晴天の少なかったこのGW、新コロナの蔓延防止措置適用で、平地での外出は極力、手控え。お山も同様に、人に会う確率を最も減らせる、超マイナーコースを選択するほかなかった。もともと人嫌いの傾向、強いだろと自嘲しながら、今回は石鎚スカイラインを走るたび、気になっていた冠岳を歩くことに。途中にある、ユニークな山名の融界ノ森(1,615.04m)にも寄ってみたかった。
地形図を読むと、同スカイラインは、冠岳隧道の先から笹倉登山口のある金山谷を渡る橋までずっと緩い下りだ。下山時のクロスバイク活用にはもってこいの条件、これを使わない手はない。で、隧道土小屋側出口にデポし、車を笹倉登山口へ。7:30、先行の4人パーテイを追うように出発。下り坂予報だがいい天気だ。
ネコノメソウやサイゴクサバノオが茂る小沢横から入山。道すがら先行パーテイとお話ししたら、同じコースを歩く予定と判り、同行することに。道沿いの樅や山毛欅、ハリギリの大木群に挨拶しながら、ゆっくりめのペースで9:30笹倉湿原。先日、半日スカイラインを通行止めにした雪が、ウマスギゴケ群落の一画に残っていた。白と苔緑の美しいコントラスト。
10:20、丸笹山から筒上山に至る、稜線に上がる。古希越えのおば様を含む二人の女性陣がすこぶる元気、こりゃ体力あるわと舌を巻く。お聞きすると、愛媛・高知県境のブッシュの山々を歩き通している大ベテランだった。道理で強い訳やわ。笹ブッシュのコース取りも堂に入ったもので、単独で踏破予定だった小生には、正直、有難かった。
県境にそびえる1,614mピークを目指す。稜線は腰までの密生した笹ブッシュ。おば様の助言に従って、密度の落ちる、愛媛県側の斜面を歩く。山毛欅主体の広葉樹灌木帯に笹が混じり、道はないようであって、比較的歩きやすい。でも、地形図に出ない微妙なアップダウンが多く、遅れ気味のメンバー待ちもあって、小1時間近くかかった。
高知県椿山(つばやま)集落に下りる高台越へ続く県境の稜線がくっきりと浮かぶ。ただ、ピーク手前から下る、稜線への入口が現場に立ってみると不明瞭で、ピークから南に延びる別の支尾根に入り込みやすい。「要注意なのよ、このポイントは。」とおばさまがのたまう。確かにガスったり、疲労時だと間違えやすく、納得する。
ピークから融界ノ森まで直線距離は1.5km弱だが、意外と時間がかかる。うっすら道が特徴のない稜線を走っていて、道迷いはほぼない。けれど、小ピークが連なるアップダウン、薄いが腰ほどの笹ブッシュや倒木に加え、岩場が頻繁に現れる。ピッチを上げられず、登り下りや高巻き等で、思った以上に時間を費やした。
時に現れる、ビューポイントや残雪、アケボノツツジ、ヒカゲツツジの競演もあり、それなりに楽しい尾根歩き。
11:50樅の大木が3本連なる笹と岩場横で昼食。パーテイがばらばらに個食する光景が面白く、こりゃ単独行では味わえないわ。
一見、美しく見える山毛欅の広葉樹と笹の織りなす稜線を進む。この情景は上越国境のお山と樹木を除き、相通ずるが、向こうはこんな岩場の連続はまれだ。
トレースするのは大変でぶつぶつ言いながら、薄い膝丈の笹の急登を凌ぐと、融界ノ森だった。13:30。そこそこ広い平坦地で三角点周辺は刈り払われていた。明るいが、地味な山頂。鬱蒼とした森かと想像していたが、当てが外れた。南尖峰を遠望しながら小休止。行程の三分の二を来たが、ちょっと時間がかかり過ぎてるわ。
ここまでずっと西に進んできたが、北北西へ進路が変わる。下り始めて直ぐ、やや傾斜の強い岩場。右に左に巻きながら凌ぐ。この後も、岩場と倒木ミックスの笹尾根歩きが続き、ピッチが伸びない。
でも、筒上から岩黒、バックに瓶ヶ森の稜線展望やアケボノとヒカゲツツジのコラボ、山系の特徴である、ブナと笹の美しい稜線など、ブッシュ歩きなりの楽しみは堪能できた。
14:40でっかい檜を横目に、大冠岳直下の最低鞍部に到着。「ここから西南西方向に下ればスカイラインだよ。」と、おば様が教えてくれた。
ザックをデポしてすぐ、冠岳、西岩峰へのピストンに出発する。大冠岳は急登でもピークまで10分弱。大岩を抱く檜の横が最高点らしかった。そのまま西に振り、岩場を巻いて冠岳へ向かう。振り返ると大冠岳の頂部の岩場は結構、でかい。
この間は道というより、灌木と岩の間の人が通れそうなところを無理やり通る。一度、コルに出て少し登ると針葉樹に囲まれた冠岳山頂だった。3~4㎡くらいの平坦地。しかし、ここで終わりではない。スカイラインを眼下に望む西岩峰がまだ残っている。
実はこの約100mが一番厄介だった。針葉樹の巨木と広葉樹灌木帯を縫って、岩場が続く。15分程の柔軟体操のような下りを終えると目の前にスカイラインが現れた。「はぁ~、やっと着いたか。」というのが実感。巨木と小灌木の入り混じった中に岩峰が覗く、標高1,300mほどの低山の末端。アケボノツツジ越しに五代ヶ森を望み、面河渓の亀腹を上から眺める絶景だ。アケボノツツジ生える先端の岩の先は絶壁で、その中途にアケボノの幼木が張り付き、けなげに花を付けていたのが印象的だった。
15:50最低鞍部に戻って小休止。ここからスカイラインまで標高差350m程を下る。くだんのおばさまは、道は小さな尾根沿いにかすかにあるとのこと。
下り始めて直ぐ、岩塊斜面の灌木帯に入り込み、スピードを上げようがない。地道に岩間を踏み抜かないよう、確認しつつ下る。途中、左の涸れ沢に水が現れたところで対岸に渡って、やっと岩塊斜面が終了。すぐ小さな尾根に乗って、か細い道を行く。16:40、30分程の下りでスカイライン側溝に懸かる、H型鋼2本を連ねた鉄橋を渡った。
このルートは、笹ブッシュと言っても、筋が良い。先日、歩いた五代ヶ森のような、クロズルに代表される蔓類に進路を阻まれることもなく、長尾尾根(長尾歩道)のように延々と茨の道を歩くこともない。灌木群と笹という、シンプルな組み合わせ。高さもせいぜい腰までで、胸まであったのはごく一部だ。それなのに時間を要した原因は、やはりルートを通してあった、岩場と倒木の存在だろう。切り払えば進める蔓や茨と違って巻くしかなく、時間と労力を必要とした。
さても、クロスバイクでスカイラインを走るのも久しぶりだったけど、ここの舗装道は走りやすい。金山谷橋への帰路がなかなか快適なランになる中、笹ブッシュと岩場ミックスのお山が終った。