11月も下旬、数日前には暖国お四国でもやっとお山に初雪。いよいよ冬の到来かと思いきや、三寒四温どころか一寒六温。温暖化の影響?か、初雪は一日限りの幻に。これでは今年は年明けまでアプローチ道の凍結はおろか根雪すら積らないかも。
今回は、毎年2月下旬に歩いている、寒風~笹の稜線を下見がてらトレース。無雪期に歩くのはひさしぶりだけど、朝日で金色に照りかえる高知湾・太平洋の大海原や一面、面河笹の稜線の穏やかさに癒されてまいりました。
つい最近まで一般道(R194、最近は「そらやま街道」というらしい。)で全国最長だった、寒風山トンネル(延長:5,432m)を抜け、旧道を走り登って、朝7時半過ぎに桑瀬峠登山口に到着。
好天予測の週末とあって、駐車場は既に20台近い混みよう。さすが、お手軽に四国山地の稜線に登れる人気コースの登山口、お四国4県に加えて、岡山、広島、はては大阪と多彩なナンバーがそろう。
8:00出発、標高約1,100m、気温11℃とちょっと暑く、広葉樹林帯のいきなりの急登に少し汗ばんだ。冬に向かうこの時期は体が寒さにまだ慣れていないので、無駄な汗をかかないよう、すぐに調整。
路は、紅葉の時期を終え、あっても末枯れ。朝の柔らかい光がすっかり葉を落とした木立に差し込んで、清澄感一杯。カラ類の鳴き声も滑らかで、なかなか気持ちの良い登高だ。
40分弱で桑瀬峠(1,451m)に。ここから伊予富士(1,756.2m)、寒風山(1,763m)に道が分岐する。伊予富士方面に進めば、ネットで有名になったUFOライン・天空の道(自念子の頭(じねんごのかしら/1,701.8m)の真下を通る瓶ヶ森林道)を見ることができる。個人的には、無雪期より霧氷咲く冬景色の方が美しいと思うけれど…。
今日は、笹ヶ峰(1,859.6m)まで抜けるので、峠は小休止だけにしてそそくさと出発。前日の雨で日陰は笹が乾いておらず、スパッツは雨でもない限り普段つけないので、膝下が少し濡れる。このレベルは歩いてりゃ乾く。
この先、寒風山(手前峰)の南西壁を左手に見ながらの登山。途中のブナの林を抜け、はしごをクリアし、急登を登りきって面河笹の斜面に出るともう山頂は一息の距離に。
9:40寒風山山頂着。二十数年前に大掃除に来て、穴の中の一升瓶やら空缶類やらを運び降ろした、山頂直下の風穴(清掃後、投棄防止にお社の設置案(銅製を設置頂き有難うございます。)を出し、今ではお賽銭も。)とお社の無事を確認する。お社は、厳冬期でも風穴内部からの地熱風があって雪で隠れることはない。
残念ながら、ここから遠望できるしまなみ海道・来島大橋は、今日は大雲海の中だった。
山頂から笹ヶ峰までは直線距離だと2kmちょっと。意外と近いけれど、小ピークをいくつも越えるアップダウンが連続し、特に冬季は西側(愛媛県側)からの強風、笹斜面の表層雪崩の懸念など、無雪期では想像できない、要注意の稜線。でも、今日は快晴にほぼ無風に近く、正面にたおやかな笹ヶ峰本峰、一面の面河笹の中を小さな起伏を楽しみながら歩ける好条件だ。
11:00前には1,740mの前衛峰を巻き、左手に沓掛山を、西側斜面の日陰では今年初めての初雪の名残も踏みしめつつ、ほとんど水平道に近いような山頂へのほぼ一直線の巻道を進む。
11:25蔵王権現を祭る山頂に到着。すでに先客が7~8名。少し風が出てきたけれど、やや汗をかいた身には心地よい。
ここは山系の優秀な展望台の一つ。北に赤石山系、大座礼山、ちち山・冠山~平家平の稜線、南に石鎚山や瓶ヶ森などの石鎚山系の主峰群、東に6月に登った稲叢山、はるか高知湾、西は瀬戸内海だ。剣山系や伯耆大山は雲の中ではあるものの、石鎚山系で最もスケールの大きい景観を味わうことができる。贅沢余りある眺めである。
予定より早く着いたので昼食を含め1時間、たっぷりと休憩。ゆったりとコーヒーブレイクを楽しむ。
帰路は、東南の方向にのびる高知県側、一面笹の拡がる斜面を一気に約700m下る直滑降ルート(と勝手に名前つけてる。)を使う。下り始めて驚いたのは、以前と違い、笹の刈払いが行われて非常に歩きやすい。樹林帯ではベンチやロープも十分整備されて、伐採跡生々しかった頃とは様変わりしていた。
ここは、冬だと林道まで1時間で下れる便利な道だけれど、無雪期の今は滑りやすい。木の根や青石に加え、急傾斜で膝を傷めないよう、注意を払って降りる。途中、冬の目標木にさせて頂いている、ウラジロモミの2本組に挨拶。
笹原のところどころにある灌木にも少し高いところに吹き流しテープを追加する。冬季は、山頂からこの斜面の間はホワイトアウトで何度も痛い目にあっていて、転ばぬ先の…である。
左右にブナの大木を見るようになるとすぐに桧の植林帯へ。林道には14:00前に降り立った。ここを登山口にした人の車3台が駐めてある。もう桑瀬峠登山口まで40分程の非舗装の林道歩きが待っているだけだ。
冬道と一部ずれるものの、倒木や道が傷んでいるところは見受けられず、概ね下見の成果はあったなと今日一日を振り返りながら、冬木立の間からなお光ある寒風山を見上げ、林道をのんびりと歩いた。