寒風山から笹ヶ峰へ ― 厳冬期山行の下見を兼ねて快晴無風の暖かさの中を歩く

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寒風山山頂から笹ヶ峰を望む

 11月も下旬、数日前には暖国お四国でもやっとお山に初雪。いよいよ冬の到来かと思いきや、三寒四温どころか一寒六温。温暖化の影響?か、初雪は一日限りの幻に。これでは今年は年明けまでアプローチ道の凍結はおろか根雪すら積らないかも。

 今回は、毎年2月下旬に歩いている、寒風~笹の稜線を下見がてらトレース。無雪期に歩くのはひさしぶりだけど、朝日で金色に照りかえる高知湾・太平洋の大海原や一面、面河笹の稜線の穏やかさに癒されてまいりました。

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縦走途上、遠く高知湾を望む

 つい最近まで一般道(R194、最近は「そらやま街道」というらしい。)で全国最長だった、寒風山トンネル(延長:5,432m)を抜け、旧道を走り登って、朝7時半過ぎに桑瀬峠登山口に到着。

 好天予測の週末とあって、駐車場は既に20台近い混みよう。さすが、お手軽に四国山地の稜線に登れる人気コースの登山口、お四国4県に加えて、岡山、広島、はては大阪と多彩なナンバーがそろう。

 8:00出発、標高約1,100m、気温11℃とちょっと暑く、広葉樹林帯のいきなりの急登に少し汗ばんだ。冬に向かうこの時期は体が寒さにまだ慣れていないので、無駄な汗をかかないよう、すぐに調整。

 路は、紅葉の時期を終え、あっても末枯れ。朝の柔らかい光がすっかり葉を落とした木立に差し込んで、清澄感一杯。カラ類の鳴き声も滑らかで、なかなか気持ちの良い登高だ。

 40分弱で桑瀬峠(1,451m)に。ここから伊予富士(1,756.2m)、寒風山(1,763m)に道が分岐する。伊予富士方面に進めば、ネットで有名になったUFOライン・天空の道(自念子の頭(じねんごのかしら/1,701.8m)の真下を通る瓶ヶ森林道)を見ることができる。個人的には、無雪期より霧氷咲く冬景色の方が美しいと思うけれど…。

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12月中旬の自念子ノ頭(バックは石鎚山

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厳冬期の自念子ノ頭と石鎚山系の主峰群

 今日は、笹ヶ峰(1,859.6m)まで抜けるので、峠は小休止だけにしてそそくさと出発。前日の雨で日陰は笹が乾いておらず、スパッツは雨でもない限り普段つけないので、膝下が少し濡れる。このレベルは歩いてりゃ乾く。

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寒風山手前峰・南西壁

 この先、寒風山(手前峰)の南西壁を左手に見ながらの登山。途中のブナの林を抜け、はしごをクリアし、急登を登りきって面河笹の斜面に出るともう山頂は一息の距離に。

 9:40寒風山山頂着。二十数年前に大掃除に来て、穴の中の一升瓶やら空缶類やらを運び降ろした、山頂直下の風穴(清掃後、投棄防止にお社の設置案(銅製を設置頂き有難うございます。)を出し、今ではお賽銭も。)とお社の無事を確認する。お社は、厳冬期でも風穴内部からの地熱風があって雪で隠れることはない。

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厳冬期のお社

 残念ながら、ここから遠望できるしまなみ海道・来島大橋は、今日は大雲海の中だった。

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縦走路から見た瀬戸内海側の大雲海

 山頂から笹ヶ峰までは直線距離だと2kmちょっと。意外と近いけれど、小ピークをいくつも越えるアップダウンが連続し、特に冬季は西側(愛媛県側)からの強風、笹斜面の表層雪崩の懸念など、無雪期では想像できない、要注意の稜線。でも、今日は快晴にほぼ無風に近く、正面にたおやかな笹ヶ峰本峰、一面の面河笹の中を小さな起伏を楽しみながら歩ける好条件だ。

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寒風山から笹ヶ峰への縦走路を進む

 11:00前には1,740mの前衛峰を巻き、左手に沓掛山を、西側斜面の日陰では今年初めての初雪の名残も踏みしめつつ、ほとんど水平道に近いような山頂へのほぼ一直線の巻道を進む。

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1,740m前衛峰手前から寒風山を振り返る

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巻道へ乗っ越す登り坂、冬季は雪が腰まで来ることも…。

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令和元年の初雪の名残り

 11:25蔵王権現を祭る山頂に到着。すでに先客が7~8名。少し風が出てきたけれど、やや汗をかいた身には心地よい。

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蔵王権現のお社、左手奥はちち山

 ここは山系の優秀な展望台の一つ。北に赤石山系、大座礼山、ちち山・冠山~平家平の稜線、南に石鎚山瓶ヶ森などの石鎚山系の主峰群、東に6月に登った稲叢山、はるか高知湾、西は瀬戸内海だ。剣山系や伯耆大山は雲の中ではあるものの、石鎚山系で最もスケールの大きい景観を味わうことができる。贅沢余りある眺めである。

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ちち山(右)と遠く赤石山系

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ちち山から奥に大座礼山をはさんで冠山~平家平への稜線

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石鎚山系の主峰群(瓶ヶ森石鎚山方面)

 予定より早く着いたので昼食を含め1時間、たっぷりと休憩。ゆったりとコーヒーブレイクを楽しむ。

 帰路は、東南の方向にのびる高知県側、一面笹の拡がる斜面を一気に約700m下る直滑降ルート(と勝手に名前つけてる。)を使う。下り始めて驚いたのは、以前と違い、笹の刈払いが行われて非常に歩きやすい。樹林帯ではベンチやロープも十分整備されて、伐採跡生々しかった頃とは様変わりしていた。

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直滑降ルート途中から望む冠山に至る雄大な稜線

 ここは、冬だと林道まで1時間で下れる便利な道だけれど、無雪期の今は滑りやすい。木の根や青石に加え、急傾斜で膝を傷めないよう、注意を払って降りる。途中、冬の目標木にさせて頂いている、ウラジロモミの2本組に挨拶。

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夏の目標木の2本

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厳冬期の目標木(夏景色の左側の木)

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厳冬期の目標木(夏景色の右側の木)

 笹原のところどころにある灌木にも少し高いところに吹き流しテープを追加する。冬季は、山頂からこの斜面の間はホワイトアウトで何度も痛い目にあっていて、転ばぬ先の…である。

 左右にブナの大木を見るようになるとすぐに桧の植林帯へ。林道には14:00前に降り立った。ここを登山口にした人の車3台が駐めてある。もう桑瀬峠登山口まで40分程の非舗装の林道歩きが待っているだけだ。

 冬道と一部ずれるものの、倒木や道が傷んでいるところは見受けられず、概ね下見の成果はあったなと今日一日を振り返りながら、冬木立の間からなお光ある寒風山を見上げ、林道をのんびりと歩いた。

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夕刻の寒風山

 

石鎚山東稜を行く ― 西日本最高峰の紅葉の稜線を味わう日帰りトレッキング

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薄紅葉と北岳(右端)から西ノ冠岳の稜線を望む

 10月上旬、お四国も平地ではまだ猛暑の余韻がそこかしこに残るものの、新涼に体がやっと少し楽に。

 今回は、例年秋の定番、東稜から石鎚山天狗岳へ。紅葉の頂上稜線とお四国でもちょっぴりアルペン的な雰囲気が楽しめるコースを歩いてきました。

 石鎚山は、約1,500万年前の火山の外輪山の一部が残ったもので、東から順に南尖峰(なんせんぽう1,982m)、天狗岳(てんぐだけ1,982m)、弥山(みせん1,972m)の三つのピークの総称(最も西にある北岳(1,920.9m)を含める説等もある。)です。

 主要なルートは、西条市の成就社からの表参道、久万高原町の面河からの裏参道のほか、石鎚スカイライン土小屋や二ノ森(1,929.6m)からのコースなどがあります。

 東稜ルートは、土小屋ルートの中途から頂上から東に派生する尾根の末端に取り付き、南尖峰に直接突き上げる、バリエーションルートの一つです。

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東稜中途からの南尖峰、天狗岳

 春の新緑とアケボノツツジ、秋の紅葉の名所ではあるものの、急登と笹漕ぎの連続、最後の南尖峰直下、中沢源頭から稜線までの間はクライミングの基本技術も必要で、山登りの基本、自己責任原則への十分な理解が求められるルートでもあります。

 ウイークデイというに、山頂付近の紅葉予想にこの好天のせいか、石鎚スカイライン土小屋駐車場は大混雑で既に満車。

 10月らしい涼しさの中、8:00に出発し、30分程で東稜への分岐点へ。まだ朝なので東稜に入るとぐっと登山者が減少、周りは少しだけ静かになりました。

 途中の矢筈岩(やはずいわ)の直下をまくところまでは展望のない樹林帯、岩を乗り越えたり、笹を漕いだりしながら進みます。ずいぶん前に某登山地図販売会社の市販地図にコースが掲載されてから、それまで土日でものんびり昼寝が楽しめたこのコースも人が増え、路も随分と荒れてしまいました。

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矢筈岩を巻いた先の岩峰、左の笹の急登を登る

 9:30矢筈岩下からの笹の急登を登り切って、やっと南尖峰が望める地点に到達。紅葉はまだはしりですが、冷え込みが緩いせいか、色はもう一つ。北側に瓶ヶ森雌山(1,896.5m)の優美な笹原(氷見(ひみ)二千石原という。)をはじめ、遠く剣山系まで四国山地の山々が地平線に浮かんでいます。

ここから先は、左に南沢、右に土小屋ルートを望む稜線の踏分道を忠実にたどる。シャクナゲのトンネルを抜けると正面に南尖峰、反対側に岩黒、筒上山を望める、南沢源頭。

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南沢源頭付近からの南尖峰(右奥)

 このルートで最高の展望スポットです。今日は少し霞んでいるものの快晴で素晴らしい眺め、でも紅葉はまだまだでした。

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北面の瓶ヶ森四国山地の山並み

 だいぶん高度も上がってきて樹木も灌木化し、涼風も通る快適さの中、中沢に切れ落ちた岩稜帯のトラバースが終わると10:30中沢源頭着。ここで大休止。

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中沢源頭への登高中、筒上山・手箱山方面を振り返る

 中沢は急こう配の涸れ沢で春のアケボノツツジの群落は特に美しく、晴れていると非常に爽快な登高が楽しめる沢。かつて面河本谷から御来光の滝を乗っ越し、この沢をつめ、天狗岳、弥山を通り、面河乗越経由で裏参道を駆け下った、昔の山旅が昨日のことのよう。懐かしい。

 とはいえ、ここから先は一部にクライミング要素もあって油断大敵。慎重に岩稜帯のガリーに取り付きます。

 15分程で高度感のある、気持ち広めの場所に。古くからの本来ルートは、ここから左に振りますが、最近は右の、中腹に枯木のある岩壁が登られているようです。事実、踏み跡もはっきりしていますが、地元山岳連盟の先輩も「この岩壁は、万一滑落してすぐ下の小灌木帯で止まらないと命にかかわる危険な箇所。決してフリーで登ってはいけない。」と話していて、もちろん躊躇せず左へ進みます。

 左手に中沢を見下しながら岩稜とちょっとしたテラスを通り、岩と岩の間をすり抜けると南尖峰の先っぽ、石鎚山南面に。すり抜けた岩の天辺にボルトが1本あります。ここは何年か前に岩全体がボルトもろとも自然崩落し、新しいものが打たれたもの(有難うございます。)、カラビナとシュリンゲのセットで通ると後は天狗岳、弥山への稜線歩き。

 期待していた頂上周辺の紅葉は、冷え込み不足で色づき具合はもう一つ。三、四日ばかり早過ぎました。登山者で混雑する山頂をスルーし、弥山、頂上小屋も通り過ぎて、二ノ森や西ノ冠岳(1,894m)が望める、展望スポットで少し遅めの昼食。

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弥山南面をバックにサラサドウダンツツジの紅葉

 ここもサラサドウダンツツジ等の紅葉は少しだけ早く、真紅とはゆきませんでした。

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頂上稜線西端の岩峰群

 それでも、西日本第5位の高峰二ノ森と裏参道の面河笹の路を正面に、ゆったりとコーヒーブレイク。たまには、たっぷりと時間に余裕がある、のんびり山行もよいものだと思いつつ、今ある薄紅葉で秋のお山を十分、堪能できた一日でした。

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西ノ冠岳から二ノ森、鞍瀬ノ頭、堂ヶ森に続く稜線

 

四国カルスト・天狗高原 天空のお花畑と大引割・小引割探訪

天狗高原 大群落のお花と不気味な地割れ「大引割・小引割」

 9月に入っても一向に炎暑は収まらず、お四国も連日の30℃超え。夏バテに鞭打つような平地から逃れ、涼味満点の高原散策を狙って、四国カルスト天狗高原へチーム四名で軽トレッキングに行って参りました。

 日本三大カルストの一つ四国カルストは、石灰岩独特の景観と酪農や風力発電の大風車までそろう、標高1,400mの別天地。すぐ横には、昭和46年から全山石灰岩の塊を採掘中の天空のピラミッド、鳥形山(1,459m、現在は採掘で200m程低くなったらしい。)もあります。

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姫鶴平からの大風車

 当会でも、この山域は、過去に姫鶴平から森の巨人たち100選選定の「猪伏の大栃」を訪ね、でっかい栃の木、美しい苔の森、手がしびれるほど冷たい欅平の水に感動したことを覚えています。

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猪伏の大栃伏(幹回り6m超)

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しっとりと落ち着いた雰囲気の苔の森

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欅平の水場(30秒も手を入れるとしびれる冷たさ)

 今回は、天狗荘(標高1,367m)を出発し、カルストの東端に位置するカルスト最高地点の天狗ノ森(1,485m)から黒滝山(1,367m)の稜線を縦走、大引割峠(1,087m)の手前にある、国天然記念物「大引割・小引割」を探訪し、帰路は天狗高原セラピーロードを出発地まで戻る、周回コースを歩くことに。

 国道33号線落出のループ橋を渡って同440号線へ。途中の高野(標高550m程)から県道303号に入り、一路、四国カルストを目指します。道は曲がりくねった急こう配で片道1車線をキープ、幅員に余裕があって走りやすいものの、標高1,000mを超える辺りからは雲(ガス)の中に。そのままガス走る天狗荘に到着、ちょっと離れると車も見えにくい濃さです。

 身支度を整えて、8:45駐車場を出発。バンガローの間を抜けて天狗ノ森を目指します。残念ながら稜線も一様に濃いガスに覆われ、展望は望めませんでした。小さな石灰岩がのぞく瀬戸見ノ森から稜線歩き。晴天性のガスがゆっくりと流れてゆく広葉樹林帯は程よい明るさで気温21℃、日差しを浴びることもなく、狙った通りの涼しい高原漫歩になりました。

 お花類はあまり期待していなかったのですが、早速、麗人草の群落が。

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麗人草

 黒滝山まで縦走してみて、後で分かったけれど、この山域はせいぜい2種類ほどのお花がゾーンごとに大群落を構成、歩き進むにつれてその種類が変化する、なんともユニークなお花ロードになっていました。

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シオガマギク

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モリアザミ

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ツクシクサボタン(筑紫草牡丹)

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シコクブシ(トリカブトの仲間)

 種類は少ないものの、お花の量は予想以上でお四国の花の名山、皿ヶ嶺にも遜色なく、スポット的にポツンと咲く花もあって結構、楽しめました。

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ミヤマモジスリ(ネジバナの一種)

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オオマルバノテンニンソウ

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ツルニンジン

 明るいブナの森を縫うように進み、10時前さほど厳しい登りも経験することなく、あっさり天狗ノ森に到着。特徴のないピークでちょっと休憩したのち、黒滝山への鞍部、姫百合平への下りに。この間も種類は変わりますが、お花街道が続きます。

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ツリガネニンジン(釣鐘人参)

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アキノキリンソウ

 

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シコクママコナ

 平の苔むした休憩所は、中に笹が繁っていて使うのをあきらめ、ベンチで休憩。しかし、休日なのに出発してから誰にも会いません。静かでよいといえばそれはそうなのですが…。

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黒滝山へのみち

 黒滝山は、地形図で見るほどの距離は感じず、少し険しいはずの道もあっけなく越え、ブナの木と石灰岩でごつごつした山頂に11:30過ぎに着いてしまいました。稜線漫歩はここが終点。これから先は稜線を離れて、環境省選定の「四国のみち」に合流、「大引割・小引割」に向かうことになります。

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道端にあったイグチ

 山頂からは、ぐるっと右回りの下り。ルートを戻っているような妙な錯覚に陥る、変な道です。お花はぱったりとなくなったうえに、途中にはグロテスクなツチアケビもあって、どこかあやしい感が引き立ちます。

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ツチアケビ(かなり大きい株)

 そうこうするうちに、路は大引割峠に向けた、緩いカーブに。周りは、ヒメシャラの大群落から鬱蒼と馬酔木が生い茂る薄暗い道に変化し、薄気味悪さもだんだん募ってきます。

 ここで今日初めて人(夫婦連れ)に出会いました。向こうは全く気付かず、声掛けして初めて「ああ、やっと人に会えた。」と安心されたご様子。(この雰囲気で)お気持ちはよくわかりますとお答えしておきました。

 12:30、道が平坦になったなと思ったら、目的地の「大引割・小引割」に着いていました。適度に陽が差し込んで休憩にはもってこい。ちゃんと案内板やテーブル付きのベンチもあって、早速、傾き加減のベンチで昼食に。

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大引割・小引割案内板

 大引割は、ベンチのすぐ近くに位置する、なんとも不気味な地割れ。平坦地にいきなり幅2~10mくらいの割れ目があって、吸い込まれそうな感じ。深すぎて何処から見ても底は見えません。

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大引割の割れ目①

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大引割の割れ目②

 逆層の赤みがかった岩に苔がびっしりと付いて、赤と濃緑のおどろおどろしさ。色々試してみてもカメラに綺麗に写りません。歩いて5分程の小引割も全く同様で、早々に引き上げることに。

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小引割

 帰路は、四国セラピーロードと銘打った、桧や雑木のチップをまいている(らしい)道を戻ります。駐車場まで標高差300m程を登る緩い勾配の巻道は、ブナ中心の広葉樹林帯と林床に生い茂る笹のコントラストが優しく、セラピーの名前通り雰囲気の良い道でした。

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ゆったりとガスの流れる帰り道

 何処を歩いてもお山の性格が出るようで、この巻道も天狗荘近くの一帯にヒナシャジンの大群落が続いていました。

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ヒナシャジン

 四国カルストは、ハンカイソウのお花畑で有名ですが、天狗高原もお花散策の楽しめる、なかなか素晴らしいコース、特徴は大群落で堪能できるということでしょうか。お花の楽しみ方のバージョンが一つ増えた山旅でした。

真夏の東赤石山

東赤石山  お山のお花を楽しむ皆様の内輪話では、西の早池峰山といわれるらしい。

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オトメシャジン(ききょう科)

 8月も中旬お盆直前、お四国も夏真っ盛り。こういう時節は、風が通り、涼しい沢沿いの日影路が一番。で今回は、愛媛県東予地方にある東赤石山(1,706.6m)へ。標高1,500m程までずっと樹林帯の沢路で日差しを避けることができ、少し遅いけれど固有種オトメシャジンをチーム三名で観賞に行ってきました。

 入口の工都新居浜市。最近、JR駅前にあかがねミュージアムがオープンしましたが、展示の質では、山根公園横にある、旧財閥Sグループ企業が資金を出し合って建設した別子銅山記念館に勝るものなし(と勝手に思い込んでいる)。その建物や東洋のマチュピチュ東平(とうなる)ゾーンへの分岐も横目に通過し、別子ライン(県道47号線)の曲がりくねった道を進みます。

 標高980mの大永山トンネルを抜けると、旧別子山村。別子ダムや西赤石山登山口の日浦を過ぎ、緩い下りながら見通しの悪い舗装路を走って、標高655mの瀬場登山口に到着。先着は7台。橋を渡って終日日陰になる場所に車を止めました。

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瀬場登山口(筏津とともに東赤石山への入口)

 8:20出発。ここから山頂まで標高差1,000mの悪路に近い道が待っています。日差しは強烈でもすぐ桧の植林帯のジグザグ道に。30分程で筏津登山口との合流点、豊後。風が通って涼しい中、ちょっと一服です。

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豊後

 少し涼んでから瀬場谷沿いのトラバース道を進みます。右側に八間滝の白いラインがくっきりと。急登と平坦道の繰り返しの道は沢まで7~80m近い落差の急こう配の崖の上です。危ない、危ない。この辺りは、桧植林帯と天然の広葉樹林帯が交互に現れる、明るく、快適な日影路です。

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八間滝(ちょっと、全容が見えないけれど…。)

 40分程で沢沿いと尾根両ルートの分岐の橋に到着。涼味満点の沢風に吹かれ、冷たい水で顔を洗って汗が少し引きました。真夏のお山に尾根ルートの急登は避けたいので、沢沿いに赤石山荘(1,550m)に至るコースに入ります。途中、崩れかけた木道の小橋、形がラッパそのもののウスタケ(有毒)も。路はだんだん悪くなってゆきますが、まだこの頃は皆さん、元気がありました。

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しっかりした分岐の橋

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尾根コースとの分岐

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朽ちかけた小橋を渡る

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ウスタケ(ラッパタケ科・有毒)

 標高1,400mを超えると、沢路は源頭の様相に。明瞭ながら、一抱えもあるような橄欖岩も混じる階段状の悪路に変化。木々も灌木化して背中にだんだん日差しを浴びるようになり、疲労がジワリと効いてきます。

 でも路周辺にそろそろお花が…。 最初に花期の長い、シラヒゲソウ。この暑さに負けていません。ついでシモツケ、紅白の見事なバランスです。

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シラヒゲソウ

 

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シモツケ

 12:50赤石山荘着。山荘主の高齢化で避難小屋化の話も出ているようですが、山荘の周りは布団だらけ。天日干しに何人か来られているようでした。水場でお水を補給させてもらい、山頂に向けて橄欖岩帯のトラバース道を歩みます。女性にはつらい岩場歩きのうえに、滑りやすい性質の岩なので神経を使います。

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赤石山荘中途、八巻山の稜線

 と、ありました、ありました。岩陰に気品のある、透明なブルーの釣鐘状の小さなお花。ここにしかない固有種、鐘形花冠のオトメシャジンです。優美なお花を間近かにして疲れも吹き飛びます。

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オトメシャジン(東赤石山の固有種)

 東赤石山は、東北の早池峰山と並ぶ蛇紋岩や橄欖岩系のお山。この岩は成分のマグネシウムが植物の成長を妨げるようで独特の植物が進化してきました。10km程西に位置し、まれにみる強風域の銅山越(1,300m)にツガザクラ、アカモノが生育していることと好一対です。

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コオニユリ

 30分程で山頂への分岐着。ここから15分は汗を絞られる約100mの一直線の急登です。風もなく暑い! やっと稜線の赤石越(1,660m)に出て新居浜側からの登山道とここで合流。メンバーもこの暑さで大分バテテきて、無理もないかなと小休止。もうすぐ山頂と元気づけして日陰のトラバース15分を進む。

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赤石越への分岐

 13:40予定より1時間遅れで山頂に。大きな橄欖岩の重なった山頂からは、西に岩峰群の八巻山、遠く石鎚山系、北に新居浜市街と今日は好展望です。

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東赤石山山頂

 

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山頂より八巻山、遠く石鎚山

山の神も真夏に苦労して登ってきた登山者に配慮して頂けたのでしょうか、山頂標識近くに地味に咲いていた、イワキンバイが綺麗でした。

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山頂の割れ目に咲いていたイワキンバイ

 

2019年(令和元年)の記録 黒部源流域の山々とお花畑を歩く ② - 北ア・黒部五郎岳~鷲羽岳・水晶岳・赤牛岳~高天原

入山3日目・7月31日(水)天気:ガスのち快晴

 中日の今日がこの山行のメイン。初日の疲労も大分抜け、予定より30分早く5:30小屋を出る。ガスの中、水晶岳ピークへ。途中のガレ場でミヤマウスユキソウ(変異種?)の大群落を撮る。朝一から運がいい。

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ミヤマウスユキソウ

 山頂直下の少し悪いガラ場を乗り切り、6:10ゴツゴツした岩塊だらけの水晶岳(南峰2,986m)着。4座目も古びた木の標柱だけで、ガスで周囲が見えないこともあり、剣岳に次ぐ標高というに地味で殺風景な印象。でも、このピークに立つには最低2日は必要なので、それなりの達成感はあった。 

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水晶岳山頂

 しばらく待ったけれどガスが切れる様子がなく、二等三角点のある北峰へ向かう。2,977mのピークまで10分弱。双耳峰は燧ヶ岳や鹿島槍が美しいけれど、水晶は近すぎるかも。ガスが一瞬切れ、温泉沢ノ頭方面が視界に飛び込んでくる。冒頭の写真のとおり、切れ落ちた岩峰群と丸い温泉沢ノ頭。まるで数年前にトレースした奥穂~西穂の崩壊斜面で、「えっ、ここ稜線通しの道なの?」と一瞬思う。 

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水晶岳北峰三角点

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北峰からの岩峰群

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水晶岳南峰を振り返る

 6:35北峰から温泉沢ノ頭に向けて、急降下する。実際は岩峰群を巻く下りでイージーだけれど、ザクザク次いでガラ場歩きで確かに良くはない。ここも高山礫地のお花畑が散在していて、ハクサンフウロ、ミヤマアキノキリンソウ、ミヤマコゴメグサ等が咲いていた。7:40稜線と温泉沢に下る分岐点着。この頃から湿気も抜けたのか、ガスが切れ始めた。

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ハクサンフウロ

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ウサギギク、ミヤマアキノキリンソウ、ハクサンフウロ

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ミヤマコゴメグサ

 分岐に深夜2時に奥黒部ヒュッテを出たという、大学出たての男の子が来る。赤牛岳越えでの6時間はこの年齢でないとできない芸当。でも、固定?の縦走路を夜歩く意義がよくわからない。じじいは赤牛岳の空荷ピストン、膝が痛いという男の子は温泉沢とすれ違いだが、最終目的地、高天原山荘は同じ。再会を約して別れる。

 赤牛岳への緩いアップダウンの稜線は、砂礫とハイマツ帯の快適な縦走路だ。悪天時は目標物に乏しいけれど稜線を外さなければ大丈夫だろう。水晶岳はこちら側から見た方が裾野も広く、直下の雪渓がアクセントになって立派な山容になる。

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赤牛岳への稜線

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縦走路からの水晶岳(左奥)

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薬師岳遠望(でかい‼)

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水晶岳(右端)と槍ヶ岳遠望

 9:40北アの展望台といわれる赤牛岳(2,864m)山頂着。昼食。後立や剣方面は雲に、薬師や裏銀座方面はガスで展望はよくなかったけれど、快晴で気持ちがいい。これで目的の5座を完登。じじいには上出来だ。 

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赤牛岳山頂

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赤牛岳山頂から水晶岳、雲ノ平

 帰途、赤い点が動くので、見るとクジャクチョウ。タテハチョウ科の北方系の蝶で北海道ではおなじみ。餌場の少ない稜線では大変だろう。最低鞍部近くの雪渓に寄道して氷ミルクで祝杯を挙げる。泥食ってるようなものでもこの時期に冷たいものは最高のご褒美だ。 

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クジャクチョウ

 12:00分岐帰着。水晶小屋のあんちゃんから「楽しい沢ですよ。」と聞いた、温泉沢への標高差630mの急傾斜の下りに入る。実は赤牛岳ピストン途中、ここを登る単独行者を見ていた。無事、登り切れたらしい。

 道は砂礫交じりのザクザク道。でも傾斜がある分浮石だらけで、油断するとズルズルと崩れ、落石も気になる、なんともいやらしい下り。慎重にステップを選び、樹林帯にこぎつける。標高も2,200m台になるとさすがに暑く、13:25沢が大きく左に屈曲するポイントで大休止。すぐ先の雪渓からの冷たい水で一息つく。

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泉沢への下り中途からの赤牛岳への稜線

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木彫りの道標

 ここからは沢歩きで少なくとも10回は両岸を行き来した。沢石のペンキが道標代わりで、ここにあるはずというポイントはきっちり押さえてあり、カンカン照りの中、結構、面白かった。

 14:25、硫黄が沢に流れ出ているなと思ったら、突然、露天風呂が目の前に現れ、ちょっと驚く。2.5万地図の温泉マークと少しずれているものの、ここが楽しみにしていた高天原温泉らしい。対岸には、男性、女性それぞれ専用の仮設小屋もあり、入浴者は快適そうだった。入浴はさておいて、まず高天原山荘を目指す。 

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露天風呂(硫黄泉)

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入浴小屋(左:男性、右:女性)

 15:00山荘着。まだ新しく広くて快適な小屋だった。ランプ主体だけれど、水が美味しい。手続きを終え、着替えを持って温泉へ。汗まみれの山行途中で、入浴ほど嬉しいものはない。がら空きだった露天風呂を使う。白く濁った硫黄泉で湯の花はかなり多く、湯温も丁度良い具合だ。すぐ横を流れる沢本流を何度も往復して、しばし、ゆったりさせてもらった。小屋への帰り、最後のアプローチが急登で、また汗をかかないよう気を使ったのはご愛敬。食事も穂高岳山荘とまではいかないものの水準以上で、天泊できないデメリットを十分に補っている。

 

 入山4日目・8月1日(木)天気:快晴

 今日は薬師峠までの実質、移動日。少しゆっくりして6:00に小屋を出る。昨日の男の子は雲ノ平に寄りますと言って、先に出発した。すぐ右手のニッコウキスゲ主体の湿原に朝日があたり、爽やかな朝だ。道は朝露の湿原道から高天原峠への石と木の根の悪路にまた変化。黒部源流域はこのパターンの道が多く、最悪は薬師沢から雲ノ平に至る急登道だ。大昔に歩いて嫌になり、今回は難路(?普通の道だった)の大東新道を選択。6:45峠通過。黒部源流の河床までE~B沢と横断し、アップダウンはあっても、意外に落ち着いた趣のある道だった。 

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朝日あたる湿原

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雲湧く水晶の稜線

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高天原峠の道標

 針葉樹林帯の沢道は花が多く、沢を渡るごとに、タカネグンナイフウロ、ハンカイソウ、オオバギボウシ、オタカラコウ、シナノオトギリ、セリバシオガマ等と種類も多い。8:05 C沢通過。どれも沢というより立派な峡谷である。路肩に巨大イグチが鎮座していて、急ぐ道でもないので一服する。

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C沢(沢の規模を超えている)

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クルマユリ

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オオバギボウシ

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タカネグンナイフウロ

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ハンカイソウ

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道端の巨大イグチ

 B沢を黒部本流まで降り切って右岸沿いの河床歩きとなる。これは増水時は歩けないなと思う。河床歩きは尾根道へ移行する場所を見落とさないのがポイントだけど、ここは何回もそれを繰り返し、結局、薬師沢までほぼ河床通しだった。

 10:05対岸の薬師沢小屋への吊橋を足かけ45年ぶりに渡る。久しきかな、感慨も枯れはててもうないが…。 

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B沢と黒部本流の合流点

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ズダヤクシュ

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オオバミゾホウズキ

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中途の冷たい清流

 もう残るは太郎平への緩い傾斜の登り。展望も限られ、途中の湿原が一服の清涼剤になるくらい。暑いのでピッチを落とす。樹林帯でギンリョウソウを見つけたり、くだんの男の子に追い抜かれたり である。

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夏の雪渓と稜線

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ギンリョウソウ(こんなところに…)

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木道とニッコウキスゲの湿原

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オトギリソウ

 11:30第一渡渉点の木橋を過ぎ、太郎平への最後の登り。木陰を選び小休憩を繰り返してのんびり12:30太郎平小屋着。大学同期と薬師に登った10年前とあまり変わっていない。13:00薬師峠天場。ツェルトは、両側を開けると吹き通しで涼しいのがメリットの一つ。缶ビールで1日早い完登祝いをし、たっぷり昼寝も。天場は50張以上と混んでいたけれど、ツェルトは3組だけだった。

 

入山5日目・8月2日(金)天気:快晴

 下山日。またあの倒木帯を通るのかと思うと、うっとうしいがやむを得ない。タイムロスも考え5:30に出発。神岡新道分岐まで緩い登りが続く。最終日に紺碧の青空と白い雪渓という、典型的な夏山稜線歩き。

 7:30神岡新道分岐。下山ルート全景を初めて見渡せた。春スキーにはおあつらえ向きの斜面でも稜線までは急登、その前にある長大な尾根歩きとセットでは、人は入らないだろうと思う。 

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神岡新道分岐からの下山道全景

 下りは早い。途中の池塘群でコメツツジ、キンコウカ、ワタスゲ等を撮っても、9:00には北ノ俣避難小屋に帰着。長靴を回収、人が通った気配はない。 

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コメツツジ

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キンコウカ

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避難小屋手前の池塘

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ニッコウキスゲとキンコウカ咲く池塘

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ワタスゲの池塘

 ツキノワグマ対策、カメラの収納、水も補給し9:20下山開始。10:00寺地山、11:15神岡新道分岐(仙人峠)と倒木帯をクリアしながら下りに下る。途中、ツキノワグマが倒木の陰(姿は見えず。)からグアッグアッと威嚇してくるので、無視して笛を吹きつつスピードを緩めず通り過ぎる。大過なし。

 標高も1,700mを切るようになると、道周辺にアカモノの群落が増え、実はシャリシャリした食感と後口が良く、休憩のたびに頬張る。長大な尾根と倒木帯、そして暑さにいや気がさした頃、登山口の愛車に着いた。13:00下山届を出して今年の夏山縦走が終った。

 

(あとがき)

 黒部源流域の主要5座、黒部五郎、三俣蓮華、鷲羽、水晶そして赤牛をめぐり、高天原の湿原と温泉も堪能できた。北アでは例が少ない、道の悪さと連日の暑さには閉口したが、よく歩く9月から雪渓とお花畑のある花期の7、8月を狙って大正解だった。

 温泉の着替えや交換レンズ等もあって荷が11.5kgと重く、初日の12時間の行動で消耗度は半端なかったのは反省点か。それでも、じじいの体力で大峰奥駈道と同じ4泊5日を同様の天泊装備で真夏に歩けたのは、収穫といえば収穫だろう。

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夏の雲とワタスゲ

 

2019年(令和元年)の記録 黒部源流域の山々とお花畑を歩く ① ― 北ア・黒部五郎岳~鷲羽岳・水晶岳・赤牛岳~高天原

 

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ガス走る水晶岳北方稜線

 遅れに遅れた2019年の梅雨明けを待ちきれず、7月末に富山県有峰口へ。ずっと宿題になっていた花期の黒部源流域の山々を4泊5日で周回してきた。

 

 入山は飛越トンネル(北ノ俣岳)登山口から。土砂崩れのため飛騨側の飛越林道が使えず、有峰林道経由で28日(日)夕刻、登山口に着いた。この日は車の横にテント泊、通行止めでもオレンジ色のナトリウム道路灯が煌々と明るい、妙な一夜だった。

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飛越トンネルと北ノ俣岳登山口

 過去にトレースした折立も考えたけれど、その日のうちに黒部五郎小屋に着くには、ツキノワグマの巣でも標高差がより小さく、駐車も確実な飛越トンネル登山口の方が優れる。しかし、お山は台風通過直後で湿気が残り、稜線はガスと空模様はいま一つ。加えて初日は想定外の誤算にも見舞われてしまった。

 

入山初日・7月29日(月)天気:曇のち雨、ガス

 初日は長丁場だ。黒部五郎小屋までコースタイム10時間。それに主稜線までの標高差約1,200m、北ノ俣岳避難小屋までは有名な泥濘の道が待っている。中途ビバークも想定し、曇天の中、5:15登山開始。避難小屋までは長靴を使い(結果的に泥濘はごく一部だった…。)、ツキノワグマ対策にラジオと笛を用いる。

 

 鬱蒼とした樹林帯の中、神岡新道分岐(仙人峠1,842mの表記あり。)、寺地山と続く冗長な尾根を通過し、熊さんにも遭遇せず(ラッキー)、森林限界の避難小屋に9時前に着く。ニッコウキスゲが美しい。

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ニッコウキスゲ

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タテヤマリンドウ

 避難小屋までの標高差600m、4時間は、休憩1時間を除くとほぼコースタイムどおり。けれど、かなり消耗した。原因は風倒木である。ほぼ全域に発生し、ほとんど未処理で通過に難渋した。初日の序盤で約1時間の遅れ。北アでもメインルートではないコースの整備は不十分と言わざるを得ない。 

 避難小屋は有料道路料金所で「倒壊したらしい。」と聞いていたけれど、傾いてはいても立っており、高床式の基礎部分にはトタンやベニヤで仮囲いし、人2人くらいが横になれるスペースが作ってあった。登山靴に履き替え、長靴をデポさせてもらう。

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北ノ俣岳避難小屋

  ここから主稜線までの残る標高差600mはほぼ直登の厳しい登り。最初、少しだけかなり傷んだ木道。ガス走る中、登山道を一歩一歩、踏みしめて登るしかなく、ビバークに備え水1.5㍑を余分に持ったのも効いた。

 正午にやっと北ノ俣岳に到着。主稜線に乗ったとはいえ、まだ先は長い。天気はここ数日、15:00前後から崩れるパターンで、黒部五郎岳を越えるまでは何とか…と思う。

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ミヤマダイコンソウ

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コケモモ

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ハクサンシャクナゲ

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トウヤクリンドウ

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チングルマ

 13:30中俣乗越。吹きっさらしでツェルトは張れない。時間もまだ早く、晴れ間ものぞくので、黒部五郎小屋まで頑張ることに。でもこの先、2,568mピークと黒部五郎本峰の登りは、正直厳しかった。持ちそうだった空模様も本峰の登り中途からついにポツポツ落ち始め、黒部五郎ノ肩に着いた15:00には本降りに。雷様が来ないうちにと急いで空荷で山頂をピストンする。ハイマツ帯で雷鳥さんに面会、この雨で猛禽類に襲われる心配はないだろう。15:18標高2,839mの黒部五郎岳山頂。雨とガスで展望のない中、カールの雪渓はなぜかきれいに見渡せた。 

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コシジオウレン

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ヨツバシオガマ

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チシマギキョウ

 

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黒部五郎岳山頂

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山頂から望む黒部五郎カール

 黒部五郎岳のカールは、雪渓からの水量豊かで斜面一面のコバイケイソウの大群落と相まって雨中ながら見ごたえがあった。景色、登りがいをともに満たし、なかなかよい山だ。

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黒部五郎カール①

 

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カールから望む黒部五郎岳山頂とコバイケイソウの群落

  もう小屋までは起伏のないトラバース道だけ、でも1:20のコースタイムから予測はしていたが、案の定、石と木の根の絡んだ悪路だった。17:00黒部五郎小屋に到着。この日の宿泊者のトリをはからずも務め、受付で登山口を飛越トンネルと伝えるとあきれられてしまった。初日から雨具を濡らしたので、天泊から小屋素泊りに変更する。

 小屋から50m程離れた天場は、笠ヶ岳の異形の稜線が正面に浮かぶ、なかなか良い天場だ。夕刻には、今日の12時間に及ぶ苦闘をねぎらうように綺麗な夕焼けとなった。 

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黒部五郎小屋天場より笠ヶ岳(右奥)

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黒部五郎小屋からの夕焼け

入山2日目・7月30日(火)天気:曇、ガスのち晴

 当初からこの日は準休養日扱いとし、鷲羽岳の急登はあっても、水晶小屋までの6時間弱をのんびり歩くつもりだった。実際、シーズン最盛期のお花畑を撮りながらで、約1時間遅れの水晶小屋着も想定内。けれどその後が問題だった。現実はなかなか思うようにはいかない。

 

 5:55黒部五郎小屋発。今日も台風残滓の湿気でガス、展望はない。のっけから2,661mピークまで標高差330mの急登、また石と木の根である。昨日の疲労が抜け切っていない身にはこたえる登りだ。

 道沿いのキヌガサソウ、ツマトリソウ、ゴゼンタチバナ等の白系のお花で気を紛らしながら進み、三俣蓮華岳と三俣山荘への巻道の分岐に7:30に着く。ウサギギクが綺麗だ。分岐にザックデポしてガスの中、三俣蓮華岳ピークまでピストン。これで2座目。道は礫交じりの砂道(本来の北アの道)に変化し、ぐっと歩きやすくなった。

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ウサギギク

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タカネヤハズハハコ

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コイワカガミ

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三俣蓮華岳山頂

 三俣山荘までの巻道は、雪渓を二つ渡る、高山草原のトラバース。カールの中の快適なお花畑で、シナノキンバイ、キバナノコマノツメ、ヤマガラシ等が咲き誇る。ガスもこの頃から切れ始め、鷲羽、ワリモ、祖父岳の稜線など、やっと北アらしい景観を展望することができた。冷たい雪解け水で顔も洗え、リフレッシュする。 

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鷲羽、ワリモ、祖父岳の稜線

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シナノキンバイ

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キバナノコマノツメ

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ミヤマダイモンジソウ

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ヤマガラシ

 10:00三俣山荘。昼食を取り、鷲羽岳の雄姿を入院中の香川の友人にLINEする(実際には圏外で送れなかったけれど…。)。山荘は外観こそ地味でも、中は清掃と整理整頓が行き届き小ぎれいで、少し離れた天場も砂地で広くよく整備されていた。「時を守り、場を清め、礼を正す」は真理だけれど、山荘オーナーは判っているなぁと感じた。明日の行動用に水2㍑を補給。 

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三俣山荘から望む鷲羽岳

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ワリモ岳からの見返り鷲羽岳

 10:40いよいよ山荘からの標高差384mの鷲羽岳の登り。実物以上の高度感があり、まるで南ア・核心部みたいな登りやなと思う。道は砂礫交じりのジグザグ道で地道に高度を稼ぐ。中途、火口湖の鷲羽池がくっきりと浮かび、2.5万地図よりぐっと大きい印象だ。前衛峰を乗っ越して12:00過ぎ2,924mの山頂着。ガスが正面の三俣蓮華岳の山頂を隠し、槍ヶ岳等も望めないけれど、目的の5座のうち3座目を淡々とクリアする。 

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鷲羽中腹からの鷲羽池

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鷲羽岳山頂

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鷲羽岳山頂からワリモ岳への稜線

 ここからワリモ北分岐までの痩せ尾根の巻道と水晶小屋まで続くなだらかな傾斜の稜線は、典型的な高山礫地のお花畑でイワウメ、シコタンソウ、イワベンケイ(雌株)、イワヒゲ、ツガザクラ、ハクサンチドリ、ミヤマオダマキ、イブキジャコウソウやシオガマ類など、役者が目白押しだった。

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イワウメ

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シコタンソウ

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イワベンケイ(雌株)

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タカネシオガマ

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ミヤマクワガタ

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イワヒゲ

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ツガザクラ

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ハクサンチドリ

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アルプスギンウワベ

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ミヤマオダマキ

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イブキジャコウソウ

 写真を撮りながらのノンビリペースでも14:30水晶小屋着。北アでもトップクラスの強風地帯に居を構えるだけあって地に張り付くような定員30名の小さな小屋だ。 

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水晶小屋と野口五郎岳

  誤算その2。小屋は大変な混みようで、受付のあんちゃんまで混乱してる。この日は小屋始まって以来最多の80人の宿泊者。布団1枚に2人寝てもらいますというので、小屋前でのツェルト泊を提案すると「オーナーにどやされるので、勘弁してくれ。」というので渋々了解する。結局、小屋でも過去、例がないという土間(シート敷き)で決着。

 じじいの装備は天泊仕様でシュラフもマットもあるし、大混雑の2階の人いきれの暑さや寝るスペースも考えれば絶対こちら。実際、涼しくて手足も伸ばし放題、快眠できた。夕食のカレーも少し薄かったけれど美味しい部類。スタッフも明るく、できればもう一度、ゆっくり泊まりたい小屋だ。

(黒部源流域の山々とお花畑を歩く ② へ続く。)

 

剣山系・天狗塚~三嶺

 

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しっとりと落ち着いた峠への登山道

 6月も下旬に入り、1か月先の北ア山行のテストランもあって、久しぶりにイザリ峠から三嶺まで1泊2日で往復しました。R32号大歩危から橋を渡って祖谷・剣山方面へ。途中、京上からR439号に合流、この辺りは走りやすい快適ロードです。今回は東祖谷下瀬で災害復旧工事中のためう回路を使いました。東祖谷小から入り、例の落合集落の展望台がある道です。正式名は、国重要伝統的建造物群保存地区 落合集落展望所 という、長~い名前です。ウイークデイなので他にお客さんはなく、正装の案山子さんたちがにぎやかに出迎えてくれました。

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落合集落遠望

  

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正装の案山子さんたち

 このあと、九鬼で西山林道に合流、有難いことに林道はほぼ再舗装復旧されており、楽しい山道走行ができました。

 13:40登山口のイザリ峠着。先着は1台だけでした。曇天で梅雨入りも近いのか蒸し暑く、下り坂の天候も雨具や登山靴等、雨天時のチェックも兼ねての山行なので覚悟の上。14:15出発です。

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1年2か月ぶりの登山口

 稜線通しの登りは、意外に風もあって涼しく、40分程で1,476mピークに到着。降っては来ないものの、ガスが少し走り出し、だんだん粒が大きくなってきている気がします。

 イザリ峠手前、ミヤマクマザサという笹の一帯に出る直前で先着車の5人パーテイとすれ違い。どうやら天狗塚の日帰り山行だったようで、山頂から峠周辺までガスで何も見えなかったとぼやいていました。ここでついにポツポツ落ち始め、雨具上下を装着。急に強くなった吹上風に押し上げられながら峠まで一気に登り切りました。

 16:00イザリ峠。雨で天狗塚ピストンをあきらめ、本日のお宿、お亀岩避難小屋を目指して道を左に振ります。16:05天狗峠(綱付森分岐)通過、ここから先はちょっといやらしい下り道です。ガスと強風で見通しが良くない中、滑らないよう慎重に。風上側に何か動くものがあるなぁと思ったら、すぐ脇に鹿のつがいが立っていました。向こうも全く気付かず、お互い固まりましたが、次の瞬間には跳ねてガス走る笹原に消えてしまいました。

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お亀岩から今日のお宿の避難小屋

 16:30 お亀岩避難小屋着。久々の感慨もそこそこに、濡れた雨具もろもろを干し、銀マットをお借りして寝床設営、夕食を終えると、後はすることは唯ひとつ。お楽しみの焚火が待ってます。

 高知県が設置する避難小屋には薪ストーブが設置(有難うございます。)されていて、この小屋には立派な大型のストーブがあります。学生時代から慣れ親しんだ焚火も最近は沢登りを除いてストーブを燃やす形式がほとんどで、それすら可能な箇所は限定されているのはお四国も例外ではありません。

 この場所は、豊富な薪を供給してくれ、冬は雪崩から守ってくれるウラジロモミ帯が小屋の背後にあるという、素晴らしい立地条件です。

 焚火は、自分がその日燃やす薪は自分で集め、余った分はストックに回すことを原則にしていますが、今日は雨天のため初めてストック分を使わせて頂きました。火を焚きながら飲むビールは格別、心も十分に温まりました。

 夜半、明るいので外に出ると、雨はすっかりあがり、綺麗な月夜になっていました。いつ来てもお山の月見はよいもので、標高は関係ありません。「岳の月われなきあともかくあらむ」(福田 蓼汀)の句がすぐに浮かんできました。本当は涸沢あたりが似合いそうですが、ここでも全くそん色はないと思えました。

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ガス走る三嶺山頂

 翌日も、曇天気味の天気で7:00三嶺に向けて小屋を出発。ザックはデポせず背負います。7:40西熊山、8:00大タオを登り返した先で一服し、8:50三嶺山頂着。ガスがかかって展望はありません。やや時期遅れで咲いていたコメツツジだけ撮って、あっさり山頂を後にします。

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三嶺山頂、運悪くガスに巻かれる。

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まだ残っていたコメツツジ

 帰りも稜線の美しい笹原漫歩。来るたびに新しい発見があってなかなか味のあるルートです。

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たおやかな天狗塚への縦走路

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途中の白骨林帯

 イザリ峠登山口へ下山するルートは、通常は西熊山から小屋方向に少し下ったコルから右に振って、正規ルートの走る尾根の沢を挟んだ反対側の尾根を下り、途中にあるカエデの大木に挨拶して、駐車場に直接アクセスするのですが、今日は天狗塚に寄るために昨日歩いた道を戻ることにします。

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カエデの大木(2018.4月)

 10:48お亀岩通過。11:15イザリ峠着。高曇りで風はなく、ここにザックをデポ。この先天狗塚の山頂まではゆるやかなアップダウンの趣のある道です。11:40のんびりイワキンバイを撮りながら山頂へ。牛の峯が本当に大きいと何回ここに立っても思うのは何故でしょうか。高知県側のはるか下の笹の斜面では、鹿の一団が笹をお食事中でした。

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天狗塚(イザリ峠から天狗塚へ続く登山道から)

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イワキンバイ

 

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牛ノ峯、いつ見てもあきれるでかさ

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笹を食む鹿の群れ(200mmで一杯一杯)

 山頂で少しゆっくりしてからイザリ峠へ戻り、12:20下山開始。樹林帯に入るまでの道は浮石ガラガラでガラ場歩きの格好の練習台です。

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笹の花が咲いていました。

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この辺りは自然の庭園です。

 3人の家族連れ一行とすれ違うとすぐ1,476mピーク。風が通り、気温18℃と涼しいこともあって、一服には本当に良い場所です。13:25登山口に帰着。どう考えても、雨天時のチェックなどではなく、焚火しに来たとしか思えない山行が終了です。