ひねもす 山歩き ショートショート② ー スズコウジュ

 このところ、お山は午後になると雷様がゴロゴロとお出ましになることが多い。 とある一日、時折、青空も覗いて今日はなんとか天気が持ちそうだと、ノコノコ出かけた。 じじいには今年の猛暑は体に堪え、耐えかねて…もある。

 原生林帯に入れば、もう雷様はあまり関係がなくなる。 なにより、平地より6、7℃は涼しいので、足元を確かめつつ、のんびり歩む。 何か所かストックしている、寛げるポイントでコーヒーブレイクしてゆったり涼む。心地よい風が渡って、キリマンを引き立ててくれた。

 若い頃のように、体力任せであくせく歩いた時代はもう過ぎ去って久しい。 味わいたいものは余裕がないとみえないし、齢が重なるにつれ、味わい方も深化してゆく。

鈴香薷 茎高約20cm ほどの華奢な多年草

 やや湿り気味の山毛欅の大木の根元、ひっそりと今年も咲いていました。 たった数㎡のミニ群落で。 日本特産種かつ1属1種という点で、かの有名?な白根葵と同じ。 ただ、北ア以北に分布の白根葵と異なり、こちらさんは関東以西で沖縄まで分布を広げていらっしゃる。

 お花の大きさや色、花茎の高さも大違いだけれど、共通なのはその気品。 白色のお花は、数々あれど、その透き輝くような純白には、思わず引き込まれてしまいそうになる。 花弁が雨露に濡れて透き通り、その変化で世のカメラマン氏をうならせるキタダケソウとも微妙に異なる。 わずか5、6ミリとほんとに小さな唇形花でありながら、それらに一歩も引けを取らない、この気位の高さ。 一服の清涼を求めに行く価値、十分な一日でした。

スズコウジュ と 同じ一属一種の名花 白根葵、濡れて花弁の透き通ったキタダケソウ