黒森山から沓掛山へ ― 吉居集落から古の笹ヶ峰参詣道を歩く

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黒森山から遠く笹ヶ峰の稜線を望む

 葉月8月、立秋とは名ばかりの猛暑から中旬には早くも秋雨前線? ジェット気流の蛇行に北寒気の流入、弱太平洋高気圧で晴れる要素は皆無。この気分屋天気にデルタ株蔓延がオンでは、お山は月末までお休みせざるを得なかった。  四国の片田舎で新コロナ感染が百人/日を超える事態は尋常ではないし、マスクと消毒用アルコールという、庶民の防御策ではもはやどうにもならないレベルとあっては、自宅に蟄居するしか…。 それでも、やっと天候の回復した月末、ウイークデイを選んで、人に絶対会わないだろうと思える山歩きにトライしてきた。

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 今回のコースは、かつて笹ヶ峰(1,859.47m/一等三角点笹ヶ峰の参詣道として栄え、多くの信者が歩んだ道だという。本来は、笹ヶ峰のお山開きも行っている、奈良時代創建の古刹 正法寺(しょうぼうじ/山号:石鉄山往生院)裏から大野山、峰野峰、傾吹傾山経由が正規のコースらしいけれど、平成年間の土砂災害で通行危険となり、同寺のHPにも紹介されている、現在の西条市道・下津池笹ヶ峰線の中途にある、吉居集落からスタートすることとした。

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クロスバイクをデポした新吉居橋先の看板。芒の穂が美しい。

 新吉居橋で一度相棒を下ろし、同市道(工事で通行止中)中途に設けられた仮設駐車場に車をデポ。戻るのにクロスバイクで15分程だった。8時、芒が生い繁って「どうがなりごんげん」の白いプレートがないと道があるとは思えない登山口に足を入れる。初っ端の10m程は、持参の鋸鎌の出番だ。

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参詣道の登山口。夏の終わりとあって芒が繁り、道とは思えず。

 道は最初緩く、檜の枯れ枝だらけ。点々とピンクのテープが付けてあるが、古くて3分の2は地面だ。次第に植林帯のジグザグ道の急登に変化し、息が切れる頃、北東方向へのトラバースっぽい道に変わった。

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登り始めの檜植林帯の道を行く。枯れ枝が積もって人が歩いていない。

 もう歩く人は多くないのだろう、テープはきちんと設置されていて道は明瞭でも足跡はほとんどない。暫く行くと、左手に巨大な岩壁が現れた。高さ20m以上はあるか、のしかかってくるような圧迫感だ。ここのみならず、この山域は巨岩が多い。少し通り過ぎて一服。風が通って涼しく、汗だくの身にはほんまに有難い。

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地形図上にも明確に表記されている岩壁。十分、登攀の対象になる?

 いきなり地面に赤い点。茸はいつも斬新だけれど、こんなところにタマゴタケ幼菌が。すぐ横には成菌も。木陰で涼しく、適当に湿り気もあってよい環境なのだろう。

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可愛いタマゴタケの幼菌と成菌。幼菌には傘に最初、放射状の溝線がない。

 植林帯と広葉樹林帯が凌ぎあう狭間の、緩い傾斜の道を登っていると、樹間から遠く寒風山が一瞬、覗いた。

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寒風山遠望。汗だくの登りに一服の清涼剤だ。

 10:00、この辺りからジワリと道が急に、そして荒れ具合が一段アップ。何本かの小沢源頭を巻きながら高度を上げるようになる。木漏れ日の中、なんの変哲もない樹林帯歩きで楽しみがないので、途中の変な形のサルノコシカケで遊び、日本特産種カンタロウ(シーボルトミミズ)をからかったりしながら歩を進める。

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樹林帯の中の明瞭な道を行く。細枝にしがみつくサルノコシカケとまだ若いカンタロウ

 11:20冒頭の正法寺正規ルートと道が交差したところに出る。正規ルートの方が綺麗な道だけれど、ここで小さな尾根を辿る道に入る。明るく、灌木の広葉樹林帯で歩き易い道だ。10分程で1,507m独立標高点に着く。

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合流点。右下が正規ルートらしい。左上に延びる稜線道に入り、広葉樹林帯を行く。

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1,507m独立標高点。広葉樹林に囲まれた静かな山頂だ。

 境界杭以外何もないのでそのまま下り始め、5分もいかないうちに、最初のお目当ての場所、堂ヶ成(堂ヶ平とも書くが、権現様の石彫文字に合わせた。)だった。緩やかな傾斜のついた、ほぼ平坦に近い場所で、気持ちの良いところだ。

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堂ヶ成の二体の権現様と道標。名前のとおり起伏の緩やかな開放感のある所だ。

 大きい広葉樹に囲まれて、二体の権現様が仲良く、鎮座。正面から見て左に堂ヶ成大権現、右に沓掛大権現。一番新しいお寺さんの参拝は、どうやら平成末から令和元年の頃のようだった。同寺HPでは一体約120kg。これを二人ずつでここまで担ぎ上げるとは、信仰の力の大きさとそのご努力に頭が下がる思いだった。

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正面から見た二体の権現様。右では堂ヶ成、沓掛と石彫り文字が読み取れる。

 権現様から桜平橋への道と合流する、三叉路道標まですぐだった。気持ちの良い登りで、途中、カバイロツルタケ?の見事な成菌のお出迎えもあった。今日は「食菌が多いね。」と話しながら行く。

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登りの途中で出会った、カバイロツルタケと思われる見事な成菌。

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桜平橋や辻ヶ峰方面へのルートとの合流点にある、三叉路道標。

 予定より少し遅れ気味ながら、12:30黒森山(1,678.4m/三等三角点 黒森)山頂。「ほぼ20年ぶりか。変わってないなぁ。」と思いながら、昼食の準備。期待していた二ッ岳方面は、湧き上がってくるガスに阻まれて展望できなかった。前回同様、時間的に少し遅く、残念だが致し方なし。

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黒森山山頂。ほんまにお久しぶり。今回も展望がなかったのは残念!

 ガスが出てきて展望は望み薄になったので、笹ヶ峰はさっぱり諦める。その分、山頂でゆったりコーヒーブレイク。

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雲の中にちょっぴり覗いた赤石山系 と ガスに浮ぶ沓掛山

 汗も引いたところで、沓掛山へのトラバース道に入る。呆れたのはテープ類の多さ。進行方向左側は切れてるから、気持ちはわかるが、雰囲気というものが…、多すぎと辟易した。でも、道は稜線通しで趣があるし、マルバマンネングサの覆う苔むした大岩や落葉とシャクナゲを縫う巨岩道と、飽きさせないルートだった。

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なかなか良い雰囲気の沓掛への稜線道。赤テープが多すぎるのが難点。
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マルバマンネングサ満開の大岩 と 巨岩を縫う落葉とシャクナゲのロード

 14:00最後の急登を登り切って、地味な沓掛山(1,691m)山頂。もう芒が穂を出し、お山は秋色だった。正面に見えるはずの笹ヶ峰は、まだ頑張っている入道雲とガスの中にお隠れ。しばらく待ってみたけれど、この時間ではもう無理だわと諦める。

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登り途中の終わりかけのリョウブの白花 と 最後の急登を振り返る。

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沓掛山山頂。何処から見ても立派な山容の割には、ひっそりとした山頂だ。

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入道雲湧く笹ヶ峰方面。上空は美しい紺碧の空だった。
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アキノキリンソウとタカネオトギリの共に黄色いお花。晩夏とあってほとんどお花はなかった。
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芒の穂が美しい下り、もう秋真っ盛りの様相だ。右、沓掛山を振り返る。

 帰路は、丸山荘への分岐から宿へ直接下り、林道をただノコノコ歩くのも嫌なので、下津池登山口へは降りず、途中から旧道を使った。最後、右手の小さな沢と並行する道を、沢音に涼味を感じながら下った。

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宿の道標 と 岩に腰かけている(ような)愛嬌のある檜の大木。

 参詣道は荒れてはいたものの、道自体は明瞭で雰囲気もよく、気持ちの良い道のりだった。久しぶりのお山で調子はいまひとつだったけれど、行動中、幸い?人に会う(猪一家には遠く面会したけれど…)こともなく、大過なく歩き通すことができた。晩夏の稀な訪問者をご加護頂いた?二体の権現様に厚く感謝である。

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新吉居橋から望む、黒森山から沓掛山への稜線

 

 

夏、瓶ヶ森 古の鎖道を行く

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ガス走る氷見二千石原

 瓶ヶ森女山/二等三角点 亀ヶ森/1,896.22m)は、隆起準平原の名残といわれる、広さ約50~70ha(推測)の広大な笹原が特徴のお山だ。その笹原は、広さが麓にあたる伊予国氷見村(現在の西条市の石高2,000石に相当するとして、氷見二千石原(ひみにせんごくばら)と呼ばれている。                                                 ここは、男性的な山容の石鎚山とよく対比され、たおやかな山容に加えて、お花類も豊富な山上の別天地。いわば雲上の楽園だ。 

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瓶ヶ森・主要部分の拡大図(縮尺:5000分の1)

 実は、山頂へ向かう中途の、避難小屋まであと5,6分のところに立っている道標が、以前から気になっていた。何故って、女山から男山に至る稜線の方向に向いている道標はまれで、しかも「鎖道経由男山」と記されているからだ。そして道標の先には、かすかに道らしきものが…。

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瓶ヶ森避難小屋への道中途にある道標。前々から気になっていた。

 二万五千分の一地形図を確認すると、この道標から尾根道のある稜線に向かって、ほぼ一直線の登山道が載っているけれど、現実にはない。過去、あったのかもしれないが、旺盛な笹の成長圧力の前に消滅した可能性も否定できない。

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避難小屋手前にあった、ナンゴククガイソウ。あと少しで満開だ。

  当初、予定していた山行が悪天と雷様に遠慮もして中止になり、幸いなことに、この二点を確認する時間を取ることができた。 瓶ヶ森林道を走って、下駐車場に車を置き、のこのこ氷見二千石原を横断する。降ってはないものの雲は低く、ガスも走って視界はあまりよくない。でもまぁ、初夏7月のカンカン照りは避けられるので、贅沢は言えないと思う。 8:50、例の道標に着いて一服。 以前、すぐ先の路傍の岩に紙コップの水と紙皿の白団子がお供えされているのを見つけ、修験道に関係する場所なのかと思ったのを思い出した。そのすぐ近くだったとは。 

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お供え物が置かれていた岩。登山道のすぐ脇だ。

 昨晩降ったらしい雨でまだ乾ききっていない笹原を行くので、雨スパッツと雨具下を履く。9:00出発。笹の間に足を入れればかすかに道が…という、踏分道に踏み込んだけれど、案の定、2分も進むと消えてしまった。周囲のダケカンバの灌木帯を抜けてくる風は涼しく気持ちが良い。けど、ルートらしきものの痕跡は全くない。

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道標の示す、鎖場経由男山への入口。かすかに道らしきものが…。

 予想通りとはいえ、仕方なく、ほぼ正面に見える大きな灌木交じりの大岩を目標に定め、腰から胸辺りまである笹原の斜面を登る。傾斜は緩くあまり苦しくはないが、足元が悪い。笹の間に岩や枯木・倒木の類、小沢の源流が隠れ、波打って平坦でもない。でも、ブッシュ歩きではよくあることなので、一歩一歩慎重に足を運ぶ。 

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ガスで霞む、これから行く道なき道 と だいぶん近づいてきた大岩(右側)

 道標から稜線まで標高差120m程、大した登りではないので、気は楽だ。 30分程で灌木に覆われた大岩の下に着く。思ったより大きく、満天星やミツバツツジが群生している。

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灌木の生い茂る大岩。近くで見るとかなりの迫力だが、鎖はない。

 周辺を見定めて左へ巻くことにする。右側は笹原で障害物はないが、多分、目的の鎖場は見つからないだろう。 灌木帯を身をよじりながらくぐり抜け、胸までの笹をこぐ。風が止まって蒸し暑く、汗が滴った。すぐ奥により規模の大きい一群の大岩群が現れた。高さはないが、年数を経た木々が生い茂っている。「ここ、くさいな。」と思いつつ、近づいてゆくと果たしてありました。巻いた大岩から20分弱、標高は1,815m付近と思われる場所。 

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鎖場全景。灌木群の中にひっそりとあった。訪れる修験者等の痕跡はなかった。
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鎖場近景。鎖末端の大きな輪っかは土に埋まっていた。右は掘り起こした後。
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鎖場に向かって左側の大岩 と 右側の大岩。いずれも圧倒される大きさだ。

 左右に大岩を抱えた、一枚岩の真ん中にV字状の溝があり、それに沿って2本の鎖。長さは、中央にある長い方が10m程、赤茶色に錆びているものの、石鎚山弥山の鎖と同じ品だ。すぐ右にある、短い方は6mくらいだろうか。ただ、こっちの方が古そうだ。鎖の輪っかが小さく、石鎚神社で手すりに再利用している旧品の鎖と同じものではないかと思った。固定のために岩や木に巻き付けられている部分を含めると、全長は視認できる部分の倍はあるだろう。

 どちらも、末端に鎖を登る前に必ず一度地面に落として鳴らす、大きい輪っかが付けられている。弥山のものと共通であることは明らかだ。 

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鎖場上部の詳細。左の大岩が圧し掛かるようにかぶっている。

 しかし、ほとんど登られた形跡はなかった。ともに赤さびて、長い鎖の末端の大きな輪っかはほぼ土に埋まり、その上を木の根が覆っていた(当然、掘り起こして置きましたが…。)

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掘り起こした鎖末端の輪っかのすぐ横で頑張って咲いているアオテンナンショウ。

 この短い鎖場に何故2本の鎖があるのか、疑問だったけれど、いざ登ってみて納得。 鎖のあるチムニー状の溝は、どうやら水の通り道になっているらしく、常に濡れていてヌルヌル、苔も付いている。最初、右側の短い鎖だけだったものの、後から長い方の鎖が取り付けられたのではないだろうか。

 事実、登っていてどうしても両方の鎖を持たないと越えられない箇所があった。ステップが小さすぎて靴先がかからないうえに、滑って踏ん張りがきかず、腕力で乗り切るしかなかった。

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鎖場を登り切って、上から全体を望む。結構、傾斜はある。

 登り切って周囲を確認すると、長い鎖は、下から見て右手の岩に巻き付けて固定。短い鎖はミツバツツジの根元に巻き付けられていた。いずれも半分は土に埋まり、全容の確認はできなかった。

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長い方の鎖を固定している岩 その1
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長い方の鎖を固定している岩 その2
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短い方の鎖は、灌木の根元に固定している。

 紅や白満天星とミツバツツジが茂り、ウラジロモミの針葉樹の一群が囲む、こんもりとした小さな森。周囲から岩場は全く見えない。これではわからない訳だわと納得がいった。

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気分がちょっと和んだ紅白の満天星。ちょうど満開だった。

 鎖場から男山の道場に至る登山道まで笹ブッシュをこいでもすぐだった。 以前に男山から下った際に、ちょっとした踏分道らしき入口のようなものがあり、マークしていた場所にズバリ出た。 

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これから男山へのブッシュ漕ぎだ。右はブッシュを抜け、登山道のマークした場所に出たところ。

 男山で行動食休憩を取った後、少し女山の方向に稜線を進んで、例の道標に下るルートがあるかどうか、GPSで現在地を確認しながら、試しに下ってみることにした。

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男山の祠 と 例の道標への地形図上の道があるべきところ。ここから下降した。

 結論から言うと、これは全くの無駄足だった。まず、経験者なら直感的にわかる、稜線道からの降りるポイントが見当たらない。GPSと地図を突合しつつ、斜面をしばらく下ってみたが、道のかけらもなかった。足場の悪い、腰まである笹の下りだけだ。

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下降中途の岩塊群 と すぐ先にあったコメツツジの大株。2株ともにでっかい。

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例の道標への下降中途からの眺め。右端の赤い立枯ウラジロモミを目標にした。

 ルート探索をあきらめ、避難小屋への道のすぐ上にあって、よく目立つ立枯れのウラジロモミを目標にまっすぐ下った。11:20、例の道標に戻る。雨具下はぐっしょりだったけれど、無事、降りることができた。

  雨予報だったけれど、一度、パラッと来ただけで、結局降らず、ガスの合間から青空ものぞいて、天気には恵まれたといっていいだろう。有難いことだと思いつつ、積年の疑問が解消できて、すっきりした気分で駐車場まで一気に下った。

 

(追補)

今回もショートショートになったので、別の日に撮った瓶ヶ森のお花類等を追加することにした。

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まだお花が残っていた大山蓮華 と 咲き始めたタカネオトギリ

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この時期、至るところに咲いている、ナガバノキソチドリ
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一輪だけ見つけた可愛いイヨフウロ と 男山をバックに満開のバイケイソウ
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地味なお花同士。ホソバシュロソウともうすぐ開花のノギラン
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黄色いお花のコツクバネウツギ と 開花間近かのシモツケの蕾。いずれも花木だ。

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お昼寝してた、小屋住みの青大将。そそくさと居なくなってしまった。
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岩の割れ目に咲いていたイワキンバイ と 風に揺れるイブキトラノオ
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ミヤマモミジイチゴの小さなお花と白いノリウツギ、目立たないヤマシグレ。

 

水無月は花めぐりの旅に

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フクリン(覆輪)ササユリ 笹に似た葉の縁が白くなるササユリの一種。美しい。

 新コロナもあって、しばらく人に会わないであろう、ブッシュ歩きが続いていたけれど、ワクチン接種が始まってやっと2回目の接種も終えた。 季節も6月、標高2,000㍍を下回る石鎚山(以下、「山系」という。)では、さすがにもう暑い。 さらに、恒例、ブトの大群でのお出迎えもある。水が綺麗でないと生きられないとはいえ、オニヤンマくんもなんのその、そのしつこい攻撃はそら恐ろしい限りだ。 これまで何人の、うら若き淑女をお岩さんにしてしまったことだろう(猛 反省。 

 お山はこの時期、お花群が一斉に咲き始める。花もちの良い樹木系ならしばらく観賞できるし、なにより華が…(あたりまえか)。 世に「花の百名山」なる本も刊行されていて、お花めぐりを山行のメインとされる方々も多いと聞く。 不肖、山じいはお花だけを目的にお山を歩くつもりは毛頭ないけれど、この百花繚乱の季節を見過ごすのはもったいないというのも一理ある話。

 で、2021年5月末~6月一杯、誘われるままに、お花めぐりメインの旅を相棒連とともに歩いてきた。 山系の狭い領域で期間も短く、かつ、かなりの独断と偏見でお山も選択している。 近場の皿ヶ嶺(1,278m)に咲くマイナーなお花も含めたので、必ずしもご納得を頂けるようなショートショートにはなっていない。 ご容赦のうえ、お付き合いを願えれば幸いである。

皿ヶ嶺

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ササユリ 6~7月の皿ヶ嶺を代表するお花。凛とした気品と可憐さを兼ね備える。

 松山市内から30分で別世界の風穴に立てるアクセスの良さは特筆もので、夏の避暑をはじめ冬春夏秋、足しげく通うお山に。 タイプは違うが、植生の豊かさは山系では寒風山に匹敵すると思う。 6月は、やはりササユリが代表格。山域全体に点々と群落が続き、標高の関係からやや色は薄いものの、その気品あるピンクは美しい。 日の長くなった最近は、お昼前から夕刻の間に歩き、昔どおりの静かなお山を楽しませてもらっている。

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メコノプシス属 御存知、風穴の「俗称 ヒマラヤの青いケシ」ベトニキフォリア???
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淡いピンク色のベニバナヤマシャクヤク(キンポウゲ科) 儚さをたたえた立ち姿だ。
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(左)もうすぐ山頂だ。緑も濃い。 (右)展望舎(風穴)から道後平野を望む。
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三重県で発見されたイナモリソウ(アカネ科)と センブリのお仲間、アケボノソウ(リンドウ科)
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群生するクモキリソウ(ラン科)と 繊細なオオミヤマガマズミ(スイカズラ科)のお花
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湿地を好むミゾホウズキ(ゴマノハグサ科)と ミズタビラコ(水田平子/ムラサキ科)
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コケイラン と サイハイラン(ともにラン科)林床にひっそりと咲くお花だ、

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梅雨時にひときわ目立つ橙赤色のヤマツツジ(ツツジ科)皿ヶ嶺に多い。

東稜~北岳

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快晴の北岳山頂から満開のツクシシャクナゲ越しに弥山を望む。

 石鎚山という山名は、弥山、天狗岳(1,982m)、南尖峰の総称で一般的に使うことが多いけれど、三等三角点石鎚山のある北岳(1,920.94m)を含める例もある。 久しく通った東稜は、これだけトレースが明確になるともはや一般道に近いレベル。 ただ、落石はあるし、最後南尖峰に這い上がる際も、中間に枯木の立つ岩場はルートではなく、左側の中沢沿いに登るのが本来だ。 先人は安全なルートをきちんと開拓していて、感謝にたえない。

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東稜中途から瓶ヶ森、すぐ裏に笹ヶ峰 遠く赤石山系を望む。

 反対側の二ノ鎖元から弥山に至る巻道は、階段が整備されて歩き易い。 斜面に張り付くお花群を撮るのにすこぶる好都合だし、ツクシシャクナゲの美しい北岳やユキワリソウの咲き乱れる西ノ冠岳お花畑もこの時期は見逃せない。

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南尖峰先の墓場尾根を行く。やはりここは秋が本番。遠くスカイラインも。

 6月は、上旬にはシャクナゲが終わり、花期の長いユキワリソウやミヤマダイコンソウ、山頂付近のシコクイチゲなどの、草花系に中心が移ってゆく。 

(前半)

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ツクシシャクナゲ(ツツジ科) 5~6月の山系を飾る主役だ。特に咲き始めは色が濃く、美しい。

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コイワカガミ(イワウメ科) ラッパ形の花冠がかわいい、アルプスでも常連のお花。
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濃い黄色のキバナノコマノツメ(スミレ科)と 見過ごしてしまいそうなコヨウラクツツジ(ツツジ科)

(後半)

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天狗岳よりガス湧く南尖峰 と 北壁の絶壁に張り付いて、けなげに咲くミヤマダイコンソウ
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シコクイチゲ(キンポウゲ科)の大株 と 今年も咲いてくれた小株。盗掘もあって随分減った。
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可憐な ユキワリソウ(サクラソウ科)と 四国が南限のミヤマダイコンソウ(バラ科)
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ツマトリソウ(サクラソウ科)と 米粒ほどの小さいお花のコメツツジ(ツツジ科)
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咲き始めのミヤマカラマツ(キンポウゲ科)と 赤い球形の小さな実がなる マイズルソウ(ユリ科)
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赤の目立つベニドウダン(ツツジ科)、白いナナカマド(バラ科)と地味なウスノキ(ツツジ科)のお花。

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連れ立って仲良く咲いている ミヤマダイコンソウ(バラ科)と ユキワリソウ(サクラソウ科)

稲叢山(1,506.2m)、寒風山(1,763m)

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まだ若い大山蓮華の株。 白いお花 と 特徴のある大きい葉が印象的。

 このお山はともにアケボノツツジも美しいが、なんといっても大山蓮華であろう。 6月に開花するこのお花の名は、その形から来ているらしい。 その純白の姿や枝ぶりの格調の高さ、馥郁とした芳香に加え、やや下向きに開く気品といい、雌しべを取巻く雄しべの赤い葯の強いインパクトといい、本邦木花中の名花といって良いと思う。               (注)葯(やく)  雄しべの先端の花粉を持つ器官をいう。

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山頂の稲叢大明神を祀る祠(後ろは三角点) と ロックヒル式の揚水ダムである 稲村ダムを遠望。

 稲叢山は樹林帯で歩き易く人に優しい道だけれど、寒風山の群落への道は足元が悪い。 傾斜がきつくて浮石も多く、落石のリスクを常にはらんでいて、本来は経験者のルート。 近年、このお花目的で、ステップも怪しい人々がこの場所に多く見受けられるようになった。 大事なのはいかに安全(周囲の人の安全も含め)に行動したかであって、行ってきたという結果ではない。 お山は自己責任とはいえ、なんとかならないものか…と行くたびに思う。

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大山蓮華(モクレン科)見惚れてしまう美しさと妖しさを併せ持つ、不思議なお花だ。
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正直、何処から見ても非の打ちどころのない、まれなお花。
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近畿と四国地方に分布のコウスユキソウ(キク科)と 花弁の外のピンクが濃いヒメウツギ(ユキノシタ科)
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シロドウダン(ツツジ科)と 咲いたばかりのギンリョウソウ(イチヤクソウ科)もあった。

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岩壁の割れ目に張り付いて花を咲かせた ユキワリソウ(サクラソウ科)

番外編

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縦走路横に咲いていた ヤマボウシ(ミズキ科) この季節の代表的な花木だ。

 6月は梅雨の季節。お山ではブトの季節。湿気の高いこの時期、休憩でもすれば、たちどころに大軍が押し寄せてきて、逃げ場もない。 もう刺され慣れしてしまったけれど、その渦中でも撮るだけの価値のあるお花もある。

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季節の移り変わりは早い。夏の貴重なお花、夏椿(ツバキ科)がもう…。

 本県レッドデータブックⅠBにランクされるクサタチバナだ。 車形の花冠に五つの白い花弁、清楚でほのかに香る。立ち姿に気位を感じ、木花を大山蓮華とすれば草花の最高峰の一つといって良いと思う。 高知県立山(1,708m)の群落が有名だけれど、山系にも株数は減ったものの、ポツポツ見受けられ、梅雨時のひそかな楽しみの一つになっている。

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 凛とした、清楚な立姿が美しく、大山蓮華ともども、芳香があるのが嬉しい。

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クサタチバナ(ガガイモ科)名は、タチバナの花に似ていることに由来する。
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星形で目立つ ヒメキリンソウ(ベンケイソウ科)と イワタバコ(イワタバコ科)の新葉。

 

二ノ岳 ― 石鎚山展望台の低山歩きを楽しむ

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二ノ岳への稜線上からの石鎚遠望、手前は成就社。

 平年よりめっちゃ早かった、梅雨入り。つかの間の梅雨晴れとなった日曜日、二ノ岳(にのだき・1,156.4m)から菖蒲峠に至る稜線を歩いた。新コロナの蔓延防止措置も解除され、気分的に少し楽になったものの、マスクと消毒用アルコールは依然、手放せない。お山はとにもかくにも人のいないコース。要らぬ接触を減らすしか…。

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 石鎚登山ロープウェイのある県道12号線は久しぶり。高瀑行とお正月の石鎚詣以外、ここはほとんど走らない。林道の通行止や新コロナもあって、なんと1年半ぶりだ。今回のお山は、ロープウェイに乗ると瓶ヶ森方面の正面に見える。加茂川に向かって絶壁となっている斜面がいやでも目に入るので、皆さん、よくご存じだろう。 

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県道12号線から二ノ岳稜線を望む。峨峨たる山容が登高意欲をそそる。

 まずは、下山口の東之川にクロスバイクをデポ。取って返して、登山口となる細野集落への入口、細野バス停横の路側帯に車を止めた。車道よりバス停からの歩道の方が近道になると思ったが、道はもう人もずっと歩いてなくて崩れ放題。しょっぱなから手痛い洗礼だった。

 7:40細野集落で草刈り中のおじさんと話す。「あんなとこ、よく登ってきたね。」と呆れられる。「もうこの集落も6人しか住んどらん、皆引っ越していった。」と寂しそうな表情だった。「気ィつけて行きなさいよ。」と温かく見送ってもらって、石鎚三十六王子の参道に入る。 

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細野集落・両社宮の参道、もう…。糊ウツギの花と石鎚三十六王子参道入口

 三碧峡に向かってずっと巻くだけの参道に竹林のところで見切りをつけ、面倒なので、送電鉄塔に向かって標高差100m弱を直登する。8:10送電鉄塔(川内幹線№58-59)。路肩のエゴノキが丁度満開で、そこはかとなく香る白い花が美しかった。

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送電鉄塔、左上のエゴノキが満開だった。

 ここから先、ルートはない。杣道なのか、獣道なのか判然としない、うっすら道の急登をひたすら登らされるけど、下草のない植林帯。なんの抵抗もなく20分程で四等三角点 細野(標高(以下、同じ。)527.3m)に着いた。やっと二ノ岳への縦走スタートだ。 

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うっすら道の急登に汗がにじむ。四等三角点 細野、展望はない。

 檜の植林帯と断崖との狭間の、灌木帯に近い広葉樹の稜線を歩く。倒木をぬって植林巡視路か獣道か、はっきりしない踏み跡をたどり、小ピークの乗っ越しの続く、緩い単調な登りだ。結局、二ノ岳山頂までずっとこのパターンだった。たまに県道12号線やこの先歩くピークを望めたが、この高度なので展望はない。

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途中の目印になる枯松の大木 と 稜線から県道12号線、行先のピークを望む。

 9:45ヘキチョウさんのブログにあった、苔むした大岩が現れる。たおやかな尾根筋に突然現れた関所のよう。一応、右側のチムニーっぽいところを上がってみたが、一番上に浮いた岩が乗っかっていて、越えられない。仕方なく、戻って左側を巻く。 

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大岩の上部。でかすぎてカメラに収まらない。

 11:05 四等三角点 前田(975.1m)を通過。この三角点、灌木に隠れて判りにくく、小ピークから少し戻らされた。

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四等三角点 前田 もうここまで来れば二ノ岳山頂は指呼の間だ。

 風が通って稜線は涼しく、差し込む光も心地よくて、なかなか快適だ。この辺りから地滑りの影響なのか、ところどころ二重稜線が現れるようになった。もう、山頂まで標高差200mを切って、すぐ着くと思い、気持ちの良い場所を選んで大休止する。 

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明るい二重山稜の道 と 木の根っ子バリバリの登り。右手は切れ落ちている。

 正午前、二ノ岳山頂(三等三角点 長滝)に着く。気温18℃、何の変哲もない灌木の中のピーク。恒例なのか判らないが、プラ扇子を広げ、記念撮影。展望は全くないので、お昼を前田峠で摂ることに決め、すぐ出発。

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二ノ岳山頂。三等三角点 長滝の名物?プラ製扇子。何でここにあるんだろう。

 この先、300m程ほぼ平らな水平道で、二重山稜や小さな岩場、美しい新緑の広葉樹林が次々現れて、なかなか飽きさせない。

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またまた二重山稜が…。新緑美しい樹林帯と苔むした岩場。涼しくて快適だ。

 峠に向かっての下り始めだけ少し道が不明瞭だった。途中の岩峰から、瓶ヶ森や大森山、岩黒山の稜線等が綺麗に望め、しばし堪能させてもらう。今日初めての好展望だ。 

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二ノ岳を振り返る。下って初めてお山の全容が見えるなんて…。
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瓶ヶ森遠望と大森山、岩黒~筒上への稜線。石鎚は二ノ岳の陰で見えなかった。

 前田峠は、明治30年11月と彫りこまれた石塔と首なし地蔵さんが鎮座。昔は峠越えの人で賑わったであろうことを彷彿とさせる場所だった。スパを茹でてボロネーゼの昼食。ここもいい風が通る。涼しいし、なにより静かや。食後のブラックコーヒーでしばし寛ぐ。

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しっかり造られた石組に立つ、前田峠の石塔と首なし地蔵。

 たっぷり休んで、13:15高森(1,369.6m)分岐に向け、標高差400m弱の登りに取り付く。山容は相変わらず植林帯と広葉樹の灌木帯でも、これまでと違って、道ははっきりしている。

  稜線通しのやや急な登りを1時間頑張って、少しナルになった分岐に着く。赤テープだけがそれと示していて、他はなにもなし。ザックをデポしてサブザックひとつですぐピストンに出発。人が歩いていないのが歴然でも、道が悪いなりに踏み跡は明瞭で、アップダウンの多さも気にならなかった。

 途中、寒風山から笹、沓掛に至る稜線や瓶ヶ森もくっきりと浮かび上がって見える、格好のスポットがあり、一服の清涼剤になった。

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寒風山(右)から笹ヶ峰(中央)と沓掛山(左)の美しい稜線。

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1,369mピーク と 後方にそびえる、瓶ヶ森と西黒森。

 20分程で高森(三等三角点 三ッ森)に着く。かなり広い山頂で、新緑の樹間越しに流れる雲が綺麗だった。

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かなり広い高森山頂(1,369.6m/三等三角点 三ッ森)と樹間を流れる雲。

 ピストンから戻り、明瞭な道を稜線通しで菖蒲峠へ下る。下り始めて直ぐ、注連縄が掛けられた樅の大木に出会う。根元に蔵王権現らしき像も。一応、修験道のなにかなのだろうか。それなら、お札とかありそうなものだけれど…。

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注連縄の掛けられた樅の大木。根元に小さな像が見えるが、それ以外、何もない。

 首をひねりながら一直線に下り、石のお地蔵様の裏から峠に15:40降り立った。蔭地林道は草ぼうぼう。昔、林道を車で走った頃の面影は全くなかった。

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菖蒲峠のお地蔵様 と 東之川への下降点。右上にお地蔵様がある。

 写真を撮ろうと踏みだしたら、足元からヤマドリが飛び立って、雛が四方八方に逃げ惑う、ワヤクチャな事態に。しょうがないので、一羽だけ帽子に入れて写真を撮り、すぐ放す。近くで母鳥が睨みつけていて、今にも襲われそう。この世界でも「母は強し」だ。おおこわ…。 

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瓶ヶ森へのルートを示す道標 と 帽子の中のヤマドリの雛。可愛いわ。

 東之川への下りは、入り直後が不明瞭で、慎重にルートを選ぶ。しばらくすると一定間隔でテーピングが現れ、集落に出る直前まで続いた。途中の標高1,000m付近の、路が南に屈曲するポイントには鉄製の道標もあり、非常に的確だった。しかし、道は枯枝や倒木が散乱し、人通りがないのは歴然。無理もないか。

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標高1,000m付近のしっかりした道標。東之川と瓶ヶ森の記載がある。

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石鎚山を樹間から展望する。絵葉書みたいな1枚。

 石鎚山を遠望しつつ一定のピッチで下って、40分程で集落に出た。

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東之川手前の集落跡の石組 と 下山口。石畳の階段だ。

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東之川集落のメインストリート。左端にデポしたクロスバイクが見える。

 ヘキチョウさんのご主人と同じ場所にデポしたクロスバイクで細野バス停まで戻る。下り一辺倒で、下谷から下流は舗装も良く、凄く快適だった。ブッシュ歩きを想定しながら、ほとんどそれらしいものはなく、少し期待外れでも、それなりに楽しめたお山が終った。

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成就社から石鎚山、大森山、岩黒山へ連なる、雲美しいスカイライン。

 

笹倉から冠岳へ ― 2021GW最後のブッシュ歩き

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山毛欅と笹、石鎚山系の典型的な尾根筋の景色だ。

 晴天の少なかったこのGW、新コロナの蔓延防止措置適用で、平地での外出は極力、手控え。お山も同様に、人に会う確率を最も減らせる、超マイナーコースを選択するほかなかった。もともと人嫌いの傾向、強いだろと自嘲しながら、今回は石鎚スカイラインを走るたび、気になっていた冠岳を歩くことに。途中にある、ユニークな山名の融界ノ森(1,615.04m)にも寄ってみたかった。

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 地形図を読むと、同スカイラインは、冠岳隧道の先から笹倉登山口のある金山谷を渡る橋までずっと緩い下りだ。下山時のクロスバイク活用にはもってこいの条件、これを使わない手はない。で、隧道土小屋側出口にデポし、車を笹倉登山口へ。7:30、先行の4人パーテイを追うように出発。下り坂予報だがいい天気だ。 

 ネコノメソウやサイゴクサバノオが茂る小沢横から入山。道すがら先行パーテイとお話ししたら、同じコースを歩く予定と判り、同行することに。道沿いの樅や山毛欅、ハリギリの大木群に挨拶しながら、ゆっくりめのペースで9:30笹倉湿原。先日、半日スカイラインを通行止めにした雪が、ウマスギゴケ群落の一画に残っていた。白と苔緑の美しいコントラスト。

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残雪の笹倉湿原・二景

 10:20、丸笹山から筒上山に至る、稜線に上がる。古希越えのおば様を含む二人の女性陣がすこぶる元気、こりゃ体力あるわと舌を巻く。お聞きすると、愛媛・高知県境のブッシュの山々を歩き通している大ベテランだった。道理で強い訳やわ。笹ブッシュのコース取りも堂に入ったもので、単独で踏破予定だった小生には、正直、有難かった。 

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愛媛・高知県境の稜線。広葉樹の灌木帯と笹ブッシュだ。

 県境にそびえる1,614mピークを目指す。稜線は腰までの密生した笹ブッシュ。おば様の助言に従って、密度の落ちる、愛媛県側の斜面を歩く。山毛欅主体の広葉樹灌木帯に笹が混じり、道はないようであって、比較的歩きやすい。でも、地形図に出ない微妙なアップダウンが多く、遅れ気味のメンバー待ちもあって、小1時間近くかかった。

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1,614mピーク(右手)と高台越へと続く県境の稜線。

 高知県椿山(つばやま)集落に下りる高台越へ続く県境の稜線がくっきりと浮かぶ。ただ、ピーク手前から下る、稜線への入口が現場に立ってみると不明瞭で、ピークから南に延びる別の支尾根に入り込みやすい。「要注意なのよ、このポイントは。」とおばさまがのたまう。確かにガスったり、疲労時だと間違えやすく、納得する。 

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1,614mピーク先から筒上・手箱方面を望む。

 ピークから融界ノ森まで直線距離は1.5km弱だが、意外と時間がかかる。うっすら道が特徴のない稜線を走っていて、道迷いはほぼない。けれど、小ピークが連なるアップダウン、薄いが腰ほどの笹ブッシュや倒木に加え、岩場が頻繁に現れる。ピッチを上げられず、登り下りや高巻き等で、思った以上に時間を費やした。

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稜線から県境の1,584mピークとそれに連なる峰々を望む。良い眺めだ。

 時に現れる、ビューポイントや残雪、アケボノツツジ、ヒカゲツツジの競演もあり、それなりに楽しい尾根歩き。

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まだ残っていた雪 と 樹間から望む石鎚山南尖峰
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目指す融界ノ森 と 1,614mピークを振り返る。
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お花が降雪で傷んでいた、道中のアケボノツツジ と 満開のヒカゲツツジ。

 11:50樅の大木が3本連なる笹と岩場横で昼食。パーテイがばらばらに個食する光景が面白く、こりゃ単独行では味わえないわ。

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お昼を摂った場所にあった樅の巨木。稜線の強風に横に延びている。

 一見、美しく見える山毛欅の広葉樹と笹の織りなす稜線を進む。この情景は上越国境のお山と樹木を除き、相通ずるが、向こうはこんな岩場の連続はまれだ。

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気持ちの良い風も通って、涼しい稜線を行く。

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時には、こんな崖に近い岩場も。右側を巻く。
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こんな岩場が頻繁に出て来て、行く手を阻まれた。

 トレースするのは大変でぶつぶつ言いながら、薄い膝丈の笹の急登を凌ぐと、融界ノ森だった。13:30。そこそこ広い平坦地で三角点周辺は刈り払われていた。明るいが、地味な山頂。鬱蒼とした森かと想像していたが、当てが外れた。南尖峰を遠望しながら小休止。行程の三分の二を来たが、ちょっと時間がかかり過ぎてるわ。 

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融界ノ森山頂 と 筒上から岩黒山の稜線。左端奥に瓶ヶ森雌岳が覗く。

 ここまでずっと西に進んできたが、北北西へ進路が変わる。下り始めて直ぐ、やや傾斜の強い岩場。右に左に巻きながら凌ぐ。この後も、岩場と倒木ミックスの笹尾根歩きが続き、ピッチが伸びない。

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縦走中途で出くわした石門。筑波山の弁慶七戻りの石門にそっくり。

 でも、筒上から岩黒、バックに瓶ヶ森の稜線展望やアケボノとヒカゲツツジのコラボ、山系の特徴である、ブナと笹の美しい稜線など、ブッシュ歩きなりの楽しみは堪能できた。 

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ここにもヒカゲツツジ&アケボノツツジが。双葉が開きかけた山毛欅の実生株

 14:40でっかい檜を横目に、大冠岳直下の最低鞍部に到着。「ここから西南西方向に下ればスカイラインだよ。」と、おば様が教えてくれた。

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檜の巨木 と これから向かう大冠岳方面。ブッシュでよく見えない。

 ザックをデポしてすぐ、冠岳、西岩峰へのピストンに出発する。大冠岳は急登でもピークまで10分弱。大岩を抱く檜の横が最高点らしかった。そのまま西に振り、岩場を巻いて冠岳へ向かう。振り返ると大冠岳の頂部の岩場は結構、でかい。

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石鎚山南尖峰をバックにアケボノツツジを愉しむ。
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大冠岳山頂の岩抱えの檜の大木 と 山頂岩場を振り返る。

 この間は道というより、灌木と岩の間の人が通れそうなところを無理やり通る。一度、コルに出て少し登ると針葉樹に囲まれた冠岳山頂だった。3~4㎡くらいの平坦地。しかし、ここで終わりではない。スカイラインを眼下に望む西岩峰がまだ残っている。

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大冠岳から冠岳へ向かうコル と ひっそりとした冠岳山頂。
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冠岳から西岩峰へ向かう、滅茶苦茶、急な道?というか…。

 実はこの約100mが一番厄介だった。針葉樹の巨木と広葉樹灌木帯を縫って、岩場が続く。15分程の柔軟体操のような下りを終えると目の前にスカイラインが現れた。「はぁ~、やっと着いたか。」というのが実感。巨木と小灌木の入り混じった中に岩峰が覗く、標高1,300mほどの低山の末端。アケボノツツジ越しに五代ヶ森を望み、面河渓の亀腹を上から眺める絶景だ。アケボノツツジ生える先端の岩の先は絶壁で、その中途にアケボノの幼木が張り付き、けなげに花を付けていたのが印象的だった。 

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西岩峰の先端部(先は絶壁だ。)と 左上に石鎚スカイライン

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絶壁の先端部から下界を撮る。小テラスにアケボノが咲いていた。

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岩壁先端部にあるアケボノツツジと撮影時に立った岩(右側)。こわっ!

 15:50最低鞍部に戻って小休止。ここからスカイラインまで標高差350m程を下る。くだんのおばさまは、道は小さな尾根沿いにかすかにあるとのこと。

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最低鞍部からスカイラインへの降り口周辺。おぼろげに道がある。

 下り始めて直ぐ、岩塊斜面の灌木帯に入り込み、スピードを上げようがない。地道に岩間を踏み抜かないよう、確認しつつ下る。途中、左の涸れ沢に水が現れたところで対岸に渡って、やっと岩塊斜面が終了。すぐ小さな尾根に乗って、か細い道を行く。16:40、30分程の下りでスカイライン側溝に懸かる、H型鋼2本を連ねた鉄橋を渡った。 

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最後の最後、小尾根から沢筋に出る。スカイライン側溝に懸かるH型鋼の橋

  このルートは、笹ブッシュと言っても、筋が良い。先日、歩いた五代ヶ森のような、クロズルに代表される蔓類に進路を阻まれることもなく、長尾尾根(長尾歩道)のように延々と茨の道を歩くこともない。灌木群と笹という、シンプルな組み合わせ。高さもせいぜい腰までで、胸まであったのはごく一部だ。それなのに時間を要した原因は、やはりルートを通してあった、岩場と倒木の存在だろう。切り払えば進める蔓や茨と違って巻くしかなく、時間と労力を必要とした。

  さても、クロスバイクでスカイラインを走るのも久しぶりだったけど、ここの舗装道は走りやすい。金山谷橋への帰路がなかなか快適なランになる中、笹ブッシュと岩場ミックスのお山が終った。

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別の日に撮った、スカイラインからの冠岳・西岩峰(右端)と石鎚山遠望

 

五代ヶ森へ  五代の別れ-五代ヶ森-鉄砲石川周回 究極?の笹ブッシュを行く。

 

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五代ヶ森山頂から東温アルプスを望む。

 五代ヶ森(ごよがもり/標高1,713m、以下同じ。)石鎚山系・二ノ森~堂ヶ森間を歩くといやでも視界に入ってくる、南に延びる長~い尾根の盟主となるお山だ。古くは、五葉ヶ森と記したらしい。なんでも山域に五葉松が多かったのが由来とか。ちなみに、1906(明治39)年測量の五万分の一地形図を確認すると、「五代森」と表記されていた。

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裏参道-二ノ森-五代ヶ森-鉄砲石川周回・概念図。破線は計画コース。

 このお山に登るには、①旧面河村大成から林道経由で稜線に取り付き山頂に到る、尾根ルートと②数年前、坂瀬林道(未舗装)の中途から尾根沿いに1,520mの稜線に乗る、坂瀬林道ルートの2本がある。いずれも、地元山岳会のご尽力で開削されたものだ。2年前の3月に尾根ルートから往復した際、坂瀬林道ルートの真新しい案内標識も確認している。

 されど、二ノ森から堂ヶ森に至る同山系の主稜線側からは、アクセスできる道がない。添付の概念図でいうと、鞍瀬ノ頭・五代の別れから山頂までの間である。 

 で、今回、この厄介なルートを歩いてみることにした。派生尾根ではあるが、ずっと気になっていた未踏ゾーンだったし、4月を過ぎると広葉樹の芽吹きで見通しが悪くなるので、タイミングとしてはギリギリだった。それに、新コロナの蔓延防止措置がお四国の当県にまで出るご時世、できるだけ人に会いたくないし…。

 単独行なので周回とし、面河渓泉亭前に車をデポ。初日は、裏参道から二ノ森経由で堂ヶ森避難小屋へ。二日目、いったん五代の別れ(1,800m)まで戻り、稜線を五代ヶ森へ。帰路は三角点(五万ヶ森/1,706.67m)から東側に派生する尾根を下り、鉄砲石川に降り立つコースだ。

第一日(4/20(火)快晴)

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朝日に浮かぶ亀腹の絶壁。オオヤマザクラの老樹がシルエットのようだ。

 7:45面河渓泉亭前で届を出して出発。気温2℃、オオヤマザクラの老樹はすでに青緑美しい葉桜だった。20分程で登山口に着き、石鎚神社の鳥居前で一礼して入山。

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昭和33年建立の古い案内標識 と 裏参道登山口

 2か月前にも歩いた道だが、やはり4月。新葉が開き始め、2月のわび、さびの雰囲気から早春の明るい華やぎが感じられて、趣も変化していた。ミソサザイが追ってくるように盛んに鳴いて歓迎?してくれ、参道脇では山毛欅の実生株を愛でたりと、それなりに嬉しい時間を過ごす。 

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中途のでっかいサルノコシカケ と 芽生えたばかりの山毛欅の実生株

 霧ヶ迫の水場で9:00だった。水量が多い。これだと今夜のお宿の水場も大丈夫だろう。水汲みを止め、顔を洗って汗を拭き、一服する。近くでミソサザイが小さい濃い栗色の体を震わせて、まだ鳴いている。

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霧ヶ迫の水場、右上が登山道。 参道にあったゴミ、まだこんな不心得者がいるとは。

 小1時間ほどで面河山を左に見て巻き、冬道との分岐に着いた。真っ青な空をバックに南尖峰が映える。愛大山岳会石鎚小屋経由で面河尾根ノ頭(三ノ森/1,866m)に登る急登と冬道の尾根通しとどちらにするか、ちょっと考え、予行演習も兼ねて尾根通しを行くことにする。 

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登山道下のクヌギ三兄弟 と 石鎚山遠望、南尖峰がとがっている。

 正午、1,800mの面河尾根ノ頭直下の笹原で昼食を取り、鎚を正面に寝転ぶ。気温20℃ともう初夏並みだわ。ずっと腰までの笹ブッシュで、時に濃いところもあったけれど、この尾根は疎林なので路はなくても、歩き易い。数日前の雪がまだ少し残っていて、喉を潤せたのも有難たかった。

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冬道(面河尾根)点描 と 曲がりくねった根っ子、このお山では多く見かける。
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登ってきた面河尾根。石鎚山南面と二ノ森、左端が目的の五代ヶ森

 頭のピークまで15分程、そのまま通過して13:00には二ノ森(1,929.6m)に居た。すごい好天で、山系の主だったお山や稲叢山をはじめ高知県境のお山まで望め、燧灘も綺麗で満足の一言。 時間はたっぷりあるので、ゆったりコーヒーブレイク。珍しく1時間も大休止し、汗は全て乾いてしまった。

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二ノ森山頂から石鎚山北岳、西ノ冠岳の稜線を一望する。
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面河尾根ノ頭(三ノ森)境界杭 と 登山道の残雪

 鞍瀬ノ頭(一ノ森/1,889m)とのコルで、天場のチェック。縦走路上しかツェルトを張る場所がなく、まぁ止めて正解だったかなと思いつつ、山頂へ。風が通って気持ちがよく、短いけれど昼寝も。

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鞍瀬ノ頭から堂ヶ森への稜線 と 五代の別れへの中途にある穴ぽこ。段々大きくなってる?
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あす歩く五代ヶ森への稜線 と お花だけのショウジョウバカマ、寒そう。

 休憩30分とズボラ山行の典型例みたいな歩きだが、15:30には堂ヶ森避難小屋に着いてしまった。小屋建設時のボッカで、一緒に出発したチェコスロバキア出身の学生さんにまたたく間に置いてゆかれた、苦い記憶がよみがえる。宿泊の準備をして、外の縁台でまた昼寝。今日は誰にも会わず、かつ寝てばかりの一日や。

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今日のお宿、堂ヶ森避難小屋 と 小屋奥にある水場。

 夕刻に保井野から登ってきた、香川から来た若い男性と二人で避難小屋を共にする。月色皓々、真上に北斗七星が鎮座し、この夜は過ごしやすかった。

 

第二日(4/21(水)快晴)

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堂ヶ森山体に懸かる影鞍瀬

 この山行は今日がメイン。カップラーメンのみの貧素な朝食をすすって、5:30出発。気温8℃と妙に暖かい。40分弱で五代の別れ(1,800m)。面河本谷側から吹き上がる風に煽られながら、ブッシュ仕様に態勢を整え、目の前の1,784mピークに向かって続く、細々とした笹中の踏分道に入った。

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五代の別れから鞍瀬の頭を振り返る。右奥が山頂。

 笹は乾いていて、高さも膝下程だが、倒木も隠れていて悪い。それでも15分程でピーク、その先の1,749mピークへの下りもほぼ同じ時間だった。

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朝日の当たる1,784mピーク と 1,749mピーク。まだうっすら道が見える。

 次の1,700mピークへは、西側の樅の樹林帯を避けて、やや左に振り気味に笹ブッシュを下った。この辺りはやや笹が濃いけれど、ピークに向かって不明瞭な踏分道がある。西側に堂ヶ森がくっきりと浮かび、視点が斬新だ。ピークの笹の中に1㎡ほどのちょっとした平らな岩があり、テラスと称して一休みする。 

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進行方向右手の堂ヶ森、後ろの二ノ森 と 1,749mピークのテラス

 この先からは、もう道はない。下り始めて直ぐ、いよいよ最初の関門、大岩の頂部が姿を現した。すっぱり切れてるわ。下調べでは西側を下るけれど、灌木のブッシュの通過が嫌で東側を下る。ちょっと急だけど腰くらいの笹だけで歩き易かった。雪がある時期だと話は別かもしれないが。

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1,700mピーク先の大岩から五代ヶ森方面 と 大岩を振り返る。

 稜線は、水平道に近い、緩い下りに変化。笹は腰から胸辺りまででもやや薄く、樅の木や広葉樹の灌木帯を縫いながら順調に歩を進める。 

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道中の情景。笹ブッシュ と この尾根はいたる所に岩塊が露出している。

 1,650mピーク手前で、やや古い猪さんの寝床があった。たっぷり笹を敷いて暖かそう。

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笹、広葉樹灌木帯の稜線 と 猪さんの寝床。 

 と、すぐに崖に突き当たる。少し周辺を調べてみて、下れそうな東側に巻く。ここで8:00。適度に風があって汗もかかない、ブッシュマンには快適に近い環境だ。

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崖頂部の大岩 と 下りきって崖を振り返る。

 降りきった、疎林の小さなコル(1,650mピークと1,674mピークの間)で行動食休憩。笹もなく、ここも風が通って涼しい。 このコルは「窓」と呼ばれているようで、鉄砲石川林道から坂瀬林道に尾根を越してゆく、坂瀬山上道の乗越(峠)に当たるらしい。正面にそそり立つ二本の岩峰は、真ん中にある急登の鞍部を登る。土が柔らかく滑りやすい。一応、登り口と登り切った先にピンクの目印テープを付けておく。通過した先には、まあまあ大きい岩が鎮座。灌木の間をぬって西側を巻いてゆく。

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大きい方の右岩峰、左の木の根元から登る。右は、それを越えた先の大岩。

 すぐ、1,674mピークだった。広葉樹の灌木が元気な、なんの変哲もないブッシュピーク。でも、下調べでは、この辺りが尾根の核心部。五代の別れから2時間ちょっと。あまりにあっさり終わってしまった。 

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こんなところにコイワカガミの群落が…。人知れず咲いているのだろうな。

 休憩はせず、そのまま1,690mピークに向かう。薄い笹ブッシュの緩い下り、すぐ40m程の標高差を登り返す。植林なのか判らないが、針葉樹帯を通過、下草がなくピッチが上がる。ピーク手前の風倒木の根元の穴に、今度は猪さんのヌタ場があった。いろいろ工夫するもんやなぁと感心する。

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針葉樹、広葉樹の混じった笹ブッシュ を行く。 猪さんのお風呂、ヌタ場。

 8:50、1,690mピーク。笹と若い広葉樹の灌木帯のなだらかなピーク。静かや。少し行くと展望が開け、正面に五代ヶ森本峰が姿を現した。あと少し、でも全然疲労感はない。 

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なんの特徴もない1,690mピーク・山頂周辺 と 目指す五代ヶ森

 笹をかき分けて、若い広葉樹帯を稜線通しで登ってゆく。ところどころスパっと笹だけの空間があり、鎚や二ノ森、鞍瀬ノ頭が望めて、気持ちが良い。

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山頂への中途にあった、印象的な山毛欅の木

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遠く、左から鞍瀬ノ頭、二ノ森、石鎚山、右奥瓶ヶ森と、重鎮のそろい踏み。

 山頂直下の背の低い灌木帯をやや左に巻いて抜けると、あっさり山頂だった。9:30、五代の別れからほぼ3時間。あまり濃い笹ブッシュはなかったなぁと思い返しながら、2年ぶりの山頂は感慨深かった。未踏ルートのトレースも終り、少し早めのお昼にする。枯木のオブジェの西向こうに浮かぶ、東温アルプスの大きな山塊を眺めながら頂くブラックコーヒーは美味しかった。予定より早いので、その分休憩を増やし1時間程、山頂で寛いだ。 

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山頂直下の灌木ブッシュ と 山頂から三角点のある方向を望む。

 下り。鉄砲石川の林道への下降地点、三角点(五万ヶ森1,706.67m/TR35033408601)へは10分程だった。そこだけ笹が刈り取られていたが、道中笹が濃い。降り口には、2年前歩いた際に視認していた、赤の布テープはもうなかった。

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1,706.67m五万ヶ森三角点。周囲は刈り払われ、わかりやすくなっていた。

 だだっ広い尾根は、下るに従って徐々に明瞭な尾根に変化し、濃い笹ブッシュも下りだと早く、1時間程で1,440m付近の尾根分岐に着いてしまった。 

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1,440m付近の尾根分岐にある倒木 と 下る途中から遠望する石鎚山

 実は、この間が今日一番の笹ブッシュだった。濃く、高さも胸近くまで来る。樅や広葉樹の大木の根元に岩塊が介在して足元も悪く、これを登るのはかなり体力を消耗するだろう。時折、GPSを確認しながら、ほぼ勘で下っていると、色あせた赤布テープがポツンポツンと目についた。ピンクのポリテープを適時、ヒラヒラ状に設置しつつ下る。1,500mくらいのところに笹の枯れた一画があり、やや左方向にシフトした。これが唯一の顕著な目印になるくらい、特徴がない尾根だ。 

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1,500m付近にある、笹枯れの一画 と 元気な笹ブッシュの明るい尾根を下る。

 1,440mの尾根分岐は、かなり明瞭で右の尾根に入りたくなるが、ここは左に下る。次第に尾根が細身になり、また赤布テープの残骸が現れる。この効用はメンタル・トランキライザーか。実際、その安心感は計り知れなかった。右手に二ノ森や石鎚が見え、アケボノツツジもこの辺りだともう咲いていて、予定外のお花見となった。

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ピンクのアケボノツツジ と 石鎚山を眺めつつ、下る。

 1,400mくらいから山慣れた人だと直感的に理解できる、うっすら踏分道になった。ここでテープ設置を止め、槇の大木群の中を下る。1,300mで針葉樹の植林帯上限に至り、ここからはピンクや黄色のテープが10m間隔くらいであって、道もほぼ明瞭なものに変わった。

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植林帯上限周辺の状況。写真では判別しにくいが、杣道は明瞭だ。

 12:25、地図上の1,050m独立標高点付近で、右にトラバースする道に出る。ピンクテープも敷設された良い道だ。下調べではまっすぐ下るはずだが、一応、その道を行ってみることに。だが、これに騙された。小沢を一つ越え、20分程で布引滝の上部に出て、まだ巻いている。よくある、尾根を横トラバースするだけの植林巡視道だと確信する。(後日、判明したことだが、この横道は関門遊歩道の猿飛谷前まで通じている、横歩道だった。いらず山谷で一部崩壊しているらしい。ともかく、引き返して正解だった。)

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通過した小沢 と 布引滝上部。浮石だらけだ。

 仕方がないので、布引滝の左手の稜線まで戻り、ルートはないが、そこを下ることにする。鉄砲石川の林道まで標高差200m弱のやや急な下り。ここで万一怪我でもすると窮地に陥る。獣道を使い、ピッチも半分に落として、三点確保の要領で慎重にステップを選んで下った。途中に咲いていたヒカゲツツジの上品な黄色が綺麗で、しばし見とれてしまった。

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もう咲いていた、ヒカゲツツジ。一服の清涼剤だった。

 最後は小沢右岸で林道に合流して13:30、1泊2日の山行が終わった。最後の最後がご愛敬だったが、笹遊びに終始したお山は、明るい尾根歩き中心で、なかなか楽しかった。

 

(あとがき)

 総じて、稜線上の道はないため、ルートファインデイング能力は必須で、うかつに入るコースではない。ただ、笹ブッシュも一部を除いてそんなに濃いとは感じなかったし、岩峰群も巻けば大したことはない。比較的明るい笹ブッシュが続き、経験者は結構、楽しめると思う。

1 面河渓泉亭を起点終点に周回したが、車2台を使用して少人数のパーテイが組めれば、至便なコースも選択できてもっと楽だろう。笹ブッシュの影響を最小限にするには、冬装備はいるが、雪の落ち着く3月頃も狙い目かもしれない。

2 ルートとしては、五代の別れから五代ヶ森へ下る方が楽だと思う。逆コースは、1,700mピークに上がる大岩付近に道中一番の濃いブッシュがあり、その登りはかなりのアルバイトになる。それに徐々に高度を上げていくので、笹の抵抗も大きい。

3 鉄砲石川から五代ヶ森に登るルートは、1,400m付近まで踏み跡があるとはいえ急登の連続で、そこから上は、足元の悪い、濃く深い笹ブッシュの急登をこがねばならず、アルバイト量が半端ではない。体力に自信のない方は厳しいだろう。

4 概念図と記録に記しているピーク名や標高は、コース説明上、便宜的に付与したもので、正式でも正確な標高でもないので留意願いたい。

皿ヶ嶺 ― 冬春夏秋

 まず、お山の名前が一風変わっていて、面白い。

 お山のあらましと山名の由来は、1973(昭和48)年発行の「愛媛の山と渓谷 中予(愛媛文化双書16・以下、「中予編」という。)」に、著者の愛媛大学山岳会 山内 浩会長(当時)が次のように書かれている。

 「松山から見える山で、一般によく親しまれている。三角点の標高は1,270.5mであるが、この三角点のあるところは最高点ではなく、最高点は三角点の約240mほど南にあって、約10mくらい高いので独立標高点(誤差1m)1,281mとしておきたい。(中略)

 皿ヶ嶺の特徴は、何といっても、地学上隆起準平原といわれる平坦面が頂上付近にあることで、北の松山の平野からでも、南の大川嶺の山地からでもすぐ見分けられ、皿という名はそこからきたものであろう。」(注1) 

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皿ヶ嶺・概念図(縮尺二万分の一)

 されど、このお山、なかなか奥の深いお山である。標高こそ里山の類よりやや高い、ごくありふれたものでありながら、中四国でも有数の花の名山。加えて、水楢、栂や欅の自然林に山毛欅もその代替りが見受けられ、植生の豊かなお山でもある。「中予編」は、その魅力をきちんと分析しているので、再び戻ってみよう。 

 「皿ヶ嶺は松山付近では登山者が最も多い山であるが、山岳宗教の山ではないので、よく人が登るようになったのは最近のことである。以前には泉のほとりに小祠があって竜神を祀っていたが、今はそれもなくなってしまった。 ともあれ、皿ヶ嶺は日帰り登山には手ごろの山である。竜神平でも高度は1,150mもある。小規模ではあるが山毛欅の自然林も残っている。隆起準平原でスポーツも可能。水の便利がよくてキャンプの適地であり、夏は暑さを知らぬ別世界。冬は樹氷で飾られ、スキーもできる。山頂からの展望もすばらしい。女子供でも楽に登れる。……などがこの山が人気のある原因であろう。」(注2) 

 今は、竜神平でスポーツやスキーはちょっと難しいと思うけれど、少し歩く時間帯をずらせば、人は驚くほど減り、この当時の静かな雰囲気を十分に堪能することができる。

 一帯は、1967(昭和42)年に、皿ヶ嶺連峰県立自然公園に指定され、皿ヶ嶺はその盟主的なお山である。現在は、標高950m付近の風穴(岩塊の隙間に人間が入ることができないので、「ふうけつ」と読む。)まで車道が通じ、松山市内から30分ほどでアクセスできる、利便性の非常に高いお山となっている。勿論、上林・湧水部落の標高約450mにある送電鉄塔№156の下(通称、「鉄塔下」。)から登る道も残っていて、登山者も多い。

 また、このお山には、諸先輩方の素晴らしいアプローチが諸々なされており、より探求されたい方々はそちらを参照されるとよいだろう。山じいは、撮り貯めた写真を中心にコメントを記して、このお山の魅力の一端をご紹介できれば十分ではないかと思う。

  長過ぎる前置きとなったけれど、「中予編」の冬の情景をお借りして、冬編から入ることにする。

 「皿ヶ嶺はまた、樹氷や雲海が見られる最も手近な山である。初冬のころから、低気圧が通過して冬型の気圧に変わり、北西の季節風が吹いて気温が下がると、低く山を覆うていた雲霧が結氷点以下になっている樹木の枝や草などに凍りつき、風の吹きつける方向に氷の結晶が成長してゆくもので、その原因から霧氷と呼ばれ、結果からは樹氷と呼ばれる。冬、松山から双眼鏡で眺めると、雪とは違うので、すぐ見分けられる。樹氷ができていることを確認してゆけるので、皿ヶ嶺は都合の良い山である。」(注3)

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霧氷輝く皿ヶ嶺の遠望

1 冬(12~2月)

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雪の湧水部落から皿ヶ嶺の霧氷の稜線を望む。

 皿ヶ嶺(ここからは、愛着を込めて「お皿」と呼ぶ。)の冬は、雪の散策が手軽に楽しめ、静謐で落ち着ける場所でもある。積雪量も程々で、竜神平から上林峠を経て八畳敷(天狗の庭)に至る樹林帯の道は、人に出会うこともまれだ。

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竜神平から上林峠に向かう冬路。 限りなく静かだ。

 樅、松等の針葉樹と葉を落とした山毛欅、栂や欅の広葉樹のバランスが良く、霧氷と雪帽子の笹の織りなす光景は美しい。

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稜線を山頂へ向かう。青空が輝く雪に映える。

 また、霧氷に輝く竜神平の山毛欅林も見ごたえがある。

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霧氷の竜神平 愛大山岳会竜神平小屋と右隅に再建された竜神様の祠が見える。
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雪積もる三角点 と まだ残っていたガマズミの赤い実

 最近は、雪遊び目的で風穴まで来る人も増えたが、湧水部落から風穴へ至るアクセス道は、北に面して幅員が狭く、積雪や凍結によるスリップ等の事故(特に、下り)も発生していて、注意を要する。 

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厳冬期の水の元 バンガローが静かに雪の中に佇んでいる。
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雪をかぶった馬頭観音 と 上林峠の法華塔

2 春(3~5月)

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春の竜神平・山毛欅林。 萌え出る時期が一様でないのが面白い。

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シコクカッコソウの群落。お皿を代表するお花の一つといって良いと思う。

 お皿が最も華やかな季節である。水の元から風穴、稜線に至る非常に広い範囲で順次お花が開花し、お花畑が現れるさまは圧巻で、その萌え出る力には圧倒されてしまう。

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イチリンソウ(2)とヤマブキソウ 大群落を作る常連である。
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紅白の山シャクヤクとクマガイソウ
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コイワカガミとエイザンスミレ 赤青そろい踏みのヤマエンゴサク
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カタクリ(植栽)とコフタバラン ノビネチドリの大株(残念ながらこの株は盗掘されてしまった。)
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ツクバネソウ、ラショウモンカズラとトリガタハンショウズル 色とりどりの種類の多さだ。

 時に、春の雪もあるなど、この季節の散策は風情があって楽しめる。

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春の雪にふるえる、エイザンスミレとヤマエンゴサク

 また、足しげく通うベテラン連からお花の開花情報を伝授頂くのも、この季節の愉しみの一つである。

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緑葉と桃色花のバランスの良いシコクカッコソウ、地味でも存在感のあるアワコバイモとヒトリシズカ。
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林床の群落になるルイヨウボタン。目立たないサイゴクサバノオとハナネコノメ
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春の常連、シロバナエンレイソウ、フデリンドウ、コミヤマカタバミ(白花)
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可愛いシュレーゲルアオガエルと越冬個体と思われるヒョウモンの仲間?。シロキツネノサカズキモドキ(茸です。)

 願わくば、散策に当たって、萌え出した新芽を踏むことのないよう、心優しいご配慮をお願いしたい。

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透かし彫りのような、輝く新緑。春の醍醐味だ。
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ケクロモジの雌花と輝くイチリンソウ群落、クロフネサイシンのお花

3 夏(6~8月)

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雲湧きあがる

 お花のメインステージが竜神平から稜線周辺までの領域に移る。

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お皿の夏を代表する、繊細なササユリ、豪快なハンカイソウと豪華なコオニユリ

 風穴から北面を横トラバースして竜神平に至るコースが一番ポピュラーで、傾斜も緩く遊歩道に近いので歩き易い。この季節、家族連れや高齢のご夫婦なども多く、登山者の幅が最も広くなる。

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山なしの実とヤマボウシ(白花、赤花)
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葉に隠れているハガクレツリフネ、ヌマトラノオとオカトラノオ
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濃い緋色のヤマツツジ、薄紫のコバノギボウシ、桃色柔らかいカワラナデシコ
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ツリガネニンジンとイワタバコ。木ではあるが極く小さいコゴメウツギの花

 竜神平は隆起準平原の開放感あふれる空間で、まさに高原の爽快さを満喫でき、素晴らしいの一言に尽きる。

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笹光る竜神平。 緑がまぶしい。
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濃い紫色のタチカモメズル、白地のミズチドリと花火のようなシモツケソウ
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麗人草とタマガワホトトギス、ヤマジノホトトギス

 

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アカショウマ、もう咲いていたアキノキリンソウと白いウバユリ
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ハンカイソウの蜜を吸うカラスアゲハ、透明感のあるミゾソバの花と帽子の塩分を摂りに来たアカタテハ
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綺麗な淡水にすむ唯一の蟹、沢蟹。 雌?のコクワガタとコエゾゼミ
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木に擬態して微動だにしない青大将(目だけはこっちをしっかりと…。)とお皿の主ヒキガエル。

 また、風穴周辺は、インフラの整備に伴って、涼しく快適な環境が好まれ、車でアクセスしてキャンプを楽しむ人も多い。 水の元のソーメン流しの隆盛とともに、この時期は訪れる人が増えて渋滞も発生するなど、その多さにやや辟易気味であるが、嬉しいことに、登山者のマナー向上は著しく、登山道でゴミを拾うことはまれになった。

 ただ、盗掘は止めて欲しいと思う。春編に書いたノビネチドリは木との共生関係でかろうじて生きており、言わば木に守られているような植物。掘った段階で枯れることは約束されている。盗掘した者には子供さんやお孫さんはいないのだろうか。

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冷気湧く風穴
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風穴のヒマラヤ原産の青いケシ(メコノプシス・ベトニキフォリア)と周辺の銀盃草群落、赤花のアップ

 

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緑濃い林間の路、ブナの枯木に生えたハリギリ(枯木倒壊で今は亡失。)と霧にけむる竜神

4 秋(9~11月)

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秋空澄む竜神

 お皿は、松山近郊で手軽に錦秋の秋を味わうことができるお山の一つだ。

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二ノ森~石鎚山、西冠の稜線遠望と伐採跡(ムソグルスキーの庭と勝手に呼んでいる。)から望む道後平野

 植林の多い久万側と違って東温市側は広葉樹が多く残り、美しい紅葉を織りなしている。

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秋陽を浴びて燦然と輝く山毛欅の黄葉

 特に、山頂から竜神平に至る山毛欅の自然林一帯は、笹の緑と相まってなかなか見ごたえがある。カエデ類の紅葉が映える、畑野川から山頂へ至る沢沿いの道や人が少なく落葉の散策路になる、赤柴峠から山頂へのアップダウンの多い道も、秋の一日をゆったりと歩めて気持ちのよいルートだ。

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山毛欅の黄葉-1
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山毛欅の黄葉-2
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山毛欅古木の佇まい と 幹に生えた苔とのコラボ
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お皿の秋を代表するシコクブシの青い花。リンドウにダイモンジソウも。

 竜神平の芒の穂が真っ白になる頃、めっきりと登山者は減り、気温も下がって山毛欅の黄葉が散り終えると、冬に向かって足早に季節が移ってゆく。

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白い芒の穂に浮かぶ山毛欅
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秋の点描

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霧にけむる

 

 (注1) 皿ヶ嶺の標高については、2017(平成29)年発行の2.5万分の1地形図「石墨山」では、三角点は       1,270.7m、山頂1,278mに修正されている。

(注2) 竜神様については、その後、愛媛県山岳連盟の有志の方々のご尽力により、愛媛大学山岳会竜神平小屋の北向いに祠が再建されている。

(注3) 愛媛の山と渓谷 中予編については、1985(昭和60)年に改訂版が発行されているが、皿ヶ嶺に関しては、初版の文章と同様なので、このブログでは初版を用いた。内容に一部不適切な表現もあるが、原文を尊重してそのまま掲載している。 愛媛文化双書刊行会による本書の刊行により、愛媛の自然が広く紹介されるとともに、その理解を深める一助となっていることは、一岳人として誠に有難く、厚く感謝申し上げる。