吉居林道から早春の笹ヶ峰へ ― 毎春のお約束、風の花 雪割一華に会いに行く

 

f:id:hinemosu_yamajii:20200401141736j:plain

雪割一華

 今冬は、暖冬と気まぐれな降雪に振り回されたけれど、3月も下旬ともなると、お四国のお山にもさすがに春の足音が。時期的には一週間ほど早いものの、この暖冬、もう咲いているはずと、あえてこのコースを選択。多少、林道歩きがあってもせいぜい小1時間、雪割一華には代えられない。

 

 2018年の台風で吉居林道も道が2か所で路肩崩壊。現在、復旧工事中で林道中途から登山口まで少し歩かないといけない。そらやま街道(R194)下津池からハンドルを左に切り、神社の脇から止呂峡に架かる、下を見るのがこわい高さのコンクリート製橋を渡って林道へ。途中までは、穴ぼこもある舗装路、枯枝や枯葉のたまった、曲がりくねった道を進む。舗装切れの場所まではいつもと変わらない。砂利道に入っても意外に道の状態はよく、工事中だからかなとちょっと思う。 8:30 ロープが張られた林道分岐に駐車。過去、雪が多いときはここまでしか入れなかったこともあり、本来の登山口まではこれなら近い。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401142142j:plain

車を止めた道脇の案内板

 10分程で小沢に出、橋を渡って今回は旧登山道に入る。もうあまり人が歩いていないのか道が柔らかく、沢沿いから途中で右に大きく振って少し薄暗い植林帯を進む。 9:20沓掛山(1,691m)への分岐、宿を通過。1、2分で木橋のかかる沢なので、そこで休憩する。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401142457j:plain

沓掛山分岐 宿(しゅく)、うっすらと残雪が…

f:id:hinemosu_yamajii:20200401142636j:plain

木橋。冬季は雪が積もってなかなか楽しい。

 ここから丸山荘までは、このコースのハイライト、ブナ林の路だ。今はまだ冬木立だけれど、新緑、紅葉ともに落ち着く道だ。緩い登りの明るい杣道を風の音とカラ類の鳴き声を楽しみながら、ゆっくり歩む。快晴、静穏で気持ちがよい。所々猪の掘り返しがある中、やがて雪の残る直線の木道に変化すると、正面に丸山荘が見えてきた。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401142952j:plain

杣道のすぐ脇にあるブナの大木

 2年ぶりの丸山荘、今回も無人だったが、ひとつだけ前回と変わっていた。建物を改装し、避難室と大書したスペースが。中を覗くと6~8畳はあろうか、結構広い。雨天や非常時の休憩用らしいが、特に冬季は有難い。 

f:id:hinemosu_yamajii:20200401143127j:plain

久しい丸山荘。変わらない佇まい。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401143327j:plain

避難室(入口)

f:id:hinemosu_yamajii:20200401143402j:plain

避難室(内部)

 10:10昔のスキー場のほとりに立つ一本杉の横を通過して、山頂まで40分の急登に入る。北面なので予想した通り、まだたっぷり雪が残っていた。トレランシューズに泥除けのショートスパッツを装着し、雪道をジグザグに登る。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401143648j:plain

スキー場(手前側)に立つ杉、なかなかの巨木だ。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401144546j:plain

森林限界にでる手前から振り返る

 森林限界を越えると名前の由来、一面の笹原の中を行く。登山道以外にもう雪はなく、何回曲がったら寒風山ルートとの分岐だったっけと、思い出しながら歩を進める。途中にあったY字形の枯立木が何年か前に倒れ、冬場の目印が一つ減ってしまったけれど、振り返ると来島大橋までくっきり。でも、すぐに霞んでしまった。 

f:id:hinemosu_yamajii:20200401144026j:plain

中腹からの今治市方面。右端:沓掛山

 11:05 約1か月ぶりの山頂(1,860m)。前回はガスと強風だったが、今回は凄い快晴だ。第一級の石鎚山系展望台、その面目躍如である。赤石山系や稲叢山、大座礼山をはじめ、ほぼすべてのお山が見渡せる。しかも無人蔵王権現にお参りし、早速、昼食に。今日はカキフライの卵とじ丼、生卵をここまで持ち上げた甲斐があったというものだ。 

f:id:hinemosu_yamajii:20200401144802j:plain

1か月前はエビのしっぽが付いていた山頂標識と祠

f:id:hinemosu_yamajii:20200401144940j:plain

蔵王権現を祭る祠。背景はちち山、遠く赤石山系

 食事を楽しんでいると、寒風山からの特急第一便が着いた。お山を始めて1年目、形から入るタイプ?の30歳前の若いぼん。1時間で来たらしく、夏時間の標準でも「さすが元気やね。でも意外と近いやろ。」と返しておく。食後のコーヒーブレイク中に「ちち山(1,855m)に寄りたい。」というので、ピークへの急登途中にある小さな岩場はこの時期凍結しているはず、そこは必ずアイゼンを付けるよう伝えて送り出す。若人は元気や、爽やかでいい。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401145448j:plain
f:id:hinemosu_yamajii:20200401145213j:plain
山頂から南西方向。石鎚、瓶、伊予富士、寒風の山々
f:id:hinemosu_yamajii:20200401145749j:plain
f:id:hinemosu_yamajii:20200401145820j:plain
山頂から北東方面。ちち山、遠く赤石山系、冠山、平家平、大座礼山の山々

 もう少しのんびりしたかったけれど、寒風からの人も増え、風も強くなってきたのをしおに12:30下山開始。下り斜面の雪はもうだいぶん緩んできていた。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401150042j:plain
f:id:hinemosu_yamajii:20200401150102j:plain
沓掛山と丸山荘を望む。やや雪の緩んだ下りの路

 丸山荘で水を補給し、温度計を見ると15℃、どおりで暖かいわけやと思う。何もない下りはじじいの足でも早い。山頂から小1時間で宿を通過。沢沿いに下り、右側にトラバース気味に少し巻くと今日のお目当て、雪割一華の群生地だ。 

f:id:hinemosu_yamajii:20200401150341j:plain

風の花とは誰が言ったものか…。

 南に面した沢沿いの陽だまりの場所で、この暖かさでもう花が終わっているかもと少し不安だったけれど、あった、あった。丁度満開。一週間早めに来てみて、大正解だった。このお花、気品があっていたく上品なのに、葉がちょっと地味過ぎてもったいない。目立たず、落ち着いてじっくり探さないと、気づかずに通り過ぎてしまいそうなところも残念だけれど、かえって荒らされない分、良いかもしれないとも思う。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401150532j:plain
f:id:hinemosu_yamajii:20200401150551j:plain
ちょうどほぼ満開に巡り合えた。

f:id:hinemosu_yamajii:20200401150827j:plain

三連咲き。

 15:00前、車のデポ地点に帰着。終日、快晴なうえに目的のお花にも会えた、大満足の春の山行だった。