2月中旬、毎年恒例とはいえ、ここまで皆目雪のないのは記憶にない もはや、一足早く春山も盛りに…だ 桑瀬峠登山口は、道路に書かれたUFOラインの字がくっきり 地肌丸出しで、とほほ…の気分で登り始める 途中で80代の一風変ったじい様と話してますます調子が狂う、なんか宇宙人の電波がどうのこうのって…いるんだ、お山にも
50分ほどで伊予富士(1,756.2m)と寒風山(1,763m)の道分岐、無風の桑瀬峠(1,451m)に スカッと快晴で寒風稜線がクッキリ、気分は少し直ったけど、なんか足らないよね
結局、寒風への登りで北面にお情け程度の霧氷が見えたきりで、笹ヶ峰(1,859.6m)山頂まで笹緑一色 まぁその分、夏時間で歩くことができて、じじいには有難いが…なんか複雑 先年の大雪の際は寒風→笹まで膝から腰までの雪で5時間を費やし、久しぶりでワカンを存分に使えて楽しかったのが嘘のよう
愚痴っても始まらないので、峠から霧氷帯へおもむろに… 緩んで降りしきる霧氷片のバサバサという雨音?がむなしさを掻き立てるわ ヤマグルマの大木がかぶさる、日陰の下り梯子の場所も凍っていなかった
寒風へ向かうこのゾーンはブナやアケボノツツジの古木が多くて普通は楽しいルート 毎冬どうお化粧してるかワクワクして歩くけど、今日はなにもなくて、雪でぐっと趣を増す例のブナはちょっと寂しそうな風情だった
9:55寒風山頂着 山頂南側の小風穴に鎮座する蔵王権現に挨拶し祠清掃も 晴れ渡って見晴らしはいい 伊予富士に展望ではやや劣るもののここもなかなか
単独行の若い兄さんが登ってきたのと入れ替わりで笹へ向かう 笹ヶ峰まで時間にして1:30ほど、お昼には余裕で到着だろう 最初の下りでやっとチェーンスパイクを出す、つまりザックの中のアイゼンは今日も多分お休みに 泣くなよ、今年は愛用のシモン・スーパーEだってそうなんだ 一緒に歩けてる分だけまだ良しなんだぜと慰めておく 笹ヶ峰肩(1,740mの前衛峰)までは小ピークをいくつも越えてゆく 冬らしいといえるのは北面の道に残る半ば氷と化した残雪だけで、ガリガリとスパイクを利かすのみ
新緑と紅葉が素晴らしかったゾーンも今は末枯れ、普段は北面からの吹上強風が嫌らしいけど、今は北風様もお休みで笹にも優しい温暖さ 霧氷も落ち切って梢が蒼天に向かってすっくと伸び上がり、人気のない冬の路は山も木々も静まり返っていて、歩いていて心落ち着く やっぱ、ウェイトを置くべきは感じることですねぇ、レイチェル・カーソン女史もおっしゃってるように
前衛峰を右に巻き、笹北面のほぼ一直線の踏分道に入る 緩い登りが続き、山頂までもう1kmを切ってるけどここは雪があれば意外と消耗するところ 今は瀬戸内海を眺めながらの天上漫歩の快適さ 沓掛を左に見て少し登ると笹ヶ峰山頂に 11:50先着は昼食中の中年のおじさん一人 下津池から来たけど、もう吉居林道には雪はなかったとの話 う~ん、でもユキワリイチゲにはまだ早いかなぁ あそこは春一番を感じに行くところ、柔らかい日差しを受けて精一杯咲いているお花をまた見たいなぁと思いつつ…
少し風が出てきて、心地よい ここは山系トップクラスの展望の地 地平線のはるかにくっきりと白い塊が、伯耆大山だ 望めたのは何年ぶりだろう、これはラッキーだった
剣山系から法皇山脈、大座礼やちち山・冠山~平家平の伸びやかな稜線 ぐるりと回れば石鎚山系の峰々とまるでご褒美のような好展望 堪能しつつ、のんびり昼食 こういう日のブラックはすこぶる美味い
1時間たっぷり休んで徐々に登山者が増えてきたのをしおに13:00高知県側へ下る南稜(私的には直滑降ルート)を下り始める この急傾斜道はじじいの膝には要注意でじんわりと下り、冬ホワイトアウト時の目標木ウラジロモミ2本組に声掛けして真ん中を通過。道が右に90度曲がった先にあるベンチで一服すると、プチ・バリエーションのスタートとなるウラジロモミはもう指呼の間だ
13:30下山路と別れプチ・バリに入る 昨秋にトレースしたので、ほぼルートは頭の中に入っているし、多少ずれても大したことはないわ 少しの間笹道らしき痕跡を進み、すぐヒョロヒョロのリョウブの純林で笹が消える これだけあると炭焼きの人々は喜んだだろうなぁと思う しばし地面むき出しの柔らかい斜面をやり過ごすと薄い笹の中に二本ずつ並んだ杉と水楢の大木、相変わらずでかいわ、おたくら その脇を抜けてやや南に下り、一抱えもあるウラジロモミに会いに行く いやぁお久しぶりで、お元気そうで何よりとご挨拶だけは
この辺りから笹の背が高くなってきて視界が遮られ、いよいよ例の笹ブッシュ帯だ 前回同様、少しウロウロして鹿の獣道を使わせてもらう これを抜けるとすぐ上の段のナル 低い段差を乗っ越し、薄い笹帯を抜けるともう炭焼き跡と猪のヌタ場が同居する、地滑りで出来た広場だ 一気に降りたのでここで給水休憩にする
そう焦って下り切ることもないだろ、せっかく葉を落とし切って日差したっぷりの雑木林の真っ只中にいるのだ それに上手くするとすぐ横のシオジの大木が声をかけてくれるかもしれないし… 人の気配など全くなく、カラ類以外は静寂が支配するこの安らぎに浸っていると、自然の持ついわば大いなる優しさが心に浸み込んでくる こう何度歩いても冬枯れの山裾を歩くのは楽しいものだ これを味いたくてミニバリを開拓してるんでしょう?と呟き、後はツエルトタープ泊&焚火酒がまたできればこの上ないけどね と返す、独り言つの世界
ゆっくりして汗も引いたので、夢幻にお別れして正面の小高い丘を越える 行きついた下の段のナルの先にはもう黒々とした杉の植林帯が ここから植林道を活用し、秋にテーピングしておいた笹ブッシュの踏跡も薄い踏分道へ入って、最後のチョットヤバい崖下りを終えると林道・長又橋のたもとだった
残る林道歩き、今回は昨秋の舗装が何処まで伸びているか確認するのも目的の一つ 概念図に舗装末端と表示して置いたけど、だいぶ先まで完成していた スリーシーズンの活用を考えるとこれは有難いこと 林道入口に止めた車まで前と同じきっかり25分、後はじじいのお楽しみ、お山のいで湯が呼んでるわ…