剣山系・一ノ森&お亀岩焚火山行 -お久しぶりのお泊りも-

 雨の多かったGWは、あまりお山には行けず。それでも3年ぶりに笹倉~冠岳を歩き、相変わらずのブッシュと倒木だらけの踏分け道に苦戦してきた。  齢、古希越えの身、いささか疲労も取れにくくなって、しばらく皿ヶ嶺で新緑の原生林とお花散策に時間を使って休養させてもらった。

 しかしながら、長かった膝の不調も今年に入って徐々に回復基調で、久しく出来ていなかった泊山行の手始めに徳島・剣山系を歩くことに。 剣~三嶺の縦走や天狗塚・牛ノ峯は幾度も歩いたにもかかわらず、なぜか一ノ森・槍戸山は行けていなかったので、今回、初訪問。その後、R439&西山林道を車で移動してお亀岩避難小屋まで足を延ばし、翌日は三嶺ピストン後、西熊山からミニバリエーションルートを下るプランとした。

 5月20日(土)見ノ越⇔一ノ森・槍戸山ピストン→R439&西山林道経由イザリ峠登山口→お亀岩避難小屋(泊)

 早朝に自宅を出て、9時前懐かしい見ノ越の駐車場に車を止める。 R439は相変わらず厳しい道やけど、ここもあまり変わっていませんなと思いつつ、剣神社の境内を横切って登山道に向かう。今回は、通常ルートではなく、稜線沿いに直登して刀掛け松に出るルートを選択。雨上がりのガスが走って、ちょっと幻想的な雰囲気の中、静かな道を一人ゆく。 道は踏分け道で足元もやや緩いものの、ゆったりした大木交じりの広葉樹林帯で笹も低くて歩き易かった。

薄いガスの走る稜線通しの道 大木が多くて癒される路だ

 10時過ぎ、ぽっと通常ルートに合流し、すぐ刀掛け松だった。枯れてるけど、まぁ現存してるからいいか。 ここから先はよく整備された参詣道?で、一気に晴れ上がって強い日差しの中、汗を拭きつつ剣山頂との分岐に10時半過ぎに到着。 人、人、人だわ。辟易してもう山頂はパスさせて頂き、そのまま分岐を左に振って、一ノ森を目指す。

(左)刀掛けの松 と (右)分岐、右奥に剣山頂が見える

 少し先の広い板敷の野天休憩所?を過ぎると、ほとんど人がいなくなった。 まぁラインからは完全に外れてるからなと思いつつ、経塚森、二ノ森と順番に越えて行き、一ノ森への直登コースでやっと下ってくる10人ほどのパーテイに会った。ここまで見晴しも良くて気持ちの良い稜線歩きだった。

一路、一ノ森を目指して、気持ちの良い稜線歩き

 11時15分、縦走路の途中のような一ノ森三等三角点についた。時折ガスは走るもののカンカン照りで、標高1,879.6mもあるのに、しっかりした標識もないのかと侘しさが募る。

(左)おもちゃ箱のような一ノ森ヒュッテ と (右)殺風景な一ノ森・三等三角点

 そのまま槍戸山へ向かい、すぐ足元の良くない下りになって結構下った。時折ガスの走る中、2、3回アップダウンを繰り返して槍戸山の四等三角点に着く。山頂では徳島から来たという女性の単独行の方と一緒になって少し鹿害の状況などを教えてもらった。 この分ではすぐに石鎚山系も同じようになってしまうだろうなと思いつつ、時間がないので休憩もそこそこに取って返す。

槍戸山山頂から剣、次郎岌の稜線を遠望する なかなか爽快な稜線や

 帰路は、一ノ森ヒュッテ前庭を通り、行場経由でまた刀掛けの松に合流するルートを歩いた。 ずっとガスがかかって日差しはなかったけれど涼しくて、行程中、人に会ったのは刀掛け…の直前にバードウオッチング中のおじさん一人だけ。静かで快適だった。 周回してみてよくわかったけれど、剣は石灰岩主体のお山なんだと再認識、そういえば御神体もでっかい石灰岩だし…。

たった一株だけ。 ホソバノアマナ が「私を撮ってくださいな。」と…。
道すがら点々と咲いていた、左からネコノメソウ、コミヤマカタバミ、シロバナネコノメソウ

 見ノ越に13時過ぎに戻り、車でR439を下って、今度は西山林道に向かう。 いやしの温泉郷は休業していて、もう再開はないかなぁ? 山屋には貴重な温泉だっただけに残念だけれど…。

 15時、イザリ峠登山口下の広い空き地(=駐車場)に車を止め、急いでザックに装備を詰め替えて、そそくさと出発。 まぁ17時過ぎには避難小屋にたどり着けるだろう。 途中、下ってくる日帰りの登山者数人とすれ違っただけで、うっすらとガスが流れる中をマイペースで登る。この登りは、地面に弾力があって膝に優しくて歩き易い道だ。

もうすぐイザリ峠の新緑の灌木帯を行く どこか懐かしい情景

 17時少し前にイザリ峠の道標に着いた。天狗塚と牛ノ峯の稜線はガスがかかって、しばらく待ったけれど綺麗には晴れてくれず、諦めて小屋に向かうことにする。

天狗塚から牛ノ峯の稜線遠望、ガスが切れなかった (右)ひっそりとワチガイソウも

 途中、これから下るという、単独行のトレランおじさんに会う。今日はいろんな人に会ったわ…。 17時過ぎ、懐かしいお亀岩避難小屋にザックを下ろした。小屋同宿はアスレテイック体操をしてる変な夫婦連れ1組だけ。その代わり、小屋周辺はテントが5張りも。最近はテン泊が流行りだから…。

 すぐ、小屋裏のモミ林に行って、薪を集める。前日まで雨天だったので、材が少し湿っているけど、仕方ない。19時、夕食を済ませ、薪ストーブに火を入れてお久しぶりの焚火を開始。 途中から外でテン泊してた岡山から来た3人パーテイがテントは寒くて…と合流。なんでも、行動中は一緒でも寝るときは1人ずつテントに分かれるんだって。今風といえばそれまでだけど、3人一緒で一つのテントの方が暖ったかいよね。 焚火初体験で暖かいと楽しそうだった3人組とミニ酒盛りをし、薪が尽きた21時過ぎにお開きにした。 この夜はずっとガスが走って、お星様は姿を見せず、少し寂しい夜だった。

5月21日(日) お亀岩避難小屋→三嶺→西熊山-(ミニバリエーション)→登山口

 今日は快晴だ。朝ゆっくりして8時に三嶺へピストンに向かう。 昨日の3人組は6時過ぎには出発していてテン泊跡も綺麗だった。

小屋から眺める朝のお亀岩 と お亀岩避難小屋、これからもお世話になります

 西熊山手前でザックをデポし、ほぼ空荷で行動する。ここから三嶺までの間は、全国的に見てもそうはないだろうと思える、快適な縦走路だ。アップダウンは大タオ以外ほとんどなくて、路もクッションが効いてとても歩き易い。

縦走路からの三嶺遠望 なだらかな笹原歩きは快適だ

大タオの最低鞍部から来た道を振り返る これだけ美しい眺めは全国的にも稀な部類だ

 三嶺まで約2時間、天狗塚方面へ縦走してくる数人とすれ違いつつ、小気味よくピッチが伸びて、10時過ぎには山頂にいた。 昨日歩いた槍戸山が剣と次郎岌の間から顔をのぞかせていて、あまり両山とそん色ない高さやなぁとぼんやり思いつつ、行動食を摂って10分程で山頂を後にした。

三嶺山頂から天狗塚方面を望む  広大な笹原が印象的だ

 西熊山先のザックデポ地点(標高1,800m)に帰り着いたのは11時。 さて、今日の本番はここから。西山林道に向かって尾根筋を下りてゆくバリエーションルートだけど、標高1,600mまでは西熊山から四等三角点 久保南(1,354.74m)に至る、よく歩かれているバリエーションルート(以下、「よくバリ」という。)を使う。 そこから一つ左にある小さな尾根に入り、ほぼ北西方向に真直ぐ下って、西山林道が小沢を渡る橋のすぐ横に出る。 イザリ峠登山口から50m程下った空き地(=駐車場)まで歩いても10分弱。よくバリより林道歩きを大幅に短縮でき、お亀岩・天狗峠→イザリ峠経由で登山口に下る通常ルートのほぼ半分の距離という、メリットは大きい。もとより、足元はバリエーションだからあまりよくないけど…。

下降点からよくバリ・ルートを下りながら、三嶺を望む

 11時30分、下降開始。せいぜい膝下までの開放感抜群の笹原を下り、標高1,700m手前でモミ林の中の大岩を正面に見て左へ振る。

右上端のモミ林の中に大岩が…  よくバリ・ルートは左端の岩の右を抜ける

 よくバリのうっすら踏分け道とまばらな赤テープを忠実にたどって、標高1,630mくらいまで下ると左手にコハウチワカエデの大木がお出迎え。 毎回、挨拶してるけど、お花が付いてる時期は初めて。今年も幹一杯に葉を茂らせて、この風の吹き抜ける、開けた地形があうのか元気そのものだ。

コハウチワカエデの大木 ここを下るときは必ずご挨拶。
深紅の印象的なお花 と 今年も元気に展葉した若葉

 来るたびに元気をもらう大木にお別れしてすぐ標高1,600mに着く。 目印は、岩とすぐ横のアオダモの木だ。 真っ白い花が印象的な、まだ若い木だけれど、このポイントでよくバリ・ルートとお別れして左(北西)に進路を取る。 写真ばかり撮ってて、ここでもう12時を回ってしまった。

右隅に、目印の岩とアオダモの木  右は拡大写真。真っ白なお花が美しい

 いささか時間をかけ過ぎだけど、三嶺の遠望といい、牛ノ峯の広く長~い稜線といい、眺めの素晴らしさは一級品で、しかも開放感が半端ないレベルで、下りとしては快適そのもの。

遠く牛ノ峯のだだっ広い笹原の稜線を遠望する  広いわ~

 ここから標高1,480mくらいまで、枯れた広葉樹の大木やブナの疎林を抜けて、もう少ししたら蕨の取り放題になる、草原状の緩い下りになる。時間さえあれば、たっぷりと昼寝を楽しみたいけど、出来たためしがない。

道すがらの情景 (左)干上がった猪のヌタ場 と (右)ゆったりと広がるブナ帯
(左)蕨の草刈り場まで季節はあと少し (右)そのすぐ先にある、涼しかったブナの木陰

 すぐ先のまだ若い広葉樹林帯に入ると凹地に苔むした岩石群が並ぶ場所に出た。ミニ屏風のような形の岩を正面に見て左側の小尾根におもむろに。植生は、この辺りで広葉樹から杉・檜の植林帯に徐々にシフトしてゆく。

やや凹地にある、明るい岩石帯  正面の岩が屏風のようだ 路は左の小尾根に

 標高1,430mくらいではっきりとした小尾根になり、右手に地図には現れない、大きい凹地が出てくる。 いつも休憩している場所で、今日は杉植林帯を吹き抜けてくる風が汗ばんだ体に気持ち良くて、大休止してしまった。もうすぐ13時だ。

木漏れ日が美しい、地図に出ていない凹地  休憩にはもってこいの場所

 このすぐ先は左手が杉植林帯、右手が広葉樹林帯と二手に分かれ、ここは左の植林帯が正解。 もう林道の橋(標高1,100m)まで高度差300mを切り、3、40分程で降りてしまう感覚だが、実はここからが厄介な所で、ずっと植林帯の急降下が続き、間伐もされていないので、杣道がほぼない。足元の崩れやすく、枯れ枝の積もったところを転倒に気を付けながらジグザグを切って下ってゆく。

最初はあまり急ではないけれど、だんだん傾斜がきつく。 稜線を外さないのがポイント

 徐々にルート?は明瞭な、かつ急で細い小尾根になってゆき、最も安全な尾根筋を外さないよう下ると沢音とともに左手に流れが見えてきた。もうここまで来れば大丈夫で、河床にザックを放っぽり出して汗みどろの顔を洗う。生き返った気分でしばし憩う。 沢沿いの細い杣道を辿って、林道の橋のたもとに出たのが13:40。途中で油を売り過ぎて2時間以上かかってしまった。

 車に帰り着いて着替えをし、のんびりお昼を摂っていると、三嶺からの帰途、西熊山頂で挨拶して追い抜いた60代とおぼしき男性2人組の片割れの人がちょこんと頭を下げて林道を癒しの温泉郷の方向へ通過していった。足の遅いもう一人は今どこだろうといぶかりながら、これから林道歩き1時間超はお山歩きよりつらいだろうなとふっと心配になった。

苔むしたコハウチワカエデ大木のお花 と 遠く矢筈山の稜線  のどかな情景だ