荒島岳同様、白山も例の大雨で共にボツに、かえすがえすも悔やまれるがもはや…。 今回も本当は加賀、越前、美濃と3本ある禅定道のどれかをじっくり歩きたかった。 2016年に歩いた大峰奥駆道(4泊5日)でもこうでなくちゃと思ったけれど、最高点の八経ヶ岳(大峰山)だけピンポイントで往復しても本当の良さはわからない。 プレリュードが大事で、そこまで持ってゆく過程の山々がいろんな隠し味を出してくれ、それが歩きごたえに結び付く。 けれど、じじいにはもはや老練はあっても肝心の体力が残ってない。 で、今回は仕方なく、別当出合から砂防新道という、最も簡便な一般道に。 まぁ、南竜ヶ馬場にテントを張って、一泊したのがせめてもの抵抗かなぁ。
(第1日)
朝5時半、人影もまばらな別当出合登山口をスタート、標高1,300mとすでに荒島岳8合目だ。天気はまあまあ、降ることはないだろう。 鳥居で一礼するとすぐつり橋を渡る。 畑薙大吊橋と違って、つくりが上等でほとんど揺れない。
まずは広くて単調な石ざれ道をじっと我慢で登る。 50分ほどでトイレがあるだけの中飯場着、殺風景な広場で、ほとんど水量のない不動滝が見える。 甚之助避難小屋まで似たような道をたどる。 途中、手取層群のれき岩やひっそりセンジュガンピ(白ナデシコ)が咲いていたりと単調な歩きに彩を添えてくれる。 県設置の道標は標高がきちんと入っていて、親切(環境省のそれは×だけど)だ。
7:45、ほぼコースタイムどおりに避難小屋に着き、泊装備でこれなら大丈夫やなと一安心。 恒例で内部をチェック、よく使いこまれ、泊禁止でも結構、泊っている方はいるんだろう。 標高も2,000m近く、もう周囲は広葉灌木帯だ。 10分程行動食休憩しつつ、ふと周囲を見ると、登山者がぐんと増えていた。 一体どこから湧いてくるんだろう?ほとんどは軽装の日帰り装備だけど。
ジグザグ道を20分程で南竜ヶ馬場への分岐に着く。 大正時代施工の谷土止め工事が登録有形文化財という、文化庁の銅銘板がある。火山だからどこでもすぐ崩れるし、昔から人々を悩ましてきたんだろうね。
そのまま南竜道に入ると、うら若い女の子が一人ついてくるので、行き先を確認して戻ってもらう。 道を自分でチェックしないこの手の輩は最近、多い。 途中、道をぐるっと迂回するような石組みがあってかつて何か建造物?でもあったのだろうか。
道が木道になってすぐ南竜山荘、天場は小沢を渡った右の高台だった。 手続きをしてテントを設営し、サブザックに雨具、食料等を放り込んで10時、トンビ岩コース→室堂平で出発。 すっかり晴れ渡って良い天気だ。
標高差400m、等高線が混んでいる前半が勝負とみて、気合を入れる。 ナナカマドの赤い実が目立つけど、紅葉はさっぱり。 猛暑の影響?がここにも出ているか。 そこそこ夏のお花の残滓と、一方で秋を告げる果実もあるジグザグ道を気持ちよく登らせてもらった。
このルート、きついけどなかなか味もあって、楽しめる。 3/4を過ぎたあたりから平坦になって室堂平の末端に到着、トンビ岩が左手に現れた。 まぁ見ようによってはそう見えるかも…という感じ。
活火山だけあって、いろいろ形のユニークな岩(巨岩)があって、ちょっと面白いので、撮り溜めていくことにする。
11時半、室堂のベンチを抜けると、南竜分岐まで一緒だったご夫婦から声が…、山頂から降りてきて昼食中だった。あれぇと、またよもやま話に。 お昼は上で摂ることにして鳥居で一礼し、登拝道へ。
なだらかだけど標高差は250m、頭ほどもある石だらけの道やら整備された道やら、いろいろある這松の中を行く。
約1時間で白山比咩(しらやまひめ)神社奥宮に。 御前峰の山頂標識と一等三角点があるだけの簡素な頂はすっきりしていて気に入りました。 でも、おなかがすいてヘロヘロ。 お昼を過ぎて高山特有のガスが走り始めたけど、風陰に座ってのんびりお昼をいただく。
13時、お池めぐりに出発。 正面に剣ヶ峰を見ながら、急傾斜のガラ場を下り、水たまりに近い油ヶ池と緑の紺屋ヶ池へ。 山屋なので、池より剣ヶ峰、登路を探りましたが、あれはいけません。 一触即発どこが崩れるかわからない、登山禁止もむべなるかな でした。
次の翠ヶ池は、地形図に名前が載るだけあって大きくて形も良く、色も綺麗なブルー、う~ん美しいですね。
そのまま池の左をまっすぐ進み、ヒルバオ雪渓に下る道に合流、左に振って大汝峰のコルを乗っ越す。 お池めぐりは道が平坦で歩きやすく快適。 ほぼ全部、大昔の噴火による溶岩流でできた?んでしょうか。
ここまで40分程。 大汝峰0.6㎞と書かれた道標を横目に100mの登り。 そろそろ疲労が出始め、ちょっときつかったですが、割とあっさり石垣で囲まれた大汝神社に。 やや古びたお社はこれまで凌いできた風雪を感じますね。
で近くにもう一つ、石垣が。 なんや?と寄ってみたら、避難小屋。 緊急避難以外使用禁止って、まぁ本来、そういうもんだけど…。 錆びたシャベルが何本も放置され、ふっとここ(加賀禅定道)の冬の厳しさを垣間見た思い です。
全く色のない五色池や百姓?池を過ぎ、ちょっと登ったら、お目当ての千蛇ヶ池が湖面に雪をたたえて現れました。 案内板に開山の泰澄大師がどうしても言うことをきかない千匹の大蛇を万年雪で封じ込めたとあり、もし雪が融けたらすぐ上にある御宝庫(ごほうこ)が崩れ落ちて補うと伝えられているとか。 でも昨今の温暖化で、万年雪は湖面に浮いていました。 御宝庫(どう見ても溶岩ドーム)、果たして崩れ落ちるんでしょうか。
15時、室堂に戻る。 同じルートの往復はもったいないので帰りは五葉坂、黒ボコ岩経由を使う。 這松の間を縫う緩い下りも道は火山独特の大石交じりのボコボコ悪路。 ひっきりなしに登ってくる室堂泊の方々はもう青息吐息でした。
エコーラインとの分岐を過ぎ、木道をトコトコ行くと、急な下りになる十二曲りのすぐ手前に黒ボコ岩が。 真ん中が窪んでいるからですかね、いわれは知らないんですけど。 でも眺めはいいだろうなぁと、もうガスで視界は限られてましたが…。
あとはもう坦々と歩を進め、天場に16:40着。 出発時よりテントの数が倍増、若い人とお年寄りが1:2と頑張ってるなぁと感心。 それにここは美濃禅定道、天場やトイレ、水場も整備は大の◎、快適な夜を過ごせました。
(第2日)
朝7時過ぎ、天場を後に、まさに秋晴れで越前禅定道の稜線が青空に映える。
期待した紅葉はいまだの状態だったけど、気持ちの良い山歩きだった。 もう下るだけで、目につくお花だけカメラに収めつつ行く。
別当出合への最後の下りはルートが下り専用道になっていて、これが大きく迂回。 なるほどそれであのコースタイムだったのねと納得。 お花が結構残ってて、それはそれでよかったのだけれど…。
別当出合から御前峰を往復するコースは、石畳状に整備された道と土に石ころのザレ道、大石交じりの火山道とパターンがいろいろある。 さすが登山者の多いポピュラーなコースと思ったけれど、逆に人の足で岩が磨かれて、特に石畳道は滑る、滑る。 ここはトレッキングポールが必須(特に下り)ですな。 天場やトンビ岩ルートの快適さ、お池めぐりの楽しさは素晴らしく評価は変わらないけど、登山道が一番危ないという、ある意味、怖いお山でもありました。