長かった梅雨がやっと開けたと思ったら、今度は滅茶苦茶な猛暑がやってきた。お盆前後は連日、35℃ニアリー。南国お四国では、日中、外を歩く気力がうせる暑さである。新コロナであまり動けず、炎暑の平地にも嫌気がさして避暑に出かけることにした。
行先は、鞍瀬ノ頭(1,889m)に決めていた。コースは、保井野、梅ヶ市、土小屋のうち、最も楽ちんな土小屋に。避暑なのに大汗かいて歩きたくない(実態は違うけど…。)のが第一。第二は、保井野、梅ヶ市両コースとも最も暑い午後が堂ヶ森(1,689.4m)と鞍瀬ノ頭肩への登りの時間に当たり、ジリジリと背中を焼かれるデメリットがある。その点、土小屋コースは西ノ冠岳経由のトラバースがメインで、アップダウンが小さく、午後の時間帯の日差しも避けることができ、避暑にぴったりや。
夜がメインなので、午前中に準備し、正午過ぎに土小屋に着いた。お盆休みの日曜日でも駐車場は半分空いていて思ったより少なかった。大半が石鎚山登山で、あとはスカイラインのドライブが目的の人たちだ。
13時前、37㍑のザックに1泊の装備、食料を満載して出発。土小屋コースは概ね緑蔭を歩けるものの、2か所だけ日当たり抜群の登りがある。31℃。このタイミングの陽ざしはうんざりするほど強烈だった。30分程で東稜との分岐に着き、汗をぬぐう。蜜を求めてヒヨドリバナの間を飛び交うアサギマダラは、警戒心が強くて、とうとう写真は撮らせてもらえなかった。北壁直下の道は、麗人草やミソガワソウ、アキノキリンソウ、花期が終わりかけのオオマルバノテンニンソウ、二の鎖から面河分岐までの北面の巻道沿いは、ダイモンジソウ、ミヤマトウヒレン、シラヒゲソウ、オタカラコウなど夏の花のオンパレードで、そこそこ楽しみながら歩かせてもらった。
面河乗越から笹の刈払いがあり、期待したが二ノ森分岐先までの短い区間のみで、そこから先はステップの置き場所が見えない、膝~腰までの笹だった。まぁ本来の道やなと却って安心する。中途の西ノ冠岳下のお花畑は、もう終ってなにもなく、がっかりした。以前はタカネマツムシソウがあったはずだが…。三ノ森(1,866m)の西面を巻き、二ノ森(1,929.6m)に着いたのが、16時半。夕方までに着けばよいのであまりペースは上げなかったものの、ほぼ目論見どおりだった。
コルからピークへの最後の登り。気持ちの良い笹道で一気に登る。ずっと山頂にはしっかりした標識がなかったけれど、どなたが設置されたのか、最近、「鞍瀬ノ頭1,889m」の標識が座っている。堂ヶ森側から見ると、堂々たる立派な山容な上に、三角点こそないものの、標高も瓶ヶ森や筒上山とほぼ同等。もっと早く設置されてもよかったところだ。やっとお山らしく扱ってもらえるようになったかと思いつつ、ツェルトを張る。
ここに張るのは、13年ぶりや。あの時は、保井野から登り、今日とほぼ同じ時間帯にドー天を張った。11月下旬というに、気温0℃と寒さは一級品で、月光の凄い夜だったことを覚えている。夜景を見るのも本当に久しぶりだ。
【当時の記録】
年月日 H19(2007).11.23(金)~24(土) 天候 晴時々曇
コース 保井野~二ノ森往復 (テント泊・鞍瀬ノ頭山頂)
行程 23日12:35 保井野発
13:20-30 R1(985m)、落葉の樹林帯の中、静かや。
14:20-30 R2(1,395m)、下山者2人と交差する。
15:20 堂が森頂上分岐のコル
15:30-50 堂ヶ森白石小屋(当時)への分岐、ザックを置いて、
水汲みに往復。
16:15 鞍瀬ノ頭の肩
16:45 鞍瀬ノ頭(1,889m)、テント設営。丁度一張分の草付き
平坦地。 まだ、雪は来ていない。
日没後、急激に気温が下がり、気温0℃。早々に食事を済ま
せる。まだ寒さに体が慣れておらず、夏用テントにダウンベ
ストでは寒い。冬用ダウンシュラフにホッカイロを入れる。
月色皓皓たる、凄い夜で、二ノ森、鎚、西冠が夜に浮かぶ。
「岳の月我なきあともかくあらむ」(福田寥汀)の句も、
おそらくはこのような情景であったろうか と思う。
暮れやすい初冬と違い、夏は日が長くて、19時を過ぎてやっと日没。夕食のメステイン版から揚げ卵とじ御飯&きのこスープ+缶ビールで、のんびりと暮れ行く瀬戸内海を堪能させてもらった。興居島小富士が意外に目立ち、燧灘に浮かぶ島しょ群もなかなか綺麗だった。気温22℃と涼しいのもあるが、虫もほとんどおらず快適な夜や。
夕焼けの色がだんだんと薄くなり、それとともに街の灯りがゆっくりと浮かび上がってくる。松山は、白、橙、赤と色とりどりだ。しばらくすると、新居浜市街で花火が上がり出した。え~っと思ったが、上から見ると、小さいぼんぼりのようでなかなか美しく、まさに真夏の夜の夢。ラッキーだった。後で調べると、JCが新コロナ退散と医療関係者への支援のために打ち上げたようだ。この場をお借りして感謝申し上げる。
今治方面は、少し遠かったけれど、しまなみ海道の来島大橋のイルミネーションがツリーのように海に浮かび、これもなかなかよかった。北東の鎚や二ノ森は漆黒の闇。頂上山荘の白い灯りが一点ぽつんと小さく、高知市街か、光が空に反射してぼうっと太平洋が薄明るかった。期待した通り、ここは絶好の展望台だった。
肩透かしだったのは、天の河。天空の中央に斜めに流れているのに、クリアでない。標高が2,000m未満と低いのもあるが、やはり空気が澄んでくる秋~冬の方がよいのかもしれない。それでも高縄半島に45度の角度で北斗七星、そしてほぼ真上に、こと座ベガ、はくちょう座デネブ、わし座アルタイルの夏の大三角がどっしりとあった。ベガとアルタイルはおり姫、ひこぼしだ。ツェルトから頭だけ出して、寝転んで楽しませてもらった。大満足や。
翌朝、黎明の鎚の稜線や南尖峰横から昇る朝日、影鞍瀬を撮ってから、8時にツェルトを撤収し、帰途についた。
途中、西冠のトラバース道からショートカットして笹原をまっすぐシコクシラベの水場に下る。しばらく雨がないので流れは細かったけれど、お四国の岳人ならよくご存じのうまい水をたっぷり持ち帰ることができた。