二ノ岳 ― 石鎚山展望台の低山歩きを楽しむ

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二ノ岳への稜線上からの石鎚遠望、手前は成就社。

 平年よりめっちゃ早かった、梅雨入り。つかの間の梅雨晴れとなった日曜日、二ノ岳(にのだき・1,156.4m)から菖蒲峠に至る稜線を歩いた。新コロナの蔓延防止措置も解除され、気分的に少し楽になったものの、マスクと消毒用アルコールは依然、手放せない。お山はとにもかくにも人のいないコース。要らぬ接触を減らすしか…。

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 石鎚登山ロープウェイのある県道12号線は久しぶり。高瀑行とお正月の石鎚詣以外、ここはほとんど走らない。林道の通行止や新コロナもあって、なんと1年半ぶりだ。今回のお山は、ロープウェイに乗ると瓶ヶ森方面の正面に見える。加茂川に向かって絶壁となっている斜面がいやでも目に入るので、皆さん、よくご存じだろう。 

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県道12号線から二ノ岳稜線を望む。峨峨たる山容が登高意欲をそそる。

 まずは、下山口の東之川にクロスバイクをデポ。取って返して、登山口となる細野集落への入口、細野バス停横の路側帯に車を止めた。車道よりバス停からの歩道の方が近道になると思ったが、道はもう人もずっと歩いてなくて崩れ放題。しょっぱなから手痛い洗礼だった。

 7:40細野集落で草刈り中のおじさんと話す。「あんなとこ、よく登ってきたね。」と呆れられる。「もうこの集落も6人しか住んどらん、皆引っ越していった。」と寂しそうな表情だった。「気ィつけて行きなさいよ。」と温かく見送ってもらって、石鎚三十六王子の参道に入る。 

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細野集落・両社宮の参道、もう…。糊ウツギの花と石鎚三十六王子参道入口

 三碧峡に向かってずっと巻くだけの参道に竹林のところで見切りをつけ、面倒なので、送電鉄塔に向かって標高差100m弱を直登する。8:10送電鉄塔(川内幹線№58-59)。路肩のエゴノキが丁度満開で、そこはかとなく香る白い花が美しかった。

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送電鉄塔、左上のエゴノキが満開だった。

 ここから先、ルートはない。杣道なのか、獣道なのか判然としない、うっすら道の急登をひたすら登らされるけど、下草のない植林帯。なんの抵抗もなく20分程で四等三角点 細野(標高(以下、同じ。)527.3m)に着いた。やっと二ノ岳への縦走スタートだ。 

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うっすら道の急登に汗がにじむ。四等三角点 細野、展望はない。

 檜の植林帯と断崖との狭間の、灌木帯に近い広葉樹の稜線を歩く。倒木をぬって植林巡視路か獣道か、はっきりしない踏み跡をたどり、小ピークの乗っ越しの続く、緩い単調な登りだ。結局、二ノ岳山頂までずっとこのパターンだった。たまに県道12号線やこの先歩くピークを望めたが、この高度なので展望はない。

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途中の目印になる枯松の大木 と 稜線から県道12号線、行先のピークを望む。

 9:45ヘキチョウさんのブログにあった、苔むした大岩が現れる。たおやかな尾根筋に突然現れた関所のよう。一応、右側のチムニーっぽいところを上がってみたが、一番上に浮いた岩が乗っかっていて、越えられない。仕方なく、戻って左側を巻く。 

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大岩の上部。でかすぎてカメラに収まらない。

 11:05 四等三角点 前田(975.1m)を通過。この三角点、灌木に隠れて判りにくく、小ピークから少し戻らされた。

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四等三角点 前田 もうここまで来れば二ノ岳山頂は指呼の間だ。

 風が通って稜線は涼しく、差し込む光も心地よくて、なかなか快適だ。この辺りから地滑りの影響なのか、ところどころ二重稜線が現れるようになった。もう、山頂まで標高差200mを切って、すぐ着くと思い、気持ちの良い場所を選んで大休止する。 

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明るい二重山稜の道 と 木の根っ子バリバリの登り。右手は切れ落ちている。

 正午前、二ノ岳山頂(三等三角点 長滝)に着く。気温18℃、何の変哲もない灌木の中のピーク。恒例なのか判らないが、プラ扇子を広げ、記念撮影。展望は全くないので、お昼を前田峠で摂ることに決め、すぐ出発。

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二ノ岳山頂。三等三角点 長滝の名物?プラ製扇子。何でここにあるんだろう。

 この先、300m程ほぼ平らな水平道で、二重山稜や小さな岩場、美しい新緑の広葉樹林が次々現れて、なかなか飽きさせない。

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またまた二重山稜が…。新緑美しい樹林帯と苔むした岩場。涼しくて快適だ。

 峠に向かっての下り始めだけ少し道が不明瞭だった。途中の岩峰から、瓶ヶ森や大森山、岩黒山の稜線等が綺麗に望め、しばし堪能させてもらう。今日初めての好展望だ。 

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二ノ岳を振り返る。下って初めてお山の全容が見えるなんて…。
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瓶ヶ森遠望と大森山、岩黒~筒上への稜線。石鎚は二ノ岳の陰で見えなかった。

 前田峠は、明治30年11月と彫りこまれた石塔と首なし地蔵さんが鎮座。昔は峠越えの人で賑わったであろうことを彷彿とさせる場所だった。スパを茹でてボロネーゼの昼食。ここもいい風が通る。涼しいし、なにより静かや。食後のブラックコーヒーでしばし寛ぐ。

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しっかり造られた石組に立つ、前田峠の石塔と首なし地蔵。

 たっぷり休んで、13:15高森(1,369.6m)分岐に向け、標高差400m弱の登りに取り付く。山容は相変わらず植林帯と広葉樹の灌木帯でも、これまでと違って、道ははっきりしている。

  稜線通しのやや急な登りを1時間頑張って、少しナルになった分岐に着く。赤テープだけがそれと示していて、他はなにもなし。ザックをデポしてサブザックひとつですぐピストンに出発。人が歩いていないのが歴然でも、道が悪いなりに踏み跡は明瞭で、アップダウンの多さも気にならなかった。

 途中、寒風山から笹、沓掛に至る稜線や瓶ヶ森もくっきりと浮かび上がって見える、格好のスポットがあり、一服の清涼剤になった。

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寒風山(右)から笹ヶ峰(中央)と沓掛山(左)の美しい稜線。

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1,369mピーク と 後方にそびえる、瓶ヶ森と西黒森。

 20分程で高森(三等三角点 三ッ森)に着く。かなり広い山頂で、新緑の樹間越しに流れる雲が綺麗だった。

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かなり広い高森山頂(1,369.6m/三等三角点 三ッ森)と樹間を流れる雲。

 ピストンから戻り、明瞭な道を稜線通しで菖蒲峠へ下る。下り始めて直ぐ、注連縄が掛けられた樅の大木に出会う。根元に蔵王権現らしき像も。一応、修験道のなにかなのだろうか。それなら、お札とかありそうなものだけれど…。

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注連縄の掛けられた樅の大木。根元に小さな像が見えるが、それ以外、何もない。

 首をひねりながら一直線に下り、石のお地蔵様の裏から峠に15:40降り立った。蔭地林道は草ぼうぼう。昔、林道を車で走った頃の面影は全くなかった。

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菖蒲峠のお地蔵様 と 東之川への下降点。右上にお地蔵様がある。

 写真を撮ろうと踏みだしたら、足元からヤマドリが飛び立って、雛が四方八方に逃げ惑う、ワヤクチャな事態に。しょうがないので、一羽だけ帽子に入れて写真を撮り、すぐ放す。近くで母鳥が睨みつけていて、今にも襲われそう。この世界でも「母は強し」だ。おおこわ…。 

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瓶ヶ森へのルートを示す道標 と 帽子の中のヤマドリの雛。可愛いわ。

 東之川への下りは、入り直後が不明瞭で、慎重にルートを選ぶ。しばらくすると一定間隔でテーピングが現れ、集落に出る直前まで続いた。途中の標高1,000m付近の、路が南に屈曲するポイントには鉄製の道標もあり、非常に的確だった。しかし、道は枯枝や倒木が散乱し、人通りがないのは歴然。無理もないか。

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標高1,000m付近のしっかりした道標。東之川と瓶ヶ森の記載がある。

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石鎚山を樹間から展望する。絵葉書みたいな1枚。

 石鎚山を遠望しつつ一定のピッチで下って、40分程で集落に出た。

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東之川手前の集落跡の石組 と 下山口。石畳の階段だ。

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東之川集落のメインストリート。左端にデポしたクロスバイクが見える。

 ヘキチョウさんのご主人と同じ場所にデポしたクロスバイクで細野バス停まで戻る。下り一辺倒で、下谷から下流は舗装も良く、凄く快適だった。ブッシュ歩きを想定しながら、ほとんどそれらしいものはなく、少し期待外れでも、それなりに楽しめたお山が終った。

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成就社から石鎚山、大森山、岩黒山へ連なる、雲美しいスカイライン。