘も、多分、松本 清 氏(マツキヨさんが愛称らしい。)がボランテイアで復活に取り組まれたひとつなのだろう。必要なのは、その場その場で何かを実際にすることだ。快晴無風の中、当たり前のように本峰を静かに水面に映し出している、池塘の畔に佇みながら、課題を一つ一つ具体的に処置していった、その覚悟とご努力に頭が下がる思いだった。

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織姫ノ池という、麗しい名前の池塘。大小合わせて三つまで確認。

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松本 清 氏の活動を報じる2007.8.29付けの朝日新聞記事。
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池塘に映る紅葉 と 織姫ノ池を見下ろす。

 随分と道草をして御機屋に着いたのが10:10。殺風景なザレた原っぱという感じだが、まだ残っていたミヤマダイモンンジソウがお出迎えしてくれ、少し和む。山頂の標識があるので、いぶかっていると、お隣の登山者が「昨今の登山者増への対応で、手っ取り早く山頂をここに移したらしい。」と教えてくれた。う~ん、こういうの、一般的には「ご都合主義」と言わないのかなとちょっとだけ悩んだ。ごった返すとまではいかないけれど、まあまあ人は多いので、さっさと牛ヶ岳へのトラバースに移る。 

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御機屋。割引岳と本峰、牛ヶ岳への分岐点。右端が移設された山頂標識。

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まだ頑張って咲いていた、ミヤマダイモンジソウ。可憐で少しホッとする。

 今度は、ゆったりとした開放感あふれる、頂上稜線漫歩だ。お巻機の最大の魅力スポットで、これはいい。視点も草紅葉を眺め下ろすように変わって、やはり美しい。

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稜線の池塘から草紅葉越しに朝日岳谷川連峰を望む。
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頂上稜線から来た道を振り返る。途中の池塘と織姫ノ池を下に見る絶景。

 15分弱で小さなケルンが現れた。どうやらここが本来の山頂(1,967m)だと思うけれど、それを示すものは何もなかった。なんとなく落ち着かない気分のまま、ちらほら現れる池塘の間をなだらかに木道が貫く。

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本来の山頂を示すケルン と 牛ヶ岳に続く一本道

 草紅葉と笹と木道。前半に歩いた尾瀬と同じ構成で、開放感一杯なのは同じだけれど、全く印象が違う。やはり背景にある、展望の雄大さが大きくものを言っているのだろう。はるか東南の方向には、朝日岳谷川連峰、北東には奥利根湖(矢木沢ダム)から至仏山・燧ヶ岳、北は牛ヶ岳から下津川岳へ至る国境稜線と、遮るもののないスカイラインだ。 

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これから向かう牛ヶ岳を池塘越しに望む。たおやかな山容だ。
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木道沿いに咲いていた、ハクサンフウロとミヤマアキノキリンソウ

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牛ヶ岳へ 爽快感満喫の、快適な木道を行く。

 ぐるっと左回りに回り込んで、少しだけ登ると牛ヶ岳(1,961.5m)だった。妙に親近感を感じる道のりだった。三角点を200m程通り過ぎて、裏巻機道に下り始める先っぽまで行く。黄葉のミネカエデを前景に正面に割引岳、右に裏巻機道の稜線が続き、適当にガスも走って、なかなかの絶景だ。

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ミネカエデの黄葉を前景に、ガス走る割引岳と右に神字山。谷が深いわ~。

 時間も丁度、11:00。笹に囲まれた草と石だけの狭い広場だけど、ここで昼食。民宿お手製のおにぎりはでっかくてしまり、食べ応え十分。恒例のお昼寝もしたかったけれど、少ないとはいえ登山者が三々五々来るので、渋々諦めてコーヒーブレイクで我慢する。

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割引岳、裏巻機道の稜線 と お昼を摂った牛ヶ岳先の草地。右に遭難碑がある。

 ヘリが六日町から稜線を乗っ越して奥利根湖方面へ下降してゆき、静けさが戻った。

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裏巻機道の長丁場を知らせる告知板 と 本峰上空を飛ぶヘリ

 気持ちの良い稜線を朝日岳谷川連峰への縦走路分岐点まで戻る。上越線土合駅で23:50上野駅発の各停を降り、白毛門経由で巻機に抜けた昔日が懐かしい。晴れるとこんな快適な道があるのかと思うほど気分の良いルートだった。

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本峰への帰途、ゆったりとした優しい稜線 と 遠く谷川連峰

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牛ヶ岳三角点からガス走る、下津川岳、魚沼三山方面への縦走路

 分岐で一緒になった地元の方に北方の山並みを教えて頂く。赤城・榛名、日光白根から始まって至仏山・燧ヶ岳まで連なって、素晴らしい眺めだった。丁寧にお礼を伝え、12:20御機屋まで戻った。真新しい役行者を祀った石祠?にお参りをする。ここもホームの石鎚山同様、修験の道場なのだ。休憩は取らず、そのまま割引岳への道に入る。

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遠く尾瀬の山塊を望む。山名を入れてみましたが、あまり…。
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谷川連峰への縦走路分岐、丁度良い休憩場所だ。石鎚山も開いた、役行者の石祠?

 最初、一気に下ると後はなだらかな稜線歩きだ。雪圧で傾いた木道が続く中、イワイチョウの黄葉やイワショウブの赤い実が風に揺れ、愛らしい。

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まだ残っていたオヤマリンドウ、イワイチョウの黄葉と風に揺れるイワショウブの赤い実

 ずっと正面に割引岳が座る道を行く。この山、不思議に何回も来ているような気がして、どうしてだろう…と思案投首で歩むうち、はたと思い当たった。天狗塚(1,812m/徳島県三好市)だ。標高こそ100mほど低いものの、お山の形も山頂へのアプローチもそっくりだ。おまけに北西には牛ノ峯(1,757.2m)という、牛ヶ岳と相通ずる牛ぞろえのお山もある。昼食時に感じた親近感はこれだったかと、思わず苦笑いをしてしまった。「世の中」と言って良いのか判らないが「狭いわ。」、参りました。

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割引岳への縦走路と来た道を振り返る。

(比較) 

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天狗塚徳島県三好市とそのアプローチ道。牛ノ峯は天狗塚から北西(右)に30分程だ。

 12:50本日の最後の山頂、割引岳(1,930.8m)に登り着く。もうこの時間になると誰も居らず、山頂は贅沢に独り占めだ。眼下は天狗岩越しに清水の集落、右には遠く南魚沼地方の田園風景も望める、素晴らしい眺めで爽快のひとことに尽きる。

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山頂から神字山、南入りノ頭と裏巻機道の稜線を望む。背後は米どころ南魚沼地方の田園。
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山頂三角点 と 山頂標識、修験道と思われる祠
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天狗岩、右の黒岩峰越しに望む清水の集落 と 広大な魚沼平野の田園

 紺碧の青空で、本日2回目の野立てとしゃれこむ。この山頂からも裏巻機道が続いていて、地図を読むと、永松渓谷で牛ヶ岳からの道と合流するルートと姥沢新田に降りるルートの2本があるようだ。ブラックコーヒーを味わいながら、一度歩いてみたいと思ったけれど、ちょっともう次の機会は…と諦めた。 

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歩いてきた、お巻機本峰と牛ヶ岳。やはりお巻機は美しいわ~。

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野立てセット。青空がこんなに蒼いとは…。

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色鮮やかだった、サラサドウダンの黄葉。

 快晴の中でも13時を回るとガスが走り始めたので、30分で切り上げて元来た道を戻る。今度は正面に来た牛ヶ岳を眺めながら、道草ばかりして避難小屋まで戻ってきた。午前中、あれほど歩いていた登山者はもう一人もおらず、泊らしいザックがベンチに1個あるだけだ。野立て2回で水を使い切ったので、ザックを置いて水場へ下る。沢源頭の綺麗な場所で、冷たい水で顔も洗って、さっぱりした。 

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水場への下り道と避難小屋を振り返る。

 14:05避難小屋に挨拶をして、今日のしんがりで下山開始。偽巻機でガスに隠れ始めた本峰にお別れを言い、井戸尾根を一気に下る。ここまでは昔と全く同じだけれど、もう往年のスピードと膝の柔らかさはない。乾いてはいるものの、滑りやすい赤土の道を経験知とダブルストックで慎重に下った。

 

(エピローグ)

 民宿に帰りついたら16時前だった。日常管理をお願いしているクラブの山小屋を見に、大将の軽トラで連れて行ってもらう。もう記憶は定かではなかったけれど、中に入るとその昔泊った3階が暖かかったことを思い出した。壁に張り付けて帰った地元神社の手拭いがまだ残っているのには驚いたが…。

 その夜は、春合宿で小屋をお借りした、T大スキー山岳部OBの方と同宿になり、おいしい料理と昔話で盛り上がって、大して飲めないくせに地酒がすすんでしまった。

 どうなることか、出発前はやや不安だった一週間に及ぶ上越国境山行を、予定通りすべてこなし、怪我もなく無事、終えることができた。特に、メインだった最終日のお巻機では、これ以上はない快晴に恵まれて幸いだった。お巻機におわす機織りのお姫様の、はるばるお四国から訪れた旅人への手厚い御配慮に、深く感謝を申し上げる。

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四十数年ぶりに立ち寄った、大学時代所属のクラブの山小屋。

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宿泊した民宿。庄屋の建物を移築した豪壮なつくりだ。

 

2020年(令和2年)の記録 郷愁の上越国境の山々と草紅葉映える尾瀬を行く – ③ 尾瀬逍遥の旅・後編

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早暁の尾瀬ヶ原・下田代を行く

9月30日(水) 天気:快晴   

 4:00起床、まだお星さまが天空に残り、天場も静かだ。手早く朝食を摂って中を整理し、ツェルトを畳む。霜も降りず、乾いていて有難い限りだ。現役時代と違って、1時間以内に整えて出発なんてきまりもなく、最近は結構、「ぐうたら」になってる。見晴が明け染むる5:30を待って燧小屋に天場標識を返却し、針路を北に、赤田代・温泉小屋方面に取った。 

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朝日差す赤田代への道

 早暁の下田代は、朝霧が立ち込め、朝日がその中に差してくると、美しい紅色に染まる。今日はやや薄曇で、期待していた絶景はもうひとつだったけれど、それでも十分だった。右手に燧ヶ岳が黒々と稜線を浮かび上がらせていて、人っ子一人いない木道はひっそりとして、良い雰囲気だ。 

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草紅葉と朝霧のコラボレーション
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浮かび上がる燧ヶ岳と草紅葉の中、雲海に浮かぶピーク

 15分程で東電小屋分岐。前回と違って今日は快晴だ。正面に松嵓高山の稜線を眺めながら、朝霧の即興詩をカメラに収めつつ歩む。

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朝霧の流れる東電小屋分岐と温泉小屋へと続く木道

 赤ナグレ沢を渡り、小じんまりとした赤田代沿いに進んで、7:00前瀟洒なつくりの温泉小屋に着いた。木道まで温泉の湯けむりが流れて来て、なかなか風情のある場所だ。 

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蔦の紅葉と漂う湯けむり。最初、なにかと思ったほど…。

 すぐ先の分岐から三条ノ滝への道、段吉新道に入る。ボロボロの木道から木の階段や火山岩むき出しの悪路に変わって、クロベが生い茂る樹林帯の中を一気に高度を落してゆく。

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段吉新道分岐とかなり傷んだ木道、ロープ付きの木製の階段

 平滑ノ滝は、もう少し岸辺に寄れるかと思っていたけれど、降りるルートはなく、滑るとやばそうな大岩の上から見下ろすほかなかった。岩盤の上を滑らかに水が流れてゆき、じっと見ていると吸い込まれそうな感じのスケールの大きい滝だった。 

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美しい平滑ノ滝、雄大さが素晴らしい。

 ここから少し登って、1,341mピークを横切る。左手にドウドウと流れる只見川の川音を聞きながら、大橇沢を越えると三条ノ滝分岐、7:40だった。ザックをデポし、カメラ片手に展望台を目指す。第一テラスへ降りる木製の階段はかなりの急こう配で、鎖がつけられ、10~5月は通行止めらしい。

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三条ノ滝分岐と解説板、急こう配の鎖付き階段と降り切った展望台全景

 丁度、朝日が当たる逆光で、ちょっと撮影に苦労する。滝の音とこの時期でも水量は多く、これだけ離れていても圧倒される立派な滝だ。

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朝日差し込む三条ノ滝

 滝の名前の由来は、環境省の案内板では、三千条(約100m)の滝説と渇水時には滝が三条に分かれる説の両論併記だった。 尾瀬ヶ原のすぐ横で、こんな個性豊かな二つの滝にまみえることができて、はるばる来てよかったと思った。 

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かなり古くて、文字が見えにくくなった環境省案内板

 8:10ザックデポ地点に戻り、うさぎ田代への標高差150mの樹林帯の急登を頑張る。道はお世辞にも良いとは言えない。30分頑張って小沢平への分岐に到着。通行止めの道を乗り越えて登ってきたという、中年ご夫婦と話す。「何故、keep outなのか、わからない。」というので、「増水時にはルート上の沢の渡渉ができず、数日前まで結構降っていたせいではないか。」と答えておく。

  8:50いよいよ裏燧林道に入る。御池まで緩い登り気味のトラバースだ。後半は草紅葉の湿原を縫って行く、今日のハイライトだ。

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うさぎ田代の草紅葉、快晴で気分爽快だ。

 クロベ主体の針葉樹と楓類主体の広葉樹の混交林帯を、古びた木道に沿って、個性的なクロベや茸類、時折現れる紅葉も堪能しながら歩む。

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もう始まっていた、楓紅葉。青空に映えるわ…。
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橅の枯木に生えたブナハリタケ、むしり取るらしい。明るい樹間の道と個性的で太い樹木

 日差しが差し込んで明るく、風こそないが、快適な縦走路だ。30分程でシボ沢に架かる裏燧橋に着いた。しっかり造られたつり橋を渡り切って大休止。先の平ヶ岳行で巻頭を飾った写真を橋の上から遠望しながら撮る。ほんの二日前なのに、あぁ、あの稜線歩いたなぁとえらく懐かしかった。 

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快晴の平ヶ岳・遠望とシボ沢に架かる裏燧橋

 裏燧橋を過ぎるとしばらく登りが続く。風景は変わらず、あまり登っているという感覚もない。これまで数人しかすれ違っておらず、ほとんど人が歩かないルートなんだと思う。新コロナのこのご時世には格好のルートで、大変ありがたいけれど…。10:25今日の最高点1,620mの横田代を通過。無風の池塘に映る前衛峰が美しい。

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横田代にあった、鏡面の池塘。静かや~。
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西田代と横田代の草紅葉を行く。木道が傾いているところまでそっくり。

 すぐに入深沢をわたり、めっぽう広い上田代に出る。天気はいいし、風もなくポカポカ。お昼を摂ってお腹もくちたし、中央のベンチに寝っ転がって、しばしお昼寝の大休止と決め込む。  が、10分程で木道を歩くドタドタ音に目が覚めた。無粋な奴めと思いつつ、身勝手を胸のうちに飲み込んだ。 

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上田代、広いわ~。正面は前回登った大杉岳(1,921.4m)
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ここからも平ヶ岳が…。それと 気持ちの良かった、お昼寝の場所

 トラバース終盤、姫田代を過ぎて御池田代へ入る直前に、鹿よけネットが道を遮るように張られていて、潜り抜ける。ここ尾瀬でも鹿の獣害対策を取らざるを得ないようで、何処も大変なんだと改めて実感する。

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鹿対策のネットと御池田代

 11:20御池の大駐車場を横切る。関東一円はおろか、果ては九州ナンバーの軽四も。尾瀬の集客力は凄いなと思いつつ、一日の駐車料金千円には少し心が曇る気分。環境保全活動に資するという前提なら… かな。 

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 御池で山の駅に立寄り、御池古道の案内ペーパーを頂く。古道の入口を尋ねるとわざわざ場所を案内して頂いた。2年前に泊まった御池ロッジの裏口(=ロッジ食堂から眺める借景のすぐ下)を斜めに横切って、木道が敷かれていた。一介の老登山者に過ぎない者に丁寧な対応をして頂き、この場をお借りして厚く御礼申し上げる。 

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山の駅で頂いた御池古道の案内ペーパー。ボランテイア作成とは思えない出来栄えだ。

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御池ロッジをバックに古道への木道を行く

 11:40 距離4.3km、標高差466mを2時間かけて下る、古道歩きのスタート。最初、スモウトリ田代へ大きく下り、そのあとは平坦に見える緩い下り。木漏れ日の中、山毛欅の樹間をぬう道を落葉をサクサクと踏みしめながら進む。山毛欅が覆いかぶさってくるような迫力だ。

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かなり広い、スモウトリ田代。何処でお相撲を取ったのだろう。
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覆いかぶさってくるようなブナと明るく快適な道
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がっしりした肉質で味も良いホウキタケと橅の実生株 + 道端にあった小さな秋

 15分程で二番目の湿原、小沼田代。木製デッキの設置場所を変えたらしく、元の場所が泥炭のまま。珍しい眺めだ。道は右手にモーカケ沢、すぐ左を灌木帯越しに車道が走るルートに変化、ちらほら小灌木の紅葉もあって、なかなか楽しい道のりだ。

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木の香りの残る、新調の木道と黒々とした泥炭層
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蔦紅葉と広くて気持ちの良い古道、すぐ左は灌木越しに車道だ。

 ウサギ田代への途中、道にクヌギの枝が乱雑に折り捨てられているのを発見。まだ新しい。母熊が子熊にドングリを食べさせるために枝を折ったのではないかと推測。ブナ平という名前からも熊の恰好の生息地なのだろう。

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折り捨てられたドングリの木の枝とゴゼンタチバナの赤い実
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山毛欅主体の原生林とドングリの木の巨木

 12時半少し前に一度車道へ出た。すぐモーカケノ滝展望台への下りに入る。急に道が狭くなり、勾配もきつく、走り出しそう。老母・娘に犬一匹の3人連れ?が登ってきてびっくり。このコースで初めて人にあった。 

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その名はデストロイング・エンジェル。治療法のない猛毒を持つドクツルタケの幼菌と成菌。美しいけど…。

 20分程で展望台。綺麗なデッキなのだが、肝心の滝が200m弱は離れていて、遠すぎるうえに松の枝が邪魔をして、展望はよくない。なるほど人の気配がないはずやと思う。

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モーカケノ滝と案内板。ちょっと遠すぎて残念。

 松の大木に囲まれたデッキにお別れし、急傾斜のジグザグ道を一気に降りてゆく。樹相は、山毛欅と広葉樹の混交林に変化、でも明るい踏分道で快適さは変わらない。これは紅葉真っ盛りの頃は凄いだろうなと、期待がちょっと頭をかすめた。 

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何処まで行っても気持ちの良い道。

 下りきって、ナル(平坦地)に出たなと思ったら、道の右手の笹と落葉の間に何やら薄黄色い塊りが…。近づいてみたら、なんと舞茸だった。株としては小さいけれど、驚きました。どこでも生えるとはいえ、ここでお会いするとは…。豊かなんですねぇと呟きながら、カメラに収めるだけにして、13:00、モーカケ沢橋を渡ったところで大休止、もう七入は目と鼻の先だ。沢水で顔を洗ってさっぱりする。

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舞茸。色は茶色なのだとばかり思っていた。
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モーカケ沢橋と歩いてきた道を振り返る。ちゃんと岩魚もいました。

 七入到着は、13:20だった。道が切り開きになり、「尾瀬自然観察の森遊歩道」の道標があって、すぐに御池と檜枝岐の分岐に着いた。案内ペーパーは、「いにしえの道 御池古道」とあったけれど、勾配が緩くてよく工夫された歩き易い道で、やはり生活の道だったのだろう。

 山毛欅やクヌギの大木の生えそろう、ほぼ原生林の割に開放的で、目と鼻の先を車道が通っているのに不思議と落ち着いて歩ける。気持ちがよくて、楽しかった。紅葉はまだはしりだったけれど、尾瀬行のラストに選んでやはり正解だったと思いつつ、檜枝岐に向かって車のハンドルを切った。 

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尾瀬自然観察の森遊歩道の標識と古道歩きの終点




2020年(令和2年)の記録  郷愁の上越国境の山々と草紅葉映える尾瀬を行く – ② 尾瀬逍遥の旅・前編

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会津沼田街道をゆく

9月29日(火) 天気:快晴

 昨日の平ヶ岳とは打って変って、快晴だ。今日から1泊2日で尾瀬に入る。2018年初夏は、至仏山から尾瀬ヶ原を抜け、燧ヶ岳、会津駒まで縦走した、花めぐりの旅だったが、今回は、草紅葉と紅葉を堪能しながら、2本ある古道にアプローチ。未踏の尾瀬沼南岸道や三条ノ滝、裏燧の林道をトレースして、のんびり燧ヶ岳をぐるっと周回するつもりだ。小屋泊まりだけだった前回の反省もあって、新コロナ騒動とは関係なく、見晴野営場で久しぶりに天泊もすることにした。

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尾瀬・第一日 会津沼田街道

 午前7時、だだっ広い七入無料駐車場の片隅に車を置いて出発。第一日目の今日は、いにしえの会津と上野の交易路、会津沼田街道を辿って沼山峠に出、大江湿原、尾瀬沼南岸道を沼尻へ抜けて、白砂峠から見晴の野営場に泊る、コースタイム8時間ほど、地図上の距離約18kmを踏破するプランだ。七入の標高が1,080m、最高点の沼山峠で1,784m、沼や南岸道は1,600m台なので、最初こそ登りだが、後は平坦、距離は長くても十分行けるだろうと踏んでいた。 

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硫黄沢に架かる真新しい橋と苔むした石段

 七入山荘の横を通過して、10分弱で硫黄沢の橋を渡る。すぐ苔むしたコンクリート製の石段。赤法華はカラマツや広葉樹の混交林と笹、草原帯が連なる、変化に富んだ道だ。美しいが管理臭の漂う木道と違い、至って開放的だ。のっけから気分が良いので、アケビや山葡萄を味わいつつ、ずんずん行く。

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赤法華の入口と陽ざしを浴びるオオウバユリ(実)

 40分程で赤法華沢を過ぎ、気持ち登り気味になった道行沢左岸を進んだ。

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落葉の小道と熊?か鹿?の爪 or 角痕

 笹を下草にミズナラや山毛欅の樹林を縫って行く、しっとりと落ち着いた道で心も和む。まだ紅葉の時期には少し早くて残念だけれど、差し込む陽の光が心地よい。 

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素朴な道行沢一番橋と街道の小景。ずっと気持ちの良い道が続く。

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タツノオトシゴのような、山毛欅の小枝

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やはりおいでになりました、秋の定番 ドクベニタケ

 9時、楽しみにしていた、抱返ノ滝の分岐に着く。ザックデポして5分程先の滝へトラバース。水量は細いけれど、一枚板の岩を水が伝い、なかなか上品な滝だ。その気品ある趣と風情を感じさせる周囲と相まって、この街道を行き交った、古人の疲れを癒したであろうことは、想像に難くない。

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抱返ノ滝 その優しさと繊細さが素晴らしい。

 ここから標高差200mを一気に登り、30分弱で、シャトルバス終点の沼山峠ターミナルに着いた。苔むした祠を通り過ぎたと思ったら、突然、建物と舗装路が現れ、やや戸惑ったけれど、人は運転手さんだけで、暇そう。尾瀬も乗客が出発した、ウイークデイのこの時間帯は静かだ。 

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平成のお札が鎮座する祠と明るい山の駅 沼山峠

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尾瀬・第一日 沼山峠~尾瀬沼

 小休止後、峠を目指す。いよいよ木道が現実となり、よく整備されてはいるが、登山靴では少し歩きにくい。10時丁度に沼山峠を越え、快晴の中、大江湿原への下りに入る。

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日当たり抜群の沼山峠展望台 あまり見晴しはよくない。

 ポツポツと登山者の姿も目に付き始めた頃、林間から視界が開け、大江湿原の入口、小淵沢田代への分岐に着いた。もう一面の草紅葉。クロベやダケカンバの林に囲まれた、穏やかな小宇宙が輝いている。

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小淵沢田代分岐への路と沼山峠を振り返る

 すぐ横を流れる大江川の橋から水辺を見ると、ゆうゆうと岩魚が遊泳中。

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悠々と泳ぐ、20cmクラスの岩魚(左下)

 撮影中に話しかけてきた、TYOから来たというおばさま2人組とお花の話で盛り上がり、しばらく一緒に歩く。今日は沼・長蔵小屋で宿泊とのこと。三本カラマツに立寄りたいというので、北岸道への分岐でお別れした。うろうろしすぎて、もう11時前だ。 

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大江湿原のハイライト 三本カラマツと尾瀬沼
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燧ヶ岳遠望とヤナギランの丘への路

 登山者の多いであろう、ビジターセンター周辺に入るのを避けて、釜ッ堀りの遊歩道を選択する。

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釜ッ堀りからの燧ヶ岳 前回(2018年)はガスがかかり、撮れなかった。

 休憩を取らず、湖畔の旧長蔵小屋の裏を通り、檜ノ突出しを横切って、15分程で早稲のスナップーに着いた。居合わせた高齢のご夫婦に断って、ベンチの隅で一服。早稲沢は目立たない沢だ。

 いやぁ、すっぱり開け切って開放感抜群。燧ヶ岳が正面で沼に映える姿が絶景だわ。雲一つなく、あまりに完璧すぎて絵にならず、物足りないけど…。

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早稲のスナップーから望む燧ヶ岳と尾瀬沼。 まるで絵葉書のよう。

 たっぷり日向ぼっこの間中、結構、人が通り、お昼寝は取りやめ。三平下はそのまま通過し、30分程歩いて富士見峠に抜ける、人影まばらな皿伏山分岐で一休み。クロベやツガ類の鬱蒼とした針葉樹林帯で、道が暗い。木道も次第に傷んだものが増えてきて、苔むして腐っている物もちらほら。おまけに、前日までの雨でぬめって滑りやすく、いよいよ尾瀬地獄のはじまりかと観念する。

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三平下先からの燧ヶ岳、微妙に山容が変化 と 皿伏山への分岐道標

 南岸道は、沼に沿うほぼ水平道だけれど、総じて木道の傷みが激しい。ところどころ改修されていたが、とても手が回らないのだろう。ぬめる朽ちた木道に何度か滑りそうになった。途中、笹刈り作業のチームにホイッスルで所在を教え、作業のお礼も伝えておく。刈払いは手間で地味な作業で、もう感謝しかない。

 そうこうするうちに、小沼湿原に入り、沼尻まであと少しになった。燧ヶ岳のお山の形も変化し、大きくなったなと思ったら、休憩所(2020年は閉鎖中)が見えた。

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こじんまりした小沼湿原と沼尻休憩所 あと少しだ。

 12時過ぎに到着。ここでお昼に民宿特製のおにぎりを頂く。思ったより時間がかかって、食事が遅くなったけれど、あと5km。もう前回、逆コースを歩いた白砂峠を越えるだけだし、ここで沼は見納めになる。静寂の極みの尾瀬沼は、シラサギが一羽湿原に佇むだけで、前回湖面に浮かんでいた鴨さんはあいにく御不在だった。

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静謐の尾瀬沼。 中央やや左の白い点が白鷺。道後温泉では神の使いだ。
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沼尻平からのナデッ窪 と 沼尻平休憩所 環境省文化庁等が共存だ。

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尾瀬・第一日 白砂峠~見晴

 黄色に色付いたダケカンバを眺めながら、峠に向かう緩い登りの狭間を抜け、白砂湿原に出た。2年ぶりに湿原の池塘に戻ってきた。

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黄葉しつつあるダケカンバとまだ残っていたアキノキリンソウ

 今回の絵は草紅葉で、湖面に映えて美しい。風が止むのをしばらく待ってシャッターを押す。尾瀬の紅葉は10月に入ってからで、対面の樹林帯が色づくには少し早い。けれど、これで初夏と秋がそろったので、まぁ満足とすべきだろう。

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秋の白砂湿原

 時間はたっぷりあるので、ゆっくりして、峠を越えたのは13時丁度だった。あとは沼尻川に沿って段小屋坂を下るだけだ。ちと距離はあるけれど…。

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果たして、寄道の成果と言えるかどうか…、この世界。

 苔やミニ紅葉、木々や落葉の小道を撮りながら、道草ばかりしていると、スパッツを泥だらけにした若いぼんが追い付いてきて、あっという間に見えなくなった。昔日が甦り、元気も少し分けてもらった気分。ご馳走様。 

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道すがらの、さまざまな世界

 見晴新道の分岐を過ぎ、野営場への近道に入って、14時過ぎ、今日の行程が終わった。燧小屋に天泊の手続き、水汲みとツェルトを張り終えてから龍宮小屋方面へちょっと散策に行く。燧ヶ岳はこの時間なのでもう雲がかかっているが、景鶴山はまだ大丈夫だった。

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見晴を振り返る、燧は雲の中。草紅葉に浮かぶ景鶴山、中央に東電小屋の屋根が覗く。

 一面の草紅葉に圧倒される。尾瀬の良さは、この山上庭園のスケールの大きさとその開放感から来る空間の、個々の要素が上質にそろった美しさだろう。ぶらぶら下田代の中間点まで行って、まだ頑張って咲いているお花を撮りながら引き返した。 

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六兵衛堀に至る水面に浮かぶ秋 と ガスに隠れる至仏山に続く木道
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残っていたお花類。左から オヤマリンドウ、吾亦紅、オゼトリカブト、ウメバチソウ、イワアカバナ

 戻ると、野営場にカメラが来ていた。H編集長含め3名。どうも「にっぽん百名山 秋の尾瀬・燧ヶ岳テント泊徹底ガイド」の撮影だったよう。新コロナもあってか、確かに野営場は混んでいた。燧小屋の名簿で30張を超えていた記憶があり、若い人より中年以上のご夫婦と思しきペアが多かった。内訳はドームテント派がほとんど、ツェルト派は自分を入れてわずか2張。好天予報で、軽いツェルトを選択したが、世の趨勢とはかなりかけ離れているようだ、ぴえん。ともあれ、暗くなると野営場はしんとして静か。皆さん、それなりの御配慮はあるようで、小生にとってはワインとともに過ごす、プチ贅沢な優勝タイム。感謝の一夜でした。

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軽さ優先で選択したツェルト。今回は真面目に張りました。