伊予富士(1,755.97m/三等三角点)。 展望の良さは特筆ものだけれど、山容は全国に数多ある〇〇富士とは似ても似つかない。名前と山容が一致しない、変わったお山だ。 もっとも、UFOライン第三号隧道入口辺りから眺めると、まぁそう見えなくもない(かなり苦しいけれど…。)。
ここは、山と渓谷2020年12月号でも紹介されたように、基本的には冬メインのお山だ。
すぐ西に位置する東黒森(1,735m)まで足を延ばせば、瓶ヶ森、石鎚山~筒上・手箱、二ノ森まで望める大展望が待っているし、雪のUFOライン・天空の道もなかなか見ごたえがある。
無雪期は、笹原が美しくその稜線漫歩の楽しさは群を抜く。また時間が許せば、お向かいの寒風山(1,763m)と両方を一日で駈けることも可能で、その点に限れば、山歩きとしては効率的といえなくもないだろう。
お四国でも猛威を振るう新コロナもやっと感染者数減少に転じ、ピーク越えが明瞭に。 情況の好転に台風一過という千載一遇のチャンスを狙って、長月下旬、久しぶりの稜線歩きの山旅に。 今回は、中途に松らしい?木がくっきりと目立ち、前々から寄ってみたかった、北側(西条市方面)に連なる小岩峰(仮称)まで遊びに行く、プチ・バリエーションも加味した。 メンバーは、足取りしっかりの相棒にそのお友達も加わって、都合3人だ。
8:30、好天の中、寒風山隧道東側駐車場を出発。 桑瀬峠(1,451m)への標高差300m程の登りに入る。 入りは崩落や岩の露出で路が悪いけれど、途中から昔どおりの落ち着いた雰囲気に。40分ちょっとで峠に出た。快晴だが、今日は風が強くて体が煽られる。 ここから腰近くまで伸び放題の笹道へ。幸い、乾いていて笹濡れは回避できた。 1,649mピークのある尾根の乗越までずっと登り。我慢30分で乗越を越え、目的の一つ、笹原道に出た。 ここからの眺めは、無雪期も冬期もそれぞれに趣があって素晴らしく、ワクワクしてくるのは自分だけだろうか。
風に吹かれつつ進む、快適な稜線歩きはあっという間だった。途中、例の岩峰と中腹にある松らしい?木がはっきりと望める。 山頂直下の鞍部にはすぐ着いてしまい、ひと休みしたかったけれど、風が巻いて吹き付けて来るので、渋々、進むことに。
標高差150m、あいだに灌木帯を挟んだ急登に汗がにじんできたなと思ったら、山頂だった。10:40、ほぼ標準タイムどおりだ。
お昼にはまだ早いので、山頂でひとしきり展望を楽しんでから、おもむろにプチ・バリエーションに移る。 東黒森への縦走路の中途から針路を北に。 笹の踏分道をこいで、サラサドウダンやアケボノツツジの灌木交じりの小ピークを越える。ここからは一気の急降下だ。 灌木や笹につかまりながら、慎重に下る。しばらくして、涸沢状の落石帯を通過。沢向いの木には、野生動物・生態調査用のカメラが設置されていた。彼らはここをよく通るのだろうか。
30分程で縦走路の稜線から最初のピーク(=小岩峰)の鞍部下に出る。 標高差約40mの樹林帯の急な下りだったし、展望もない。
ここから山じいだけで、その先の1,720mくらいの台形ピーク(仮称)まで行けそうか、正面の岩壁を巻きながら、笹原の灌木帯を少し下ってみる。 持ち時間30分と決め、岩壁の乗り越えられそうな箇所がないか、巻けば台形ピークとの鞍部へ出るルートが取れるか探ってみたが、すぐ崩れそうな草付きの涸沢状落石帯しかルートに使えそうなところがなかった。岩壁の乗越しともども危険と判断して、ここは諦めることに。
待機場所に戻って、小岩峰を目指すことに決め、鞍部から稜線通しに灌木帯をよじ登る。 ルートはないので、藪の薄いところが狙い目だ。
登り出してすぐ、五葉松の大木が正面にどっかと鎮座していた。立派な枝ぶりでこれなら縦走路から仰ぎ見ても目立つわけだわと納得。稜線上で冬はかなりの強風だろうに、よくぞここまでと感心する。
12:30、お目当ての小岩峰に到着。すっぱり左側は切れていて、岩が脆く頂までフリーで攀じるには勇気がいる。 じじいはさっさと諦めて、お昼の準備。天気は良いし、展望は見事というしかないし、コーヒーブレイクには最高の場所だ。
この時期は、お花もリンドウとアキノキリンソウくらいしかなく、もうコハウチワカエデの葉も赤くなりつつあった。 あと2週間もすれば、お四国も鎚山頂を皮切りに燃える紅葉の季節が始まるのだろう。 つらつら思いながら、先を行く相棒たちを目で追いつつ、陽のかげってきた笹道をのんびりと下った。
おくれつつ一人のときを秋山路 ( 原 通 )