四国カルスト・天狗高原 天空のお花畑と大引割・小引割探訪

天狗高原 大群落のお花と不気味な地割れ「大引割・小引割」

 9月に入っても一向に炎暑は収まらず、お四国も連日の30℃超え。夏バテに鞭打つような平地から逃れ、涼味満点の高原散策を狙って、四国カルスト天狗高原へチーム四名で軽トレッキングに行って参りました。

 日本三大カルストの一つ四国カルストは、石灰岩独特の景観と酪農や風力発電の大風車までそろう、標高1,400mの別天地。すぐ横には、昭和46年から全山石灰岩の塊を採掘中の天空のピラミッド、鳥形山(1,459m、現在は採掘で200m程低くなったらしい。)もあります。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010145251j:plain

姫鶴平からの大風車

 当会でも、この山域は、過去に姫鶴平から森の巨人たち100選選定の「猪伏の大栃」を訪ね、でっかい栃の木、美しい苔の森、手がしびれるほど冷たい欅平の水に感動したことを覚えています。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010144409j:plain

猪伏の大栃伏(幹回り6m超)

f:id:hinemosu_yamajii:20191010144625j:plain

しっとりと落ち着いた雰囲気の苔の森

f:id:hinemosu_yamajii:20191010144833j:plain

欅平の水場(30秒も手を入れるとしびれる冷たさ)

 今回は、天狗荘(標高1,367m)を出発し、カルストの東端に位置するカルスト最高地点の天狗ノ森(1,485m)から黒滝山(1,367m)の稜線を縦走、大引割峠(1,087m)の手前にある、国天然記念物「大引割・小引割」を探訪し、帰路は天狗高原セラピーロードを出発地まで戻る、周回コースを歩くことに。

 国道33号線落出のループ橋を渡って同440号線へ。途中の高野(標高550m程)から県道303号に入り、一路、四国カルストを目指します。道は曲がりくねった急こう配で片道1車線をキープ、幅員に余裕があって走りやすいものの、標高1,000mを超える辺りからは雲(ガス)の中に。そのままガス走る天狗荘に到着、ちょっと離れると車も見えにくい濃さです。

 身支度を整えて、8:45駐車場を出発。バンガローの間を抜けて天狗ノ森を目指します。残念ながら稜線も一様に濃いガスに覆われ、展望は望めませんでした。小さな石灰岩がのぞく瀬戸見ノ森から稜線歩き。晴天性のガスがゆっくりと流れてゆく広葉樹林帯は程よい明るさで気温21℃、日差しを浴びることもなく、狙った通りの涼しい高原漫歩になりました。

 お花類はあまり期待していなかったのですが、早速、麗人草の群落が。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010145629j:plain

麗人草

 黒滝山まで縦走してみて、後で分かったけれど、この山域はせいぜい2種類ほどのお花がゾーンごとに大群落を構成、歩き進むにつれてその種類が変化する、なんともユニークなお花ロードになっていました。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010145859j:plain

シオガマギク

f:id:hinemosu_yamajii:20191010150057j:plain

モリアザミ

f:id:hinemosu_yamajii:20191010150225j:plain

ツクシクサボタン(筑紫草牡丹)

f:id:hinemosu_yamajii:20191010150442j:plain

シコクブシ(トリカブトの仲間)

 種類は少ないものの、お花の量は予想以上でお四国の花の名山、皿ヶ嶺にも遜色なく、スポット的にポツンと咲く花もあって結構、楽しめました。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010155738j:plain

ミヤマモジスリ(ネジバナの一種)

f:id:hinemosu_yamajii:20191010150558j:plain

オオマルバノテンニンソウ

f:id:hinemosu_yamajii:20191010150734j:plain

ツルニンジン

 明るいブナの森を縫うように進み、10時前さほど厳しい登りも経験することなく、あっさり天狗ノ森に到着。特徴のないピークでちょっと休憩したのち、黒滝山への鞍部、姫百合平への下りに。この間も種類は変わりますが、お花街道が続きます。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010160223j:plain

ツリガネニンジン(釣鐘人参)

f:id:hinemosu_yamajii:20191010160411j:plain

アキノキリンソウ

 

f:id:hinemosu_yamajii:20191010160538j:plain

シコクママコナ

 平の苔むした休憩所は、中に笹が繁っていて使うのをあきらめ、ベンチで休憩。しかし、休日なのに出発してから誰にも会いません。静かでよいといえばそれはそうなのですが…。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010160807j:plain

黒滝山へのみち

 黒滝山は、地形図で見るほどの距離は感じず、少し険しいはずの道もあっけなく越え、ブナの木と石灰岩でごつごつした山頂に11:30過ぎに着いてしまいました。稜線漫歩はここが終点。これから先は稜線を離れて、環境省選定の「四国のみち」に合流、「大引割・小引割」に向かうことになります。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010160913j:plain

道端にあったイグチ

 山頂からは、ぐるっと右回りの下り。ルートを戻っているような妙な錯覚に陥る、変な道です。お花はぱったりとなくなったうえに、途中にはグロテスクなツチアケビもあって、どこかあやしい感が引き立ちます。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010161008j:plain

ツチアケビ(かなり大きい株)

 そうこうするうちに、路は大引割峠に向けた、緩いカーブに。周りは、ヒメシャラの大群落から鬱蒼と馬酔木が生い茂る薄暗い道に変化し、薄気味悪さもだんだん募ってきます。

 ここで今日初めて人(夫婦連れ)に出会いました。向こうは全く気付かず、声掛けして初めて「ああ、やっと人に会えた。」と安心されたご様子。(この雰囲気で)お気持ちはよくわかりますとお答えしておきました。

 12:30、道が平坦になったなと思ったら、目的地の「大引割・小引割」に着いていました。適度に陽が差し込んで休憩にはもってこい。ちゃんと案内板やテーブル付きのベンチもあって、早速、傾き加減のベンチで昼食に。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010161917j:plain

大引割・小引割案内板

 大引割は、ベンチのすぐ近くに位置する、なんとも不気味な地割れ。平坦地にいきなり幅2~10mくらいの割れ目があって、吸い込まれそうな感じ。深すぎて何処から見ても底は見えません。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010161455j:plain

大引割の割れ目①

f:id:hinemosu_yamajii:20191010161549j:plain

大引割の割れ目②

 逆層の赤みがかった岩に苔がびっしりと付いて、赤と濃緑のおどろおどろしさ。色々試してみてもカメラに綺麗に写りません。歩いて5分程の小引割も全く同様で、早々に引き上げることに。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010161705j:plain

小引割

 帰路は、四国セラピーロードと銘打った、桧や雑木のチップをまいている(らしい)道を戻ります。駐車場まで標高差300m程を登る緩い勾配の巻道は、ブナ中心の広葉樹林帯と林床に生い茂る笹のコントラストが優しく、セラピーの名前通り雰囲気の良い道でした。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010162056j:plain

ゆったりとガスの流れる帰り道

 何処を歩いてもお山の性格が出るようで、この巻道も天狗荘近くの一帯にヒナシャジンの大群落が続いていました。

f:id:hinemosu_yamajii:20191010162206j:plain

ヒナシャジン

 四国カルストは、ハンカイソウのお花畑で有名ですが、天狗高原もお花散策の楽しめる、なかなか素晴らしいコース、特徴は大群落で堪能できるということでしょうか。お花の楽しみ方のバージョンが一つ増えた山旅でした。