10月上旬、お四国も平地ではまだ猛暑の余韻がそこかしこに残るものの、新涼に体がやっと少し楽に。
今回は、例年秋の定番、東稜から石鎚山天狗岳へ。紅葉の頂上稜線とお四国でもちょっぴりアルペン的な雰囲気が楽しめるコースを歩いてきました。
石鎚山は、約1,500万年前の火山の外輪山の一部が残ったもので、東から順に南尖峰(なんせんぽう1,982m)、天狗岳(てんぐだけ1,982m)、弥山(みせん1,972m)の三つのピークの総称(最も西にある北岳(1,920.9m)を含める説等もある。)です。
主要なルートは、西条市の成就社からの表参道、久万高原町の面河からの裏参道のほか、石鎚スカイライン土小屋や二ノ森(1,929.6m)からのコースなどがあります。
東稜ルートは、土小屋ルートの中途から頂上から東に派生する尾根の末端に取り付き、南尖峰に直接突き上げる、バリエーションルートの一つです。
春の新緑とアケボノツツジ、秋の紅葉の名所ではあるものの、急登と笹漕ぎの連続、最後の南尖峰直下、中沢源頭から稜線までの間はクライミングの基本技術も必要で、山登りの基本、自己責任原則への十分な理解が求められるルートでもあります。
ウイークデイというに、山頂付近の紅葉予想にこの好天のせいか、石鎚スカイライン土小屋駐車場は大混雑で既に満車。
10月らしい涼しさの中、8:00に出発し、30分程で東稜への分岐点へ。まだ朝なので東稜に入るとぐっと登山者が減少、周りは少しだけ静かになりました。
途中の矢筈岩(やはずいわ)の直下をまくところまでは展望のない樹林帯、岩を乗り越えたり、笹を漕いだりしながら進みます。ずいぶん前に某登山地図販売会社の市販地図にコースが掲載されてから、それまで土日でものんびり昼寝が楽しめたこのコースも人が増え、路も随分と荒れてしまいました。
9:30矢筈岩下からの笹の急登を登り切って、やっと南尖峰が望める地点に到達。紅葉はまだはしりですが、冷え込みが緩いせいか、色はもう一つ。北側に瓶ヶ森雌山(1,896.5m)の優美な笹原(氷見(ひみ)二千石原という。)をはじめ、遠く剣山系まで四国山地の山々が地平線に浮かんでいます。
ここから先は、左に南沢、右に土小屋ルートを望む稜線の踏分道を忠実にたどる。シャクナゲのトンネルを抜けると正面に南尖峰、反対側に岩黒、筒上山を望める、南沢源頭。
このルートで最高の展望スポットです。今日は少し霞んでいるものの快晴で素晴らしい眺め、でも紅葉はまだまだでした。
だいぶん高度も上がってきて樹木も灌木化し、涼風も通る快適さの中、中沢に切れ落ちた岩稜帯のトラバースが終わると10:30中沢源頭着。ここで大休止。
中沢は急こう配の涸れ沢で春のアケボノツツジの群落は特に美しく、晴れていると非常に爽快な登高が楽しめる沢。かつて面河本谷から御来光の滝を乗っ越し、この沢をつめ、天狗岳、弥山を通り、面河乗越経由で裏参道を駆け下った、昔の山旅が昨日のことのよう。懐かしい。
とはいえ、ここから先は一部にクライミング要素もあって油断大敵。慎重に岩稜帯のガリーに取り付きます。
15分程で高度感のある、気持ち広めの場所に。古くからの本来ルートは、ここから左に振りますが、最近は右の、中腹に枯木のある岩壁が登られているようです。事実、踏み跡もはっきりしていますが、地元山岳連盟の先輩も「この岩壁は、万一滑落してすぐ下の小灌木帯で止まらないと命にかかわる危険な箇所。決してフリーで登ってはいけない。」と話していて、もちろん躊躇せず左へ進みます。
左手に中沢を見下しながら岩稜とちょっとしたテラスを通り、岩と岩の間をすり抜けると南尖峰の先っぽ、石鎚山南面に。すり抜けた岩の天辺にボルトが1本あります。ここは何年か前に岩全体がボルトもろとも自然崩落し、新しいものが打たれたもの(有難うございます。)、カラビナとシュリンゲのセットで通ると後は天狗岳、弥山への稜線歩き。
期待していた頂上周辺の紅葉は、冷え込み不足で色づき具合はもう一つ。三、四日ばかり早過ぎました。登山者で混雑する山頂をスルーし、弥山、頂上小屋も通り過ぎて、二ノ森や西ノ冠岳(1,894m)が望める、展望スポットで少し遅めの昼食。
ここもサラサドウダンツツジ等の紅葉は少しだけ早く、真紅とはゆきませんでした。
それでも、西日本第5位の高峰二ノ森と裏参道の面河笹の路を正面に、ゆったりとコーヒーブレイク。たまには、たっぷりと時間に余裕がある、のんびり山行もよいものだと思いつつ、今ある薄紅葉で秋のお山を十分、堪能できた一日でした。