剣山系・天狗塚~三嶺

 

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しっとりと落ち着いた峠への登山道

 6月も下旬に入り、1か月先の北ア山行のテストランもあって、久しぶりにイザリ峠から三嶺まで1泊2日で往復しました。R32号大歩危から橋を渡って祖谷・剣山方面へ。途中、京上からR439号に合流、この辺りは走りやすい快適ロードです。今回は東祖谷下瀬で災害復旧工事中のためう回路を使いました。東祖谷小から入り、例の落合集落の展望台がある道です。正式名は、国重要伝統的建造物群保存地区 落合集落展望所 という、長~い名前です。ウイークデイなので他にお客さんはなく、正装の案山子さんたちがにぎやかに出迎えてくれました。

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落合集落遠望

  

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正装の案山子さんたち

 このあと、九鬼で西山林道に合流、有難いことに林道はほぼ再舗装復旧されており、楽しい山道走行ができました。

 13:40登山口のイザリ峠着。先着は1台だけでした。曇天で梅雨入りも近いのか蒸し暑く、下り坂の天候も雨具や登山靴等、雨天時のチェックも兼ねての山行なので覚悟の上。14:15出発です。

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1年2か月ぶりの登山口

 稜線通しの登りは、意外に風もあって涼しく、40分程で1,476mピークに到着。降っては来ないものの、ガスが少し走り出し、だんだん粒が大きくなってきている気がします。

 イザリ峠手前、ミヤマクマザサという笹の一帯に出る直前で先着車の5人パーテイとすれ違い。どうやら天狗塚の日帰り山行だったようで、山頂から峠周辺までガスで何も見えなかったとぼやいていました。ここでついにポツポツ落ち始め、雨具上下を装着。急に強くなった吹上風に押し上げられながら峠まで一気に登り切りました。

 16:00イザリ峠。雨で天狗塚ピストンをあきらめ、本日のお宿、お亀岩避難小屋を目指して道を左に振ります。16:05天狗峠(綱付森分岐)通過、ここから先はちょっといやらしい下り道です。ガスと強風で見通しが良くない中、滑らないよう慎重に。風上側に何か動くものがあるなぁと思ったら、すぐ脇に鹿のつがいが立っていました。向こうも全く気付かず、お互い固まりましたが、次の瞬間には跳ねてガス走る笹原に消えてしまいました。

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お亀岩から今日のお宿の避難小屋

 16:30 お亀岩避難小屋着。久々の感慨もそこそこに、濡れた雨具もろもろを干し、銀マットをお借りして寝床設営、夕食を終えると、後はすることは唯ひとつ。お楽しみの焚火が待ってます。

 高知県が設置する避難小屋には薪ストーブが設置(有難うございます。)されていて、この小屋には立派な大型のストーブがあります。学生時代から慣れ親しんだ焚火も最近は沢登りを除いてストーブを燃やす形式がほとんどで、それすら可能な箇所は限定されているのはお四国も例外ではありません。

 この場所は、豊富な薪を供給してくれ、冬は雪崩から守ってくれるウラジロモミ帯が小屋の背後にあるという、素晴らしい立地条件です。

 焚火は、自分がその日燃やす薪は自分で集め、余った分はストックに回すことを原則にしていますが、今日は雨天のため初めてストック分を使わせて頂きました。火を焚きながら飲むビールは格別、心も十分に温まりました。

 夜半、明るいので外に出ると、雨はすっかりあがり、綺麗な月夜になっていました。いつ来てもお山の月見はよいもので、標高は関係ありません。「岳の月われなきあともかくあらむ」(福田 蓼汀)の句がすぐに浮かんできました。本当は涸沢あたりが似合いそうですが、ここでも全くそん色はないと思えました。

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ガス走る三嶺山頂

 翌日も、曇天気味の天気で7:00三嶺に向けて小屋を出発。ザックはデポせず背負います。7:40西熊山、8:00大タオを登り返した先で一服し、8:50三嶺山頂着。ガスがかかって展望はありません。やや時期遅れで咲いていたコメツツジだけ撮って、あっさり山頂を後にします。

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三嶺山頂、運悪くガスに巻かれる。

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まだ残っていたコメツツジ

 帰りも稜線の美しい笹原漫歩。来るたびに新しい発見があってなかなか味のあるルートです。

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たおやかな天狗塚への縦走路

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途中の白骨林帯

 イザリ峠登山口へ下山するルートは、通常は西熊山から小屋方向に少し下ったコルから右に振って、正規ルートの走る尾根の沢を挟んだ反対側の尾根を下り、途中にあるカエデの大木に挨拶して、駐車場に直接アクセスするのですが、今日は天狗塚に寄るために昨日歩いた道を戻ることにします。

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カエデの大木(2018.4月)

 10:48お亀岩通過。11:15イザリ峠着。高曇りで風はなく、ここにザックをデポ。この先天狗塚の山頂まではゆるやかなアップダウンの趣のある道です。11:40のんびりイワキンバイを撮りながら山頂へ。牛の峯が本当に大きいと何回ここに立っても思うのは何故でしょうか。高知県側のはるか下の笹の斜面では、鹿の一団が笹をお食事中でした。

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天狗塚(イザリ峠から天狗塚へ続く登山道から)

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イワキンバイ

 

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牛ノ峯、いつ見てもあきれるでかさ

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笹を食む鹿の群れ(200mmで一杯一杯)

 山頂で少しゆっくりしてからイザリ峠へ戻り、12:20下山開始。樹林帯に入るまでの道は浮石ガラガラでガラ場歩きの格好の練習台です。

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笹の花が咲いていました。

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この辺りは自然の庭園です。

 3人の家族連れ一行とすれ違うとすぐ1,476mピーク。風が通り、気温18℃と涼しいこともあって、一服には本当に良い場所です。13:25登山口に帰着。どう考えても、雨天時のチェックなどではなく、焚火しに来たとしか思えない山行が終了です。

色々あった北ア・奥穂高岳~西穂高岳 (2015(平成27)年)の記録

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ヘリ飛ぶジャンダルム

 例年、お山の紅葉も終盤となる9月三連休前半は、この頃、北か南のアルプスと決めていて、前年に槍平・南岳新道から大キレット・奥穂・吊尾根・岳沢経由で上高地へ抜けた関係から、今年は残る奥穂~西穂のコースを歩くことにし、連休日程の都合上、夜行バス利用の強行軍を強いられるも、新穂高ロープウェイ・西穂から奥穂へ抜ける計画とした。

 ところが である。11日(金)に乗車した夜行バス名古屋行が山陽道で追突事故。12日(土)3:00過ぎ、丸太に乗り上げたような衝撃があってそのまま停車。幸い、けがはなかった。前の車が60km/hの速度で走り、ブレーキが間に合わなかったらしい。

 ここからの共同運航先Mバスの対応が凄かった。さすが東証一部上場会社のグループ企業、レベルが違う。事故現場に7:00着で代替バス手配、折り返し名古屋着9:55、当方に1名専従で高山行の乗継バスを発券カウンター内で他職員が見守る中、自ら予約システムを操作し、即、再手配。その的確さと迅速な処理、なによりバックに在る職員としての質の高さを感じ、正直、企業は人なりを実感する。10:30出発は感謝である。

  けれど不運は続く。今度は東海北陸道で軽四車がガードレールに接触大破していて、その処理渋滞に巻き込まれる。先の職員の努力は半分、水の泡。今日はこういう日とあきらめる。結局、高山BC経由で新穂高ロープウェイに着いたのは15:25。最終便が出る30分前だった。

 急いで、登山案内所備付けのパソコンを借りて天気図をチェック。明日、寒冷前線が長野県を通過することを確認し、計画を白出沢から同コル、奥穂経由で西穂に抜けるコースに急遽、変更。日程に余裕がなくなるけれど致し方なく、登山届を書き直して提出する。

 

 16:00、3時間半遅れで去年同様、右俣林道をスタート。マイナスの仕事で頑張ってくれた職員のおかげで今行動できるのは幸運だったし、今日は日が暮れるまでに行けるところまで行ってツェルトビバークと決める。

 17:30白出沢分岐着。小屋跡の広場に車数台。そのまま樹林帯のゆったりした一本道へ入る。雨天時には小沢になるようで緩い傾斜の比較的歩きやすい道。ビバークサイトを探しながら進むけれど、なかなか適地がない。途中、下山してくるパーティから奇異の視線を受けながら、傾斜も少し出てきた18:30、日暮れ直前でなんとか人一人横になれそうな道の曲がり角のスペースを見つけ、急いでツェルトを張る。スントの高度計は約1,800m、意外と歩いていたようだ。

 

入山2日目。

 13日(日)6:20にビバーク地点を出発。早朝の3:00頃と6:00前に単独行者が横を通り抜けていった。10分程で重太郎橋に着く。橋といっても木を束ねて置いただけの簡易なもの。でも、これで十分。手前右側にあるブルーシート掛けの仮屋は地面が泥んこで昨日、ここまで来ても張れなかっただろう。 対岸に荷を下ろし、少し身支度をする。降ってはいないものの、風と上空はどす黒い雲で覆われ、稜線は大荒れだろうと想像する。今日は白出沢のコル、穂高岳山荘天場までしか行けないし、明日の天候の回復に賭けるしかない。

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重太郎橋

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白出岩切道プレート

 7:35鉱石沢出合を通過。すぐ先の枯沢トラバースからいよいよ急登が始まる。でも、白出沢コルまで標高差約1,000m、稜線近くの天候が少々荒れていても3時間あれば十分、11時前には着けると思うと正直、闘志は湧かない。

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今は使われていないボッカの中継点

 7:50吹き降ろしを遮ってくれる2,300mのコルで行動食休憩。昨日、西穂から奥穂に抜けたという、下山中の富山からきたという、ほぼ同年代と思しきベテラン男性3人組と話す。「前線通過中の稜線は朝から大荒れで、宿泊者は奥穂をあきらめ、ザイテングラートと白出沢の二手に分かれて下山する人ばかりだ。」とのこと。 

 2,500mを超えると、吹き降ろす湿ったガスの影響で視界が20m程に落ちる。雨具上下着用。岩のエッジのすり減り具合を確認しつつ、だだっ広い沢を登る。落石の懸念がまだないのが嬉しい。すれ違う下山者に聞くと「この悪天で、同山荘の助言もあって奥穂行きをあきらめ、下山中。」とのこと。申し訳ないが、当方は登るルートが明瞭になり、有難い。 

 9:20 2,800m地点。雨は時折でも吹き降ろしのガスと強風で5℃前後に温度が下がり、冷気が雨具を通り出したので保温着の重ね着をする。加齢で体感温度の感覚が鈍くなっており、早め早めを心掛ける。休憩中に、同山荘の従業員で名カメラマンでもあるMさんとすれ違う。さすがに風雪にもまれ、落ち着き具合と漂う貫禄が違う。

 道が石畳のジグザグになったと思ったら、程なくコルだった。山荘の裏手を抜けて10:10涸沢側の一番端、展望の良いところに天場を確保して同山荘で手続きをする。1人1,000円。ついに大台に突入かと思うと感慨深い。美味しいと評判で一度味わってみたかった夕食を1,800円払って予約する。

 天場でツェルトを張っているころから天候が回復方向で、ガスが走り、時折パラつくものの強風だけになってきた。16:00の気象通報も前線の通過を告げており、この分だと明日は大丈夫だろうと高を括る。

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ガス走る涸沢カール

 17:00夕食。50人以上はいるか、自分同様、天泊者のみの一画で喫食。バラエテイ・量も適当で確かに美味しい。去年の山行時、泊まった小屋の食事がひどすぎた反動かもしれないが、水準は超えていると納得。持参の食糧が余ってしまったが、その価値はあった。

  19:30明日の晴天を祈ってシュラフに入る。いろいろあった2日間がなんとか無事に終わった。夜半、蒼天に浮かぶ天の河が美しい。気温は0℃前後まで下がり、ツェルトの天井は結露が霜状態。少し寒いので救急用のアルミ蒸着シートを使う。軽量で密封しなければ結露はなく、保温も確実なので有難いグッズだ。まぁ9月も中旬、高度を考えるとまだよい方かと思う。

 

入山3日目。

 14日(月)4:00起床、5:40天場発。快晴、風も大したことない。奥穂へ向かう最初の鉄梯子前は既に渋滞だ。ちょっと心配したベルグラの付着はなかった。途中、ジャンダルムの飛騨側を県警ヘリが飛び回る。誰か、アクシデントがあったか。6:20奥穂ピークは登山者でごった返し。何度も踏んでいるので今日はパス、直下の道標から右へ振って、ジャンダルム方面の岩稜帯へ歩を進める。 

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朝日の山荘と北穂等

 

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奥穂山頂直下からジャンダルム

 馬の背のリッジは、両側が切れ落ちて下り勾配もきつく高度感あり。やや風もあったけれど岩がしっかりしていて、それなりに楽しかった。

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稜線から望む上高地、焼岳、乗鞍

 この先、ロバの耳へのザレた急降下斜面の真下で単独行者が休憩中で、動いてくれるまで降りるのを待つ。ジグザグ道の下りで、石を落とさない自信はあっても油断は禁物。ここからジャンダルムの基部を飛騨側まで回り込むトラバース。この方が馬の背より高度を感じて面白かった。人一人分の幅しかない岩場だけれど、しっかりとした道だ。  

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ジャンダルム登り口

 7:20ザックを基部にデポして岩稜帯を3,163mのジャンダルム山頂へ登る。鉄天使の道標がお出迎え。今もあるだろうか。展望は素晴らしく、槍穂、笠をはじめ北アの主だった山々が見渡せる、時間はわずかだけれど至福の時間だ。県警ヘリはジャンダルムの信州側に落ちた登山者の救助だったらしい。4,5分で登れ、傾斜も緩い山頂までの道のいったい何処で?

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天使の誘惑(ジャン山頂)

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これから歩む稜線

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ジャンダルムから槍穂の稜線

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槍ヶ岳と黒部源流の山々

 7:30天狗のコルに向けて基部発、コブ尾根、畳岩尾根と小ピークを越えながら広いガレた尾根を進む。道がはっきりしないけれど何処を歩いても頂稜部を外さなければコルに着くだろうという感じの稜線漫歩、でもステップは慎重に だった。

 8:20天狗のコル着。涼む。エスケープできる最後のポイント。でも、天狗沢は上から見ただけでもザレており、一目見ただけで、ちょっと使うのを躊躇するようなルートだった。 

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天狗のコルと天狗ノ頭

 8:50天狗の頭。高度差80mを一気に上がる。登り始めの最初の足場が高く、足が届かない。年寄りには厳しい登りだ。浮石、落石の巣のようなルートでも好天、微風もあってコース自体は快適そのもの。しかし、ワンピークごとにアップダウンを繰り返し、幕営装備の8kgちょっとしか背負っていないのにその消耗が体にじわじわ効いてくる。コルから一緒になった東北の某大学山岳部5人パーテイは、前日滝谷、今日は西穂ルートと30kg近く背負っているのに同じペース。若い頃の体のネバリはもうないのは判っていても齢を実感する。 

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天狗ノ頭手前から

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間天ノコルと間ノ岳の稜線

 間天のコルの逆層のスラブはフリクションがよく効いて快適で、気持ちがよかった。すれ違う登山者もなく、全く問題なく通過。間ノ岳から振り返るとよくこんな場所にコース設定したものだとあきれる。先人の苦労がしのばれるルートだけれど、実態は、普通、人の入ることのない急傾斜の崩壊斜面そのもの、落石の巣である。

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急傾斜の崩壊斜面

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間ノ岳中途からの吊尾根

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一見、急登だが登りやすい道

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梓川の流れと霞沢岳

 9:55赤岩岳ピーク着。ルンゼや脆い岩稜の通過に浮石をつかまないことや落石を注意する。ここから西穂までのアップダウンはルートのポイント、ポイントにしっかりマーキングがあって、そう難しいとは思わなかった。西穂の登りも岩稜帯の弱点を的確に拾うルートで、事故の多い場所と聞く山頂直下も無難に通過できた。 この辺りまで来ると、逆コースの登山者と多くすれ違う。一番厳しいところはもう通過していたので、落石の懸念は少なくて、この点は助かった。

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西穂中途にあったシロモノ(シラタマノキ)

 10:30西穂山頂。ルート最後の2,900m峰。これで核心部はほぼ終了したことになる。笠ヶ岳の巨大な雄姿を正面に、反対側の上高地も美しい、素晴らしい展望台で、1日行動日をずらして正解だった。山頂でゆっくりして贅沢な大展望を味わわせてもらう。

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西穂山頂

 少しして5人パーテイも到着。リーダーが今日は山頂に天泊しますと伝えに来てくれる。確かに1年生らしき新人1名はかなりの消耗度。昔の自分を思い出しながら、「大丈夫、石だらけの天場でも熟睡できるよ。」と独り言つ。 

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西穂より笠ヶ岳

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西穂より焼岳、乗鞍方面

 これで奥穂から西穂山荘までの約半分をトレース、道はぐっと歩きやすくなり、11:25西穂独標で20分の大休止。行動食を頬張る。ここから先はスニーカーの人も来る、歩きやすい道で、すれ違う人も女性がぐっと増えた。

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ピラミッドピークからの西穂

 12:20西穂山荘。プランどおり6時間で抜けることができた。小屋は、2,385mの森林限界地点に立地し、一度冬に泊まってみたいところだ。単独でも西穂直下だけは要注意だけれど往復は大丈夫だろう。連休の山荘はすごい混みようで独標でゆっくり休んだこともあって、そのまま通過する。 

 この山域を歩いたら下山先は上高地と決めているので、ロープウェイではなく田代橋への道に入る。途中からオオシラビソ?と笹の樹間の道となり、程良い明るさの中に涼風が通って、すこぶる気持ちがよい。されど上高地まで約900mの標高差を下る、長い行程。そろそろ脚に疲労が出始めた14:05、西穂高登山口に着いた。あとは田代橋を渡って上高地BCから高山までの移動のみだ。今晩の飛騨牛を楽しみにバスに乗り込んだ。 

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定番!梓川河畔からの吊尾根

(あとがき)

 北ア・無雪期トレースで最後まで残っていた奥穂周辺領域がやっと終了した。お山の質とお花がない点は相違するものの、大好きな南ア・悪沢岳から聖岳に至る山域に匹敵する良いコースだった。

 奥穂山頂から西穂山荘まで約6時間は、一歩誤るとすぐ行動不能になる危険と常に隣り合わせ、緊張の連続の行程だったけれど、ザイルを使わずフリーで歩ける限界に近い、素晴らしいコースだった。他の登山者に怪我等をさせないよう、落石防止や行動にもかなり気を使った。同レベルに近いと思った、後立山連峰の不帰の瞼と剣岳のカニのタテバイ、ヨコバイも、ともに緊張を強いられる時間は短く、このルートとは比較にならないかなぁと思う。

 約半年間に及んだ体力トレーニング、コース調査や軽量化の徹底、自分で考えられる山行準備として事前にできることは必ず行うことを心掛た。想定重量を10kgまでとし、それを3日間背負って、一日10時間は歩ける自信を付けてからのアプローチだった。

 お山以外のところで、想定外のアクシデントに遭遇したけれど、的確なサポートを頂いたMバスの方々やメインの日に好天に恵まれる幸運もあり、体力的な衰えの目立つ、還暦越えて久しい年寄りが、3日間を無事に過ごさせてもらったことに感謝して筆を置く。

 

(注)ツェルトの活用について 

 本山行は、軽量化のためツェルトを使用し、白出沢手前の樹林帯でのビバーク、穂高岳山荘天場で設営した。標高三千mを超える場所は本来、不適当な場所で、天候の回復具合によっては、山荘宿泊の線も最後まで持っていたけれど、予報を前提に設営できた。

 横風に弱いツェルトは風雨を避けやすい森林限界以下での使用が望ましく、横尾や徳澤の天場でも、上高地本来の驟雨のような降雨にあえば、全く通用しないことに留意してほしい。

稲叢山 ―少しだけ早かった大山(深山)蓮華― 

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大山(深山)蓮華

 6月も中旬というに、未だお四国は梅雨入りせず。 けれど、山屋には雨がないのは有難い話。で今回は、県境を越えて高知県稲叢山(1,506.2m)へ。

 この時期の名花、大山蓮華をチーム五名で観賞に行ってきました。

 長さ5.4kmの寒風山トンネルと本川トンネルを抜けると、いよいよ稲村調整池への急こう配の曲がりくねった舗装道です。標高1,400m程まで登って稲村トンネルを抜けると直ぐ左横が駐車場とトンネル南口登山口。既に5台。先着の方々の姿はもう見えず。

 9:00出発。曇で涼しい中、少し調整池方向へ下り、林道分岐登山口から登り始め。いきなりの植林帯の急登を20分程頑張ると林道分岐の広場へ。ここから四差路という、四つの登山道が交差する分岐点まで15分ほど。驚くほどあっけなく9:35には着いてしまいました。

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四差路(手前に2コース登山口あり。)

 少し涼んでから稲叢山頂へ出発。古くから登られているお山なので道標にも迫力があります。比較的勾配の少ない、広葉樹林帯の曲がりくねった道すがら、葉緑素のない植物銀竜草の団体さんにもお会いしました。

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古い道標

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銀竜草葉緑素がないので人の目には白く見える。)

 10:20山頂に到着。少しガスが走っても展望は良好。直前に先着の15人ばかりの団体さんに山頂を譲って、我々は稲村調整池が見渡せる奥の岩場へ抜け、そこで30分程大休止。カイナンサラサドウダンと並んで、岩場の陰にはキバナウツギ?でしょうか、黄色い花が。

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ガス走る稲村調整池

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キバナウツギ?

 戻った稲叢山頂の北西面は切れ落ちた岩壁、おおこわ。でも途中のテラスは気持ちよさそう。この時は遠く大橋ダム方面も望むことができました。

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稲叢山頂の立派な祠

 

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切れ落ちた岩壁と大橋ダム方面

 ここから先の行程を相談し、四差路へ一度戻って西門山(1,496.7m)をピストンし、トンネル分岐という名のコルから駐車場へ下ることに。トンネル分岐までは緩い下りの特徴のないザレた道、ブナを中心とした新緑が見事です。12:20コルで皆思い思いのお昼。風が通って気持ちがよく、少し寒いくらいでした。

 西門山へは片道1時間ほどの行程で、別名、大山蓮華街道(勝手に名前つけてる。)。鉄塔管理のS電力さんもこの木のことは判っていらっしゃる(有難うございます。)らしく、鉄塔横の木は伐採からしっかり残して頂いてました。

 今日はまだつぼみが多く、四分咲きくらいですか。それでも並の花と違って気品が…。

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さすが茶花として珍重されるだけのことは…。

 どうも稲叢山から西門山の一帯は、そこかしこに大岩がある一連の岩峰群のようで、往復とも、「大岩」という岩峰群の割れ目を通ります。アケボノツツジシロヤシオ、大山蓮華等の花木とブナやヒメシャラ等の広葉樹林が岩に張り付いて混在しているのが実態のようです。 途中、ヒグラシ?の抜け殻などを楽しみながら、着いた西門山はうっそうとした樹林帯の中の山頂、展望は全くありません。

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時期的にみて、ヒグラシの抜け殻?

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西門山頂(山頂というより丘です。)

 でも、ブナの枯れ木が倒れ、一画だけ日差しが差し込んでいました。倒木周辺には見当たらなかった、ブナの幼生は山頂手前に1株だけ。代替わりは果たしてうまくゆくのでしょうか。

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ブナの幼生

 15:00過ぎ、深さ88mロックフィル式の稲村ダム(調整池)まで車で見学(無人)に寄り、帰路に。

 高貴な女性を彷彿とさせる大山蓮華の白い花が強く印象に残った山旅でした。

ツガザクラ観賞山行(銅山越)

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ツガザクラ(ツツジ科) 分布南限に位置し、2019.2.26 国の天然記念物に指定。

 2019.6月上旬、いつものお山のグループ6人で銅山越(1,294m)まで往復した。目的は、本来ならば2,000m級以上のお山で咲く花である、ツガザクラである。

 旧別子山村日浦登山口を出発時は曇だった空模様は、小1時間も歩くと霧雨状に。傘を差してのんびりと、適当に微風も吹いて涼しい山歩き。旧別子銅山の小足谷接待館や同劇場跡などの産業遺跡群を一つひとつ味わいながら散策をかねての登りとなった。

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小足谷劇場跡

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劇場跡等の古い案内板

 ダイヤモンド水に着いたのが9時半前。早速、住友金属鉱山㈱の寄付メインで2015年に設置されたバイオトイレを確認に行く。自転車で漕ぐところが実用的で設計者の遊び心を感じる。東屋で一服し、水を補給。水源奥の苔むした石積みの前に葉の特徴からキレンゲショウマではないかと思われる植物の一群が。 誰かが移植したのであろうか…。 

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谷に今も架かる石積橋

 標高も1,100mを越えてくるとさすがに少し風が出てきたが、それとともにアカモノ群落や目的のツガザクラが登山道わきに散見されるようになってきた。時期が遅くて、ツガザクラは少し盛りを過ぎていたよう。それでも独特のカップ状の花は気品があって麗しい。 

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アカモノ(ツツジ科)丈20cm程、秋に赤い実をつける。

 と、すぐ横に笹葉銀蘭があるではないか。白いつぶらな(?)上品な花を載せて。以前、石鎚山系笹倉谷で探し回ってやっと数個体撮れた程度、こんな場所にあるとは…。

 驚いたのは道中到るところに。まさに銀蘭街道だった。残念ながら金蘭は見つけられなかったけれど不勉強を恥じる以上の望外のお土産となった。

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笹葉銀蘭(らん科)丈30cm程

 銅山越の峰のお地蔵さん横にザックをデポして、風の中、雨具着用で保護区に向かう。小雨の散策だったけれど、心なしか以前来た際より数が減ったような気がする。厳しい生育環境だからそれもやむを得ないのかもしれない。

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保護区のツガザクラ

 保護区から新居浜市街が望める展望台(と勝手に名前を付けてる。)では、東平から下界は一面の雲海で、見えない方が趣が感じられた。雲海もなかなか良いものだ。

  ザックデポ地点に戻ると少し降りが強くなったので、そのまま歓喜坑の休憩所まで滑りやすい道を一気に下る。女性が多いパーティの都合上、申し訳なかったけれど避難小屋を雨宿りにお借りした。古材ながら簡素、がっしりしたつくりで、関係者の心意気を感じさせる小屋だった。この場をお借りしてお礼を申し上げます。有難うございました。 

 14時半下山。 もう、我々以外は数台しか残っていなかった。終日、傘で歩けたうえに蒸し暑さもなく、銅山の歴史探訪と期待の花類の観賞にはもってこいの天気。それに望外の蘭も見ることができ、得るところが多い山行となった。

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雨に濡れる笹葉銀蘭

 

御来光ノ滝へ

 石鎚スカイライン長尾尾根展望台から御来光の滝、面河道をゆく

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御来光ノ滝 (落差102mといわれる二段の滝。日本の滝百選に選出。)

 5/25(土)、ふっと1日空いたので、久しぶりに面河本谷から昔の遊歩道沿いに御来光の滝へ。帰路は面河裏参道を歩いて面河へ下った。

 9:40に石鎚スカイライン中途の長尾尾根展望台前で路線バスを下り、快晴の中、出発。

 ミヤマシキビの大群落が現れると本谷の砂防堰堤はもうすぐだ。対岸へ移り、10:07今年もサルナシの大株が元気に枝を張っている本谷と番匠谷との分岐で一服する。涼しくて休憩にはもってこいだ。水量は、最近、雨が降っていない割に普通で、あまり影響は出ていないようだ。番匠谷奥のねじれ滝まで行きたくなってしまった。

 ここからは本谷遡行ではなく、山斜面沿いに高巻くルートを選択し、すぐに難所の一つ、ぬめった小沢を横断。階段状の河床の下は切れ落ちているので要注意、慎重に渡る。

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ぬめった小沢

 10:30風が通って涼しい小尾根の乗越(勝手に風通し峠と呼んでる。)を通過。直ぐに2回目の渡渉。昨年の台風等で河床が大分変化し、石伝いに渡りやすくなっていた。

 ここから七つ滝までの20分間は、このコースのハイライトだ。栃の大木と白色の綺麗な滑滝が連続し、面河ブルーの水面も美しい。撮影と小休止。瀬音とカラ類の鳴き声のミックスに心が和む。

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滑滝 (そのままトレッキングシューズで歩けるほど浅い。)

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七つ滝(下)

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七つ滝より下流を望む

 直ぐ先の渡渉に一苦労していた3回目のポイントは、大石がなくなってずいぶん楽になっていた。

 右岸の昔の遊歩道である高巻き道を行く。踏分け道だけれど石積みもあってしっかり作られており、敷設頂いた先人に感謝、その苦労が偲ばれる。

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鬱蒼とした樹叢を行く

 11:00犬吠谷出合、魚止ノ滝通過。再度、左岸へ渡渉し直し、11:30水量がちょろちょろの南沢出合に到着。気温22℃、今日は夏日の予報で、山中でも日差しは厳しい。 

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南沢出合

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枝沢のイワタバコの新芽

 11:48 数年前に苔むした小橋が流された、コース最大の難所、逆層スラブ状の小沢に出る。新たに渡されたロープ1本を敢えて使わず、本谷まで10m程を下降し本流と並行に走る一枚岩の上を通過。 高巻き道までゴーロ帯の登り返しが必要だけど通過時間は5~10分ほどで、初心者にも安全な巻道として使えると思う。

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逆層スラブ状の小沢

 12:00御来光ノ滝着、無人。豪快に落下もやや水量は少ないか。ゆっくり昼食とコーヒーブレイク。滝音と鳥の声以外はなにもない、静謐の時間を楽しむ。

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左岸のカエデ (秋の紅葉は美しい)

 12:45、滝の右岸に沿って面河裏参道に至る急登連続の巻道を進む。 テープが古いところは新たに敷設しつつ、水の流れる小沢のザイル付きの急登も倒木を巻いて無事通過。あまり人が歩いていないのだろう、踏み跡も薄い。

 13:10中沢分岐。シャクナゲが満開でしばしカメラが活躍する。

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満開のホンシャクナゲ

 分岐から面河道との合流点までは、かつて胸までの笹だったけれど今回はきれいに刈り払われていて大変、助かった。(愛媛大山岳部の方か?有難うございました。)途中、南尖峰が樹間から見え隠れし、そのアルペン風の姿にしばし見惚れる。

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南尖峰と大砲岩、右に中沢

 14:05石鎚小屋着。休憩中、玄関と窓を開けて小屋に風を通す。小屋は無人で下山途中の広島から来た若い夫婦連れと少し話す。

 14:15下山開始。この路は秋のブナ、カエデ類の黄(紅)葉が見事なコースながら春の新緑もなかなか趣があって捨てがたい。

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これ根です。すごい迫力。

 のんびり鎚南面を見ながら稜線漫歩、途中の勝手にドングリ四兄弟と命名してるコナラの大木に挨拶する。 

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ドングリ四兄弟

 

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(参考)冬のドングリ四兄弟

 15:15霧ヶ迫の冷たい水で喉を潤し、顔も洗って少し生き返り、15:50旧国民宿舎奥の車デポに帰着。

 終日、広葉樹林がメインの樹叢を歩いてフィトンチッドをたっぷりと浴び、涼感も満点の山行でした。

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ブナの幼生 (山系の代替わりは順調のようです。)

 

堂ヶ森から黒森峠

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2018.3.10堂ヶ森より松山平野、割石東山(左最奥)を望む。

 2019.3月上旬に、四国・石鎚山系~赤石山系間の最後の空白地帯となっていた、堂ヶ森~黒森峠間、約9kmを歩いた。

 コース上の最高点は青滝山で、標高は1,303m。時期は笹ブッシュでも比較的涼しいであろう?3月を選択。

 早朝の黒森峠(986m)にクロスバイクをデポ、そのまま梅ヶ市集落の堂ヶ森登山口に車を廻し、7:30登山開始。

 快晴、杉花粉飛びまくりの中、伐採作業の植林帯を通過し、8:50登山道が折れ曲がる1,350m地点から縦走に入る。

 最初は道のない急坂の下りで笹根元に残る残雪を踏み破りつつ、二重山稜を下る。1,250mのコブ手前あたりで膝下の笹の中から踏分道が現れ、道は市町境界の稜線に沿って終点の割石東山(1,073m)まで細々と続いていた。 

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遠く霧氷の堂ヶ森山頂反射板を見る

 暗い植林帯と明るい広葉樹林帯の境を進み、遠く、白い霧氷の冠をかぶった石墨山、皿ヶ嶺連峰が青空に映える。

 相名峠9:35通過。保井野から梅ヶ市へ抜ける古い峠道は、残置テープにかすかに人の気配が感じられるものの、梅ヶ市側はほぼ廃道に近い。 

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相名峠

 ここから青滝山への登りが始まる。存在感のある1,264mピークを過ぎて広い尾根に出、小さなアップダウンを繰り返す。この辺りは幅員2m程の荒れ道と細い登山道の2本が並行し、まばらな赤テープの登山道の方をたどった。

まだ山眠るの状態ながら、背後からの日差しは強く、予定外の汗が滴る。

 青滝山手前にあった胸までの笹の一帯は、根元に明瞭に道を確認でき、全く問題はなかった。

 10:30ドカンと明るい青滝山山頂。かつてヘリポートがあったという面影はなく、展望もなし。蕗の薹がそこかしこに花芽を出していて、暑さもあってここで大休止。 

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青滝山三角点

 ここからの下りは、短い距離ながら背丈を超える笹ブッシュを漕ぐ。この辺りがコースのハイライトかもしれない。猪さんの寝床がいくつもある中、やがて道は植林巡視道と思われる明瞭で結構な角度の下りに変化した。 

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猪の寝床、丁寧なつくりでふかふか。

 11:50海上(かいしょ)峠。最奥の集落名が峠の名称らしいけれど、峠道はもはや跡形もない。

 杣野山への登りは、またまた背丈超え笹ブッシュ再現。ここも距離は短く、十分な日照のためか、なかなか手強い笹だ。ピークを乗越して12:30広い尾根末端の1,200m辺りで30分休憩、少し遅いお昼を取る。

 この先、1,107mピークから1,058mピークの間は稜線上の細い岩稜帯を縫うように進む。石碑もどきや穴から青空がのぞく岩峰群と、意外と変化があって面白く、飽きさせない。

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岩穴から青空が…

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送電鉄塔(割石東山は近い。)

 13:40 1,058mピーク。すぐ送電鉄塔が現れ、もう終点の割石東山は目の前。緩い登りと胸までの笹ももう苦にならなかった。13:50割石東山着、あっさり縦走は終了。

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黒森峠への下りから鉄塔、遠く堂ヶ森を望む。

 長年の懸案を解消した割には感慨とか特になく、嬉しさは夜の地形図読み遊びの際にでも、じんわりと湧いてくるかもしれない。

※ 追補  縦走路の刈払いが2019.3月の本トレース後に行われたようで、この年に歩かれた方から御連絡を頂いた。したがって、本稿記載の笹ブッシュはもう解消されたようである。

筒上山境界尾根から笹倉へ

 

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1,530m笹原ピークから筒上山を望む。

 5/12(日)にアケボノツツジを見に筒上山(1,860m)から愛媛・高知県境の尾根を笹倉まで下った。5年ぶり?回目、果たして路はどうなっているか。

 9:20に石鎚スカイラインの金山谷路側帯に車をデポし、路線バスに拾ってもらって土小屋へ。GW翌週でも登山者は多く、車も軽く50台以上は駐車している。9:50土小屋発、快晴。岩黒山巻道、筒上尾根道を辿って11:15筒上山頂に。暑い。途中の五葉つつじは、まだ新芽が芽吹いた段階で白花が堪能できるのは下旬頃かも。

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丸滝のアケボノツツジ

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筒上山頂からの石鎚山

 11:30笹倉への踏分道の笹の中へ入る。最初の岩場ミックスの下りは迷いやすく要注意なので、記憶を手繰りながら慎重に歩む。ここは前回、本来ルートと違う所に残置赤テープが見受けられたところで、自分の記憶と判断力が頼り。

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アケボノつつじの古木

 黄色の古いテープがほぼ正確に古えの道をトレースしていて敷設した見知らぬ登山者の実力に感謝だ。道自体は低い笹や枝類が繁り、人の歩いた跡もほぼ消えかけていて、今日も先行者はいないようだ。

 12:30プロトレックの標高は1,560m。岩稜帯を抜ける。筒上境界尾根南面直下のアケボノツツジ群落は、残念ながらほとんどが咲き初めで、ほんの少し早かった。

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ほぼ満開

  ここからは笹ブッシュが始まるので、スパッツ装着、手袋を替える。道はほぼ明瞭に稜線上を走り、五月の涼風もあって小さなアップダウンも快適、ダイセンミツバツツジの紫が美しく、芽吹いたばかりのブナの新緑も輝いている。

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ダイセンミツバツツジ

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ブナの新緑

 13:40腰まで丈の伸びた1,530m笹原ピークで休憩。急降下の笹道を下って14:18茶枯れ気味の笹倉に着いた。この時間帯だともう人はいない、昔の静謐な雰囲気に戻っている。変わったのは一回り小さくなった外周と五葉松の大木が枯れ、倒壊したことくらいか。 ゆっくり休憩を取ってくつろぐ。

 

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笹倉

 さて、もうここからはハイウエイ。途中、数年前に一抱えもある太い枝が風で折れた大ブナに今年も挨拶する。

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大ブナ

 15:45金山谷のデポ車に戻る。アケボノツツジのピンクやブナの光る緑に加え、筒上山頂から先は一人だけの贅沢な時間を堪能させてもらった、日帰りの山旅も終了だ。

(追記)

 2020年5月下旬に再度、同ルートを下り、山頂直下から岩稜帯を抜けるまでの間のみ、古のルートに橙色のテープを設置しておいた。古かった黄色テープは新調され、間違いの赤テープも撤去されていた。岩稜帯を抜けるまでの間の笹の踏分道は、ほとんど踏み跡はなくなっており、依然注意を要する箇所に変わりはないものの、正確に黄色テープを設置された、未だ存じ上げない登山者の方に改めて感謝です。