今冬は、暖冬と気まぐれな降雪に振り回されたけれど、3月も下旬ともなると、お四国のお山にもさすがに春の足音が。時期的には一週間ほど早いものの、この暖冬、もう咲いているはずと、あえてこのコースを選択。多少、林道歩きがあってもせいぜい小1時間、雪割一華には代えられない。
2018年の台風で吉居林道も道が2か所で路肩崩壊。現在、復旧工事中で林道中途から登山口まで少し歩かないといけない。そらやま街道(R194)下津池からハンドルを左に切り、神社の脇から止呂峡に架かる、下を見るのがこわい高さのコンクリート製橋を渡って林道へ。途中までは、穴ぼこもある舗装路、枯枝や枯葉のたまった、曲がりくねった道を進む。舗装切れの場所まではいつもと変わらない。砂利道に入っても意外に道の状態はよく、工事中だからかなとちょっと思う。 8:30 ロープが張られた林道分岐に駐車。過去、雪が多いときはここまでしか入れなかったこともあり、本来の登山口まではこれなら近い。
10分程で小沢に出、橋を渡って今回は旧登山道に入る。もうあまり人が歩いていないのか道が柔らかく、沢沿いから途中で右に大きく振って少し薄暗い植林帯を進む。 9:20沓掛山(1,691m)への分岐、宿を通過。1、2分で木橋のかかる沢なので、そこで休憩する。
ここから丸山荘までは、このコースのハイライト、ブナ林の路だ。今はまだ冬木立だけれど、新緑、紅葉ともに落ち着く道だ。緩い登りの明るい杣道を風の音とカラ類の鳴き声を楽しみながら、ゆっくり歩む。快晴、静穏で気持ちがよい。所々猪の掘り返しがある中、やがて雪の残る直線の木道に変化すると、正面に丸山荘が見えてきた。
2年ぶりの丸山荘、今回も無人だったが、ひとつだけ前回と変わっていた。建物を改装し、避難室と大書したスペースが。中を覗くと6~8畳はあろうか、結構広い。雨天や非常時の休憩用らしいが、特に冬季は有難い。
10:10昔のスキー場のほとりに立つ一本杉の横を通過して、山頂まで40分の急登に入る。北面なので予想した通り、まだたっぷり雪が残っていた。トレランシューズに泥除けのショートスパッツを装着し、雪道をジグザグに登る。
森林限界を越えると名前の由来、一面の笹原の中を行く。登山道以外にもう雪はなく、何回曲がったら寒風山ルートとの分岐だったっけと、思い出しながら歩を進める。途中にあったY字形の枯立木が何年か前に倒れ、冬場の目印が一つ減ってしまったけれど、振り返ると来島大橋までくっきり。でも、すぐに霞んでしまった。
11:05 約1か月ぶりの山頂(1,860m)。前回はガスと強風だったが、今回は凄い快晴だ。第一級の石鎚山系展望台、その面目躍如である。赤石山系や稲叢山、大座礼山をはじめ、ほぼすべてのお山が見渡せる。しかも無人。蔵王権現にお参りし、早速、昼食に。今日はカキフライの卵とじ丼、生卵をここまで持ち上げた甲斐があったというものだ。
食事を楽しんでいると、寒風山からの特急第一便が着いた。お山を始めて1年目、形から入るタイプ?の30歳前の若いぼん。1時間で来たらしく、夏時間の標準でも「さすが元気やね。でも意外と近いやろ。」と返しておく。食後のコーヒーブレイク中に「ちち山(1,855m)に寄りたい。」というので、ピークへの急登途中にある小さな岩場はこの時期凍結しているはず、そこは必ずアイゼンを付けるよう伝えて送り出す。若人は元気や、爽やかでいい。
もう少しのんびりしたかったけれど、寒風からの人も増え、風も強くなってきたのをしおに12:30下山開始。下り斜面の雪はもうだいぶん緩んできていた。
丸山荘で水を補給し、温度計を見ると15℃、どおりで暖かいわけやと思う。何もない下りはじじいの足でも早い。山頂から小1時間で宿を通過。沢沿いに下り、右側にトラバース気味に少し巻くと今日のお目当て、雪割一華の群生地だ。
南に面した沢沿いの陽だまりの場所で、この暖かさでもう花が終わっているかもと少し不安だったけれど、あった、あった。丁度満開。一週間早めに来てみて、大正解だった。このお花、気品があっていたく上品なのに、葉がちょっと地味過ぎてもったいない。目立たず、落ち着いてじっくり探さないと、気づかずに通り過ぎてしまいそうなところも残念だけれど、かえって荒らされない分、良いかもしれないとも思う。
15:00前、車のデポ地点に帰着。終日、快晴なうえに目的のお花にも会えた、大満足の春の山行だった。