真夏の東赤石山

東赤石山  お山のお花を楽しむ皆様の内輪話では、西の早池峰山といわれるらしい。

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オトメシャジン(ききょう科)

 8月も中旬お盆直前、お四国も夏真っ盛り。こういう時節は、風が通り、涼しい沢沿いの日影路が一番。で今回は、愛媛県東予地方にある東赤石山(1,706.6m)へ。標高1,500m程までずっと樹林帯の沢路で日差しを避けることができ、少し遅いけれど固有種オトメシャジンをチーム三名で観賞に行ってきました。

 入口の工都新居浜市。最近、JR駅前にあかがねミュージアムがオープンしましたが、展示の質では、山根公園横にある、旧財閥Sグループ企業が資金を出し合って建設した別子銅山記念館に勝るものなし(と勝手に思い込んでいる)。その建物や東洋のマチュピチュ東平(とうなる)ゾーンへの分岐も横目に通過し、別子ライン(県道47号線)の曲がりくねった道を進みます。

 標高980mの大永山トンネルを抜けると、旧別子山村。別子ダムや西赤石山登山口の日浦を過ぎ、緩い下りながら見通しの悪い舗装路を走って、標高655mの瀬場登山口に到着。先着は7台。橋を渡って終日日陰になる場所に車を止めました。

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瀬場登山口(筏津とともに東赤石山への入口)

 8:20出発。ここから山頂まで標高差1,000mの悪路に近い道が待っています。日差しは強烈でもすぐ桧の植林帯のジグザグ道に。30分程で筏津登山口との合流点、豊後。風が通って涼しい中、ちょっと一服です。

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豊後

 少し涼んでから瀬場谷沿いのトラバース道を進みます。右側に八間滝の白いラインがくっきりと。急登と平坦道の繰り返しの道は沢まで7~80m近い落差の急こう配の崖の上です。危ない、危ない。この辺りは、桧植林帯と天然の広葉樹林帯が交互に現れる、明るく、快適な日影路です。

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八間滝(ちょっと、全容が見えないけれど…。)

 40分程で沢沿いと尾根両ルートの分岐の橋に到着。涼味満点の沢風に吹かれ、冷たい水で顔を洗って汗が少し引きました。真夏のお山に尾根ルートの急登は避けたいので、沢沿いに赤石山荘(1,550m)に至るコースに入ります。途中、崩れかけた木道の小橋、形がラッパそのもののウスタケ(有毒)も。路はだんだん悪くなってゆきますが、まだこの頃は皆さん、元気がありました。

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しっかりした分岐の橋

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尾根コースとの分岐

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朽ちかけた小橋を渡る

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ウスタケ(ラッパタケ科・有毒)

 標高1,400mを超えると、沢路は源頭の様相に。明瞭ながら、一抱えもあるような橄欖岩も混じる階段状の悪路に変化。木々も灌木化して背中にだんだん日差しを浴びるようになり、疲労がジワリと効いてきます。

 でも路周辺にそろそろお花が…。 最初に花期の長い、シラヒゲソウ。この暑さに負けていません。ついでシモツケ、紅白の見事なバランスです。

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シラヒゲソウ

 

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シモツケ

 12:50赤石山荘着。山荘主の高齢化で避難小屋化の話も出ているようですが、山荘の周りは布団だらけ。天日干しに何人か来られているようでした。水場でお水を補給させてもらい、山頂に向けて橄欖岩帯のトラバース道を歩みます。女性にはつらい岩場歩きのうえに、滑りやすい性質の岩なので神経を使います。

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赤石山荘中途、八巻山の稜線

 と、ありました、ありました。岩陰に気品のある、透明なブルーの釣鐘状の小さなお花。ここにしかない固有種、鐘形花冠のオトメシャジンです。優美なお花を間近かにして疲れも吹き飛びます。

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オトメシャジン(東赤石山の固有種)

 東赤石山は、東北の早池峰山と並ぶ蛇紋岩や橄欖岩系のお山。この岩は成分のマグネシウムが植物の成長を妨げるようで独特の植物が進化してきました。10km程西に位置し、まれにみる強風域の銅山越(1,300m)にツガザクラ、アカモノが生育していることと好一対です。

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コオニユリ

 30分程で山頂への分岐着。ここから15分は汗を絞られる約100mの一直線の急登です。風もなく暑い! やっと稜線の赤石越(1,660m)に出て新居浜側からの登山道とここで合流。メンバーもこの暑さで大分バテテきて、無理もないかなと小休止。もうすぐ山頂と元気づけして日陰のトラバース15分を進む。

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赤石越への分岐

 13:40予定より1時間遅れで山頂に。大きな橄欖岩の重なった山頂からは、西に岩峰群の八巻山、遠く石鎚山系、北に新居浜市街と今日は好展望です。

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東赤石山山頂

 

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山頂より八巻山、遠く石鎚山

山の神も真夏に苦労して登ってきた登山者に配慮して頂けたのでしょうか、山頂標識近くに地味に咲いていた、イワキンバイが綺麗でした。

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山頂の割れ目に咲いていたイワキンバイ