雪や! えぇ…、だれがなんと言おうと雪見、晴天だろうが雪曇だろうが関係ない。 南国お四国では、師走にこれだけの雪を見るのは稀で、そもそも、寒波が二週連続で押し寄せるなんて、ここしばらく記憶にないし…。
が、この師走の大雪、北国の日本海側ではさぞかし…、謹んでお見舞い申し上げる。 まさに「天にても地にても雪の余るらし」(相生垣瓜人)が現実に、酸ヶ湯では早々と積雪が2mを超えたとか。 古来、「雪は豊年の瑞」といわれる、来年は豊作であれかしと願うばかりである。 誠に申し訳ないが、お四国ではスタッドレスの期間はほんの3か月ほど。「雪よ降れ降りてふんわり嵩になれ」(細身綾子)の方に妙に実感がわく。
冬の皿ヶ峰(俗称、「お皿」)は標高1,300mに満たない低山ながら、なかなか油断がならない。 アクセスが北面なので路面凍結によるスリップ事故があるし、狭い山道でコーナーもきつい。 速度オーバーだとハンドルを切っているのに車はまっすぐ谷へ…になる。 まだ、雪道の方が御しやすい。 ツルツル路面でスタックしたスタッドレスの軽四を砂をまいてなんとか下ろしたこともあった。 で、冬は無理せずトレーニングも兼ねて、上林湧水集落の路側帯(俗称、「鉄塔下」)に車を置いて登ることにしている。
ベランダから眺めるお皿の稜線は、このところずっと霧氷がかかり、もうすっかり地雪に。 寒波吹き出しがほぼ一段落した今が頃合いとみて、9時半、鉄塔下に車を止めた。 今日は稜線にどんよりと雪雲、恐らく雪暗の山行になるだろう。 まずは不入社に安全祈願、パラパラと小雨が来て、お山は雪だ、元気で行って来いと言われたような?。
11時前、水の元はうっすら雪化粧もまだ斑ら、でも風穴と上林トンネルとの分岐は既に白銀の世界だった。 路面にタイヤ跡はなく、久万側に越えた車はなさそうだ。
サクサクと心地よい音を聞きながら、誰も歩いていない遊歩道伝いに北面を巻く夏道へ。
合流して足跡が、本日歩いた人のあるらしと思いつつ、稜線への近道を選択。 雪に夏靴が軽く沈むパウダースノーを楽しむ。
30分弱で稜線に出た。 細雪か細かい霰か、微妙な粒が風に乗って舞ってくる。
積雪3~40㎝、視界は10mくらいかなぁ、樹間を薄いガスが風に流されてゆく白夢幻の世界。
温度計は氷点下ギリギリで思ったより暖かいけど、汗もかかないわ。 アンダーにミッドシェル+夏用ウインドジャケットの3枚でも動いていれば寒くはないけど、時折吹上風が体を叩き、う~耳さんは冷たいなぁとぼやいている。
今秋、久万側の檜林が皆伐されて風の通りが格段に良くなってしまい、こうなると吹きっさらしだわと思う。 良いことは二つはなし、まぁこんなもんでしょう。
皆伐後に檜が植林されて2年のムソグルスキーの庭(仮称)は、カラマツ林に霧氷がついて目には綺麗だけど、いかんせん青空は望むべくもなく、雪暗ではカメラ映りはよろしくない。 むべなるかなと思いつつ、お皿では稀な吹き溜まりをいと珍しげに眺めつつ通過。
12時半、無人の山頂に。 風もなくうつろな静寂が支配していて、これはよろしい。 ふっと金子みすゞの「雪」が浮かぶ。 ふかくふかく音もなく…。 でも、なんでこんなところで思い出すんだろう、青い鳥なんてどこにもいないのに。
ほぼ漆黒と白の世界を龍神平に向けて下る。 雪をまとった山毛欅の古木にはっとさせられる。 彼らは冬にこそと存在を強くアピールしているようだ。
秋にブナシメジ(天然物は珍しい)とブナハリタケのあった倒木の急な坂だけちょっと慎重に通過、すぐたおやかな平原が見えてきた。
龍神様はお社まで雪帽子でお寒そう、愛大山岳会龍神平小屋もなかなか良い眺めに。
13時、小屋で少し遅目の昼食。 お皿で雪を溶かしてブラックコーヒーなんて、かつてあったかしらんと思いつつ、温かくて美味しくいただいた。 本格アイゼンを装着しに入ってきた単独行の40代くらいの男性と少し話す、山頂までいくらしい。
1時間ものんびりして体が冷えてきたので、おもむろに下山を開始。 ゴジラ赤松(仮称)は相変わらず元気、北面を巻いてゆく道を坦々と下る。
結構、踏み固められていて、昨日の日曜日は登山者が多かったのだろう。 今はそのうえに今日降った淡雪がのって足跡をうっすら隠している。
道々で、この時期ならではの風情と自然の造形を楽しみながら歩かせてもらった。
チェーンスパイクは結局使わず、ザックの中で泣いてたみたいだけど、まぁ勘弁。 雪の感触をこの低山でたっぷり味わえるなんて、ほんに嬉しいお山だった。