御来光ノ滝、秋深し  残る秋を楽しんだ秋日和の一日

美しい照葉の楓紅葉、よく残っていてくれたと感謝である

 早朝7:40、漸寒の長尾展望台に車を止めた。 週末、快晴の石鎚スカイラインは紅葉狩りの車がひっきりなしで大賑わいだ。今日の目的地、御来光ノ滝へは、最近はもう、ここから大昔の堰堤工事の際につけられた小道を辿って河床に下る、お手軽コースばかりになってしまった。 溪泉亭から水吞獅子を経て面河本谷に入り、金山谷を右手に見つつ、花崗岩の白い廊下を歩んだ頃が懐かしい。あの辺り、今は紅葉が盛りだろうに。

概念図

 面河本谷まで小尾根を急降下し、8時半過ぎには岩だらけの河床に。 歩きにくい中を少し行くと番匠谷との分岐だ。 もう楓紅葉は終わっていたけれど、辺りは荒涼たる眺め。面河山側が斜面ごと崩落していて、岩肌剥き出し、立木が河床に落ちて横たわっている。 台風等でかなり傷んでいるとは聞いていたけれど、思っていたよりひどい状態だ。 本谷をそのまま遡行せずに尾根道のコースを選択。少し登った後はずっとトラバースが続くけれど、ここも倒木や岩が剥き出しになったところもあって、えらい荒れようだった。

(左)番匠谷出合手前の崩落現場      (右)尾根道中途の崩落の状況

 すぐ下がバッサリ切れていて、いつも神経を使う小沢はいつもどおりでやや乾き気味、比較的楽に通過できた。

右手のすぐ下が10mほどの崖になっている小沢 今日は楽に渡れた

 小1時間ほどゆるい風の中を進んで二回目の渡渉点に着く。秋は水量が少ないので渡りやすい。 樅や雑木の繁る左岸を10分程歩むともう七釜の滝だ。

実質的には、最初となる渡渉点 水量の少ない秋は簡単に渡れて助かる

 滝を流れる水流の泡模様と広く白い河床が落ち着いた雰囲気を醸し出し、栃の枯葉が散らばって緑の苔との好コントラストで美しい。

カラフルな雑木紅葉を背景に右岸の栃の大木を見上げる 
七釜ノ滝  (左)下流方向を見る     (右)上流方向を見る
七釜の滝手前の登山靴でそのまま歩けるナメ と 紅葉に渦巻く流れ

 おむすび岩も苔でお化粧していつもの場所に鎮座、しばし休憩して昔と変わらぬ情景を味わう。

(左)おむすび岩 この時期は海苔巻ならぬ苔巻だ  (右)サワグルミに絡まる太い蔓

 滝を過ぎてすぐ三回目の渡渉で右岸に渡る。 何故か左岸に尾根に向かって赤テープが点々と敷設されていて、ここは登路ではないはずだがと訝しく思って、少し行ってみる。先に道らしいものはなく、まぁ道に見えたのか、それともバリエーションのものか…判別不能だった。 最近はこういう類のテープ敷設がままあるので、注意しないと。

三回目の渡渉点から上流域の雑木紅葉 風もなく穏やかな快晴だ

 本谷の右岸に続く、面河村時代の旧遊歩道はしっかり今も現役で、沢沿いの道は傾斜も緩くて歩き易いし、周りの赤や黄、橙の雑木紅葉も美しい。ところどころ道が傷んでいるけれど、枯葉の敷き詰められた、古い石積み道はなぜかしっとりと心が潤う。

サクサクと落葉を踏みしめて路を行く    古い石畳み路はなかなか良い情緒だ

 犬吠谷を本谷越しに眺め、面河尾根から落ちてくる小沢を何回か横切る。 もう一度左岸に渡ったところにある、コハウチワカエデの高木はもう散り切っていた。 紅葉のグラデーションと照葉が最も美しく、今日の目的の一つだったけれど、やはり時期が遅すぎた。

いにしえの、見ごたえのあったコハウチワカエデの紅葉 グラデーションが素晴らしい (2009.10.31)

 このコースはシロモジが多くて、辺りを埋め尽くす黄葉の中をゆったりと歩む。途中に通過する木組みの梯子や橋は新しいものに架け替えられて久しいし、今日は蔓のアーチも潜らせてもらえてご一興だった。

光り輝くシロモジの黄葉 やはり陽が当たると映える
梯子や橋をよっこらしょっと乗り越えてゆく
(左)蔓のアーチ(やや貧弱かな?)をくぐる     (右)路傍に色鮮やかなサルノコシカケも

 10分程で南沢出合だ。 ちょっぴり面河ブルーを感じさせる、手前のミニ滝つぼも歓迎してくれている。 南沢は出合からそのまま東稜まで突き上げて、面河道を下ったこともあるが、源頭部の岩塊斜面と笹の急斜面に随分と苦労した、苦い思い出のある沢だ。

南沢への入口、出合の小さな滝 と すぐ手前のミニ滝つぼ 綺麗な碧緑だ

 右岸に戻ってすぐ崩れかけた細い急登になる。ここからは御来光の滝へ向かって徐々に高度を上げてゆく。

行く秋を楽しむ

 途中の、生い茂る下草の中に樅や山毛欅の大木が林立する箇所や苔むした木道は今も元気で頑張っていて、昔の友達にあったような懐かしさだ。

一点の落葉の赤が印象的な木を裂いた古い木道 と ブナシメジと思われる茸

 11:15、滝の落口に出る最後の急登を登り切って御来光の滝に到着。あまり風が当たらず暖かいのか、滝の周りは結構、紅葉が残っていた。相棒ともどもご満悦で、しばし滝周辺のハウチワカエデ類の照り輝く真っ赤な紅葉をじっくりと堪能させてもらう。

御来光の滝全景 と 左岸の楓紅葉 快晴で爽快この上ない

 この日は、複数のパーテイがここを歩いていて、普段は静かな落ち口も今日はなかなかにぎやかだ。 お昼を摂っていると、一番最後を登ってきた4人組が到着、声を掛けられて話してみると、なんとこれがEn…山さんのパーテイだった。 世の中、狭いわ、前日は瓶ヶ森で天泊だったらしい。お久しぶりでしばし旧交を温めさせてもらう。

滝の一段目と二段目のアップ と 右岸の紅葉、やや終わりかけだったのが残念

 帰路は、往路をそのまま戻る。憂鬱なのは、本谷河床からスカイライン車道に出るまでの最後の急登だ。この急登がなければ…といつも思うけれど、それなら渓泉亭・水吞獅子からそのまま遡行し、滝を越えて愛大山岳会石鎚小屋手前に出て、面河道を下ればよい。

登り途中の、古い枯れ株の上に根付いた檜の若い株 まさに生命力そのもの

 でも、そうなるとお手軽とも言えなくなるので、こちらは単独行のために取っておくと、至極?もっともな理由付けをして、結局、毎回このコースだ。 身勝手をやや反省しながら、最後の急登に大汗をかいてまだ秋光の明るい車道に戻った。

まさに絵葉書そのものといえそうな、秋晴れの石鎚山系の主峰群